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大丈夫

作者: 統神斎猫丸
掲載日:2026/07/14

ショウは、笑うことが少し苦手な少年だった。

家ではみんな忙しく、学校でも上手く話せない。

心の中に、言えない言葉だけが積もっていた。


ある雨の日。

公園のベンチの下で、小さな子犬が震えていた。

ショウは思わず抱き上げ、家へ走った。

「大丈夫だよ。」

その声は、まるで自分に向けた言葉のようだった。


子犬は「コト」と名付けられた。

小さな鳴き声が、優しい言葉の様にショウの心に触れるから。


それからの日々、ショウはコトにだけは何でも話した。

「今日はクラスで手、あげられたんだ。」

「ほんのちょっとだけ、勇気出せたんだ。」

コトは言葉を返さない。

でも、その瞳は全部わかっているようだった。

ショウの世界は、少しずつ明るくなった。


――時が流れ、コトは年を取った。

歩く速度がゆっくりになり、呼吸が静かになっていく。

ショウは抱きしめながら泣いた。

「いなくなったら…僕、どうすればいいの。」

その瞬間、確かに聞こえた。

「大丈夫だよ。ショウはもう、一人で笑えるよ。」

声ではない。

音でもない。

心が受け取った言葉だった。

コトはショウの手に顔を寄せ、静かに目を閉じた。


夜が明ける頃、コトは眠るように旅立った。

ショウは涙の中で、そっと微笑んだ。

「ありがとう。僕を、救ってくれて。」


その日からショウは、前を向いて歩き続ける。

もう、うつむいた少年ではない。

胸の奥で、今も確かに聞こえる。


「大丈夫だよ。」

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― 新着の感想 ―
こんばんは! 短い文章の中にギュッと詰まった愛が、とても素敵でした。 犬や猫とは会話はできなくても、心で繋がっている。 だから、ちゃんと伝わっているのだと思いました。 とても心温まる素敵な物語を読ませ…
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