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全てを奪われたギフト持ちの少女は覚醒して家族を書き換える  作者: かんあずき
ギフト編

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8 運命が動き出す

「ごめんね。まだ君の聞き取りが済む前からグレイと二人きりには出来ないからさ。」

「いえ、それは言われていたことだったので。でも、出来ればお風呂やトイレはやめて欲しいですけど」


流石にそれを聞き取られているのは嫌だと思う。

だって、私は何も悪いことをしたわけじゃないんだもの。


「多分、急いで女性の職員を探してくれていると思うからさ。それにギフトの管理対象なんて似たような生活だと思うよ」


ゲオルクは、魔法で自身の水滴を水球にして体を乾かす。

「服を着替えるから待っててね」

手をひらひらとさせて、風呂場に戻っていくのが腹立たしい。


どうせギフトの管理対象なんだから、生活をさらけ出すことぐらい我慢しろといいたいのね。

自分で使わないように意識して抗ってるわよ。

それを使ったらどんなことになるのかなんて想像もついてる。

だけど、こんな苦しみ、持ってない人には分からないわよ。


不特定多数に常に位置を把握され、生活音を全て聞かれているのも、一時的に誰かの慰み者になるのもたいして変わらないかもしれない。

お母様の判断も間違えていないのかもね。


ふっ


なんだか抗っているのが全て馬鹿らしく思えてきた。

これからの一生、こんな生活が待っている。


ギフトを使ってしまえ!

私を止めるものも、守るものも私にはもうない!

あの時と同じ。

指先からちりちり散るような刺さる感覚。


だって、ギフトを使っても使わなくてもどうせ私も周りもみんな報われない。


「おい!待て!俺を見てみろ」


兄グレイが、私の変化に気づいて、両肩に手を置き私を揺さぶってくる。


「しっかりしろ!ゲオルクの挑発にのるな!俺も同じものをつけてる。お前だけじゃない!ゲオルクもみんなつけてる」


私が滲む涙で歪んだ視界の中で、グレイを見ると、耳たぶに小さなシルバーのピアスがはまっている。


「ここの場所は、そういう場所だ。お互いを信用しているが、常にお互いを疑っている。だが、そういう場所で過ごさせても大丈夫と今日の奴らはみんな思っているから、俺たちと同じものをつけさせたんだ。

落ち着いて息を吸え。」


「グレイ兄様...もう嫌です。私がいなくなればみんな助かりますよね。誰かの慰み者になる前に。みんなから危険視される前に。もういっそ!そうだ!」


私は半狂乱になっていた。もう考えたくない。


「ゲオルクさんに助けられなかったことにしてしまえば...」


そう呟く。

その瞬間、兄がクッと顔をしかめた。

ドスッ

お腹に鈍い痛みが走る。


「少し眠れ」


ずるずると私の力が抜けていく。

そして、そのまま意識も遠のいていった。





夢を見ていた。


多分、多分幸せだった頃の夢だ。



「今日もお嬢様は、うちの兵を剣でのしてしまわれました」

「あら?新人メイドの指導までされましたよ。」

事情を知っている執事と、乳母を兼務したメイド長が、私を両親に褒めてくれる。


「みんなが手加減してくださるのよ。それに新人さんよりは、我が家のことを知っていないとダメじゃないの」


私は恥ずかしそうに、謙遜して手を振る。


「いや、リリア。護身術の一環で習わせたつもりが、そこまですごいとはわたしの血だな」

「面倒見がいいのは私似だわ」

両親がどっちに似ているかを仲良く言い争う。

そんな穏やかな日――


きっかけは、自宅で催されるお茶会だった。


「今日は、お部屋か図書館以外は行かないようにするわ。」

「ごめんね。あなたを本当はみんなの前で見せびらかしたい。こんな素敵な娘がいるんだって言いたいのに」

「何をいうの?お母様のお手伝いができなくて申し訳ないのは私なのに」


娘がいる貴族女性は、娘と一緒に連れ立って我が家に来ている事を聞いていた。

母の気持ちを考えると、ただ申し訳なさでいっぱいになる。


「ないとは思うけど、もし誰かと出会ったら私の遠縁で田舎から出て来て、ここでマナーを学んでいると言うのよ。」

「はい」

頷く私に、母は切なそうな顔をして抱きしめた。

それを見てお父様は、

「お前は何があろうと私の大切な娘だよ」

そう私とお母様を抱きしめる。


父は、お茶会に挨拶をして仕事のために部屋に下がった。

私は、お茶会の時間は、自室にこもって刺繍をする。


お茶会の時間もそろそろ終わったはず。

そう思って、図書室に向かう屋敷の曲がり角で、


ドンッ


私は勢いよく来た夫人にぶつかられてしまったのだ。


「も、申し訳ございません」

「あら?あなたどなた?」

「私はオルランド侯爵夫人の遠縁の娘で、こちらの屋敷でお世話になっております」


そう言いながら頭を下げると、派手な身なりの女性が部屋をキョロキョロしていた。


「そ、そうなの?ここは、どこかしらね?どうやら迷ったみたい。ここはあなただけなの?」

「そうですね。すぐ会場に案内させますわ」

「ああ、いいのよ。お茶会は終わったし、誰かに会えたら道を聞こうと思ったのだから」

「そうでしたか。」

私は、使用人に会えるように祈りながら下に案内していく。

「あなた名前はなんて言うの?」

「リリアーナです。」

「あら?こちらで亡くなられた娘さんと同じ」

「はい。その娘さんと名前が同じ縁もあって、ここでマナーや色々学びを受けているんです」


ここまでは、両親との約束通りーー


「マナーを学ぶなら、あなたも今日のお茶会に来られたら良かったのに」

「まだ、人前に出られるほどではないのです。」

私は、女性の追及をかわしながら、進んでいく。


「おお、リリア!案内をしてくれていたのか?」

お父様が背後から声をかけてきた。

ホッとする。

「ええ、道に迷われたようでしたの。」

「リリアーナさんのおかげで助かりましたわ。」

「ここからは、私が案内するよ。」

「はい、では失礼します。」


私はカーテシーでご挨拶をして、父にバトンタッチする。

初めて外の人と接したが、うまくかわせたと思った。


だが、運命のイタズラか?


それから数日後、母とわたし宛に先日のお礼にと、街で話題のオペラのチケットが贈られてきたのだった。



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