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第八十一話 オワの大森林中央到達

 ダンジョンの事はランに任せた。ランはどうやら魔族の配下まとめ役としての地位を確立したようで、安心して任せられる。

 守りはイフリーナ、セルミナに頼んだ。リンやエナなどやる気に満ちた蜥蜴人(リザードマン)もいるので大丈夫だろう。

 大丈夫じゃないのは俺だ。

 

 現在オワの大森林中央。ダンジョンのある東部と違い、でかい木々がちらほらと見える。おかげで地面が根の所為で隆起が激しい。

 東部に比べればやはり木陰も増えている気がする。ただその所為か、見たことのない植物も散見する。

 しかしようやく中央か。

アリスの身体に変身して移動しながら三日目だ。

 そうアリスの身体に変身して三日経ってようやく中央だ。正確にはシバたち軍犬(コボルトリーダー)の方が遅いので、シバらの速度に合わせた結果だが。

 いくら何でも広すぎる。シバたちは決して遅い訳ではない。未開の森であり、足場が安定しない中普通に走れている。むしろそれより早いアリスがおかしい。

移動も食事と睡眠、こまめな休憩以外は常に走りっぱなしだ。それで三日目にしてようやくオワの大森林中央だ。早くも帰りたい気分になってきた。

しかし自分からシバに「西へ行かないか」と持ち出した手前、帰りたいなど口が裂けても言えない。


「こんなにオワの大森林が広いとは。シバ、お前たちは中央や西の探索はどうやっていたんだ?」


「はい、三日に一度遠征組を決めて送り込んでいました。ですが、その、さすがに三日でここまで来たことはありません。大体四、五日ほどで中央まで来て二日間探索し戻る。一度の遠征で十日ほど、ですので遠征は三組が入れ替わるように行っていました」


 ぐるぐると交代で行っていたと。なら西まで行こうとしていた頃はどれだけ時間が掛かったのか。


「丁度この近くに湧き水が出る場所がございます。そこで休憩を取るのは如何でしょうか?」


「そうだな、そうするか。アリス、休憩を取るぞ。シバ、案内を頼む」


 警戒のため、やや離れて並走していた軍犬(コボルトリーダー)にも合図を出して集合させる。

 いつまで走り続ければいいのやら。




 全員が湧き水で喉を潤している時、俺は別の物で喉を潤している。

 ワリの実だ。

 何せ、ほぼ常にアリスに変身しているのだ。魔力の消費も相応に激しくなる。その所為でこまめに休憩を取らなければならない。

 しかもアリスの身体が優秀な所為か、走ることによる喉の渇きよりも先に魔力補充のための休憩が来ている。もう作業的に口に運んでいるため味など気にしていられない。


「魔王様、途中で集めましたワリの実です」


「ああ、ありがとう」


 そして途中で切らさないように移動中も見つけたら数個回収するように伝えてある。おかげで魔力不足にも陥らず、減らないワリの実を見て食事の作業化に拍車をかける。


「アリスは、見つけられなかったか?」


「見つけて食べたが?」


 何を言っているんだ、と疑問的に言われたがそれはこちらの台詞だ。

 俺はワリの実を回収するように伝えたんだ。食べろなどとは一言たりとも言っていない。


「あのな――」


「キャッキャッ!」


 文句を言おうとしたら上から不穏な鳴き声。顔を上げれば木から毛むくじゃらな生き物が回転しながら落ちてきていた。

 奇襲か、しかし声を出した時点で失敗だ。シバ達は反応が追い付いていないが、アリスは既に剣に手をかけ迎撃の態勢を取っている。

 だが、それよりも早く俺は対処できる。


『重力』発動。七倍だ。

 

 俺の対空能力を甘く見たツケを払え。

 キャ、と言い残し毛むくじゃらの生き物は落下速度を増して地面に叩き付けられた。アリスは途中で気づいて落ちて潰れた際に血が掛からぬように飛び退いていた。シバたちに少し血がかかってしまった。俺もだけど。


「何だ、これは?」


 落ちてきたのは毛むくじゃらな手足の釣り合いが取れない生き物。太い枝を連想させる立派な両腕なのに、両足がまるで小枝のような貧弱さだ。それにこの身体。身体から手足が映えているのではなく、手足に身体が付いているかのような小ささだ。


手足強猿(ストロングモンキー)だな。東部に手足長猿(ロングモンキー)が居ただろう? それの進化(ランクアップ)した個体だ」


 ……知らない。そもそも魔物の名前はほとんど知らないのだ。でもこいつに近いのをどこかで見たような。ああ、オルギアさんと共に外に出た時か。そういえばあの時もこんな感じで殺したなあ。


「お見事です魔王様」


「いや、血がかかっただろう。すまないな。食えるならこいつを食って休憩を終わりにしようか」


「あー、こいつはあんまり美味しくない。というか不味いな。肉は硬いし、筋が多い。私はいらん」


 アリスが食わない位まずいなら俺もいらん。腹が空いているわけでもないしな。


「ではこちらで処理いたします。そういえば西に行った時にこれに似た、もっと大きい奴を見たという話も聞きました。では皆で分けてきます」


 シバは地面に叩き付けられた手足強猿(ストロングモンキー)の死骸を引っ張り仲間の下へ運んでいく。言ったのは俺だが、無理に食べなくても良いだぞ?

 しかし手足強猿(ストロングモンキー)も大きい奴、というのは話に聞いた三階位の魔物なのかね。


強剛猿ストロングゴリラだろうな。その手足は並の件や槍を軽く弾くと聞く。ふふ、出会えば斬りたいな」


 俺は出会いたくないよ。流石にそこまでムキムキな奴だと『重力』に耐えそうだしな。

 それからしばらくしてシバ達の食事が終わり、出発の準備を終える。


「シバ、西部まではどれくらい時間が掛かる?」


「そうですね、普通なら四日ほどですが。今の速度なら三日程度で十分かと」


 つまりまだ三日走り続けないといけないと。

 体力よりも精神の消耗が激しい移動になりそうだ。帰りに事を考えれば憂鬱以外何者でもない。

 やっぱり帰ろうかな。あ、出発しちゃった。


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