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第二十八話 戦後処理

 眠い頭を懸命に動かして寝室から出る。

 いくら眠いからと言って寝ているわけにはいかない。今日は配下に褒美を与える日だ。

 例え鎧の凹みを叩いて直し、小さな穴を他の鎧の破片で塞いで寝るのが遅くなったから、という理由があってもだ。

 それに今日から平和なのだ。防備で忙しくなるかもしれないが命の危険を考えなくて済む、素晴らしい日々が始まる。

 そう考えれば睡魔など吹き飛んでいく。

 冷蔵していた果実を齧りながら私室に向かう。これから集落に出向いて簡単な打ち合わせをしなければならない。これにアリスも出席しなければならない。

 いつもなら冷蔵庫で食い物を漁っているか、玉座の間で剣を振っているのだが今日はどちらにもいなかった。恐らくまだ私室で寝ているのだろう。

 理由は大体分かっている。

 昨日騎士団を殲滅した所為だろう。アリスは配下の中で唯一の人族だ。いくら生きるためとはいえ同じ人族が殺されて気分が良いわけがない。昨日フラフラしていたのもどこかショックを受けていたのだろう。

 本当なら気づくべきだった。だが気遣うのは今からでも遅くはあるまい。


「アリス、打ち合わせに行くぞ」


 寝ている、と思い入ったが意外にもアリスは起きていた。とはいえ、ソファに座り頭を抱え込んで暗い雰囲気だと見ただけで分かる。やはり思い悩んでいたか。


「アリス?」


「ふえええい!」


 気づいていなかったので肩を叩いて呼ぶとどこかで見た反応をした。……ああ、昨日の俺だ。

 アリスは一応挨拶してきたがすぐに視線を逸らした。ああ、俺が騎士団殲滅の主導者だからな。配下とはいえ割り切れない気持ちがあるのだろう。

 こんなところで変な溝は作りたくない。とはいえいきなり態度を変えるのも変だろうからいつも通りにする。


「アリス、これから各種族の長と褒美の事で打ち合わせをするぞ」


「い、いや。その体調が優れないから欠席と言うことで」


 ううん、これは重症だな。これは無理やりにでも連れださないと引きこもってしまいそうだ。

 俺は蜘蛛人(アルケニー)の糸を取り出して瞬時にアリスをぐるぐる巻きにする。本当なら簀巻きにしたかったがそこまでの技術はない。

 こんなことが出来るのはアリスの精神状態が不安定だからだ。通常ならあっさり避けられただろう。


「下らんことを言ってないで行くぞ! 魔族の中にはお前のことを『師匠』と呼んでいる奴らもいるくらい好かれているんだからな」


「し『師匠』! あ、ああああ!」


 あ、暴れ出したぞ。ええい、すぐに女郎蜘蛛(アラクネ)の下まで連れて行って簀巻きにしてやる。




 暴れるアリスを連れ、何とか集落にやってきたが大変なことになっていた。


「あ、魔王様、おはようございます」


「「「おはようございます!」」」


 二階位の魔族が増えていた。

 理由は昨日の騎士団殲滅の所為だろう。

 各種族の長しか二階位の者はいなかったはずなのに、一夜にして三分の一程が進化(ランクアップ)していた。

 では今まで長だった者たちは?


「魔王様、おはようございます。打ち合わせですね。他の長を呼びに行かせましたので少しお待ちください」


 残念、変わっていなかった。

 しかし本当に変わっていないのかと言うと違う。

 例えば長たちのレベル。30~40程だ。対して二階位になったばかりの者たち。レベルは1~3程度。ちなみに一階位は70から進化(ランクアップ)目前の者まで。

 戦力強化の面では非常にありがたいが、呼ぶのが面倒になったぞ。




 打ち合わせについては簡単に済んだ。一部アリスが暴れ始めると言う場面があったが女郎蜘蛛(アラクネ)の華麗な糸さばきで簀巻きにされた。熟練の技を感じる。


「さて、褒美は平等に各種族に渡す。種族内では長が分配する。この場合二階位に上がった奴が優先されるだろうな」


「その事で魔王様にお願いしたいことが」


 願い? 首を傾げると長全員が頭を下げる。どうやら前もって話は通しているらしい。

 

「すでに目にしたと思われますが、先の騎士団戦にて大勝を収めたおかげで各種族、多くの者が二階位に進化(ランクアップ)いたしました。ですが魔王様からすれば長が分からなくなるのではないか、と思いまして。大変図々しいとは思いますが我ら長に名を与えてくださいますとありがたいのです」


 確かに、大勢が進化(ランクアップ)したせいでパッと見で分からなくなったな。よく見ればまだ個体差があるから良いけど。

 しかし名前か。自分の名前を決めるのにも時間が掛かったくらいだが、配下の願いでもあるしな。


「分かった、とはいえすぐに用意できるものではないぞ。名は体を表すと言うほど重要だ。そうだな、どんな意味の名が欲しい? 参考として聞いておきたい」


 それぞれの意向を聞いて、ある程度方向性を決めておく。一度名前を付けたことがあるせいか明日にでも出来上がりそうだった。


「分かった。それでは昼食が取り終わったら全員を集落に集めておいてくれ。それから褒美を渡す。仕事については明日以降話すから今日はゆっくりと休むと良い。あと、アリスの様子がおかしいから置いていく。よければ様子を見てやってほしい」


では解散、と俺はアリスを置いて一時帰宅。


 さーて! 久々に私室で遊ぶぞ!


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― 新着の感想 ―
そういえば、コミカライズでは犬?と蜘蛛に蜥蜴しかいないがスライムたちはどうした? 後に鬼の魔王と戦うはずだがいるはずの鬼の部下がいなくて大丈夫なのか?
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