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【完結】存在しなかった管理ギフトの少女は本当の家族と出会う〜冷遇されていた日々は王子の溺愛で上書きします〜  作者: かんあずき
家族編

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41 本当の家族

「えーっ!ヤコブさん、お母様と結婚なさるんですか?」


国王がヤコブの存在を明らかにした時は、国中驚きに溢れた。今でもレストニアとは良い関係とまでは言えない。


国王よりも先に、生まれた子がいたとは?

もし、先王がその子を認めていたら国はレストニアに乗っ取られたようなものじゃないか。


そう憤っても、その王太后も先王もすでに亡き人だ。

そのうち、ヤコブは45年も存在を隠された可哀想な人間だと同情されていく。

伯爵位という位で、王家を乗っ取ろうという気もないなら、国王の兄には違いないし、幸せに暮らせば良いじゃないか。


そんな雰囲気が流れた頃、第一王妃からの縁組で、元侯爵夫人で、現在は第五王妃の子どもの教育係となる予定だったリアランスを紹介されて、ヤコブはそれを了承した。


「第一王妃はどうしてお母様に目をつけたのかしら?」

「第五王妃の件で、多くの秘密を知ってしまったからだろう。前の第二王妃の侍女みたいに、辞めてから他所でペラペラ話すリスクを負うなら俺の管理下に置く方が安心じゃないか」


ヤコブの見立てに、なるほどねと私は頷く反面、そんなにあっさり管理下に入るようなお母様かしら?としっくりこない感じも残る。


ヤコブさん、苦労しそうだわと少し同情する。


「ヤコブが結婚かぁ、俺も早く結婚したいんだけどな。もう、リアを撫で回して子供を先に作りたい」


そう言いながら、人目を憚らずにゲオルクはぎゅっと私を抱きしめ頭を撫で回す。

私は、人目を憚らずに密着してくるゲオルクに恥ずかしくなり

「頭を撫でても子供は出来ないわ。そのぐらいのことは私だって知ってる。問題はどれだけ撫でたら子供ができるのかよ?」


私はそう叫ぶ。

しかし、そう叫んだ瞬間、ヤコブとグレイ、ゲオルクは私を可哀想なものを見るかのような目で見つめるのみだ。


「まさかなあ、ここまで、箱入りとは思わなかった。グレイ、お前が心配しなくても本当の貞操ラインを超えるのは相当先だ」


ヤコブが、うなりながらグレイに伝えると、グレイはむしろ笑顔で頷く。


「さすが母上だよね。侯爵家に行っている間は生きた心地がしなかったけど、無知という名のセキュリティーを働かせてくれているとは思わなかった。ヤコブもリリアもゲオルクも結婚したら俺は寂しすぎだろ」


「無知って何よ!いいわ、勉強するもの。ね、ゲオルク」


私がそういうと、ヤコブはとんでもなく渋い顔つきになった。


「やめとけ、そんなことをしたら勉強が座学じゃなくて実技になる。リリアは、俺の養子になることになったから、リアランスから学べ」


そのヤコブの爆弾発言に、瞬時に沈黙が落ち、室温も一気に下がる。


「わ、わたし!ヤコブさんとお母様の子供になるんですか!」


グレイとゲオルク、そして私はその決定事項に愕然とし、ヤコブさんとお母様の新婚生活に自分が入り込む恐怖に慄いたのだった。





「リアランス、目覚めたら君がいて、食事をするのも君がいる。僕は今幸せだよ」

「嫌だわ、ヤコブ。昨日の夜から幸せと言いすぎよ」


ふふ

ふふふっ



私はその、ドロドロに甘すぎる空気に耐えきれない

これが大人の駆け引きなのか?

油断していると濃厚なキスが始まり、私は鼻血が......


「あら?リリア?また鼻血よ。困ったものだわ?」

お母様は可愛らしく首を傾け困ったものを見るかのような目で見る。


「ちょっと純粋すぎじゃないかしら?これじゃゲオルク様に浮気されちゃうわよ」


私は目を丸くする。


「う、浮気....」

「そうだよなぁ、官能小説読んで自らゲオルクに実践するぐらいの刺激は必要かもな。」


ヤコブはうんうんと頷きながら、お母様にさりげなく口づけをしている。

お母様も、ふふっと、くすぐったそうにしながら拒まない。


これは、どこのヤコブさん?

お母様って、こんなふしだらな方だったの?


「あ、あのヤコブさん?これは第一王妃によって決められた結婚だったはずですよね。ヤコブさん、お母様のこと好きだったんですか?」


私は鼻血を止めながらわなわなと聞くと、ヤコブとお母様は顔を見合わせる。


「だめだろう?リリアーナ、俺のことはお父様って呼ばないと。顔合わせしたら、リアランスの美しさに、びびっと電流が走って恋に落ちたんだ」


「あら、私もよ。ヤコブに会った瞬間、一目惚れしちゃった。だからね、こんなふうにゲオルク様だって、他の方と.....ねぇ」


ガーン....

ゲオルクも、誰かに一目惚れを......

瞬時に足元が崩れ落ちる感覚に陥る。


たしかに、ゲオルクはハンサム。

多分ヤコブさんも国王様も、ゲオルクもみんなハンサムなんだけど、その中で特に第三王妃の美しさもひいて、ゲオルクは魅力的なハンサムなのよね。


やばい!このぐらいのことが平然と出来なければ...他の女に負ける。


鼻血を出してる暇はない!

ふんっと拳を握りしめて立ち上がる。

だが───


「リアランス、どうやらリリアはたくさん撫でたら子供ができると思ってるんだ。」

「まあ、じゃあ、私、毎日子供ができちゃう。困っちゃうわ」


ふふっと、お母様は笑う。

な、なんですって!毎日、子供ができる?

ガッと目が血走る。


「おや、君と僕はそれ以前に、普通にできてもおかしくないかもしれないぞ」

「やだわ、流石に無理よ。あら?あらあら、リリア、あなた鼻血止まってないわよ?」


目の前で、見たくもない濃厚な大人の駆け引きを見せるからよ


「ゲオルクは浮気なんてしないわ!」

私は、半分涙目で、そう言って二人を睨む。

二人は顔を見合わせ、いじめすぎたか?という雰囲気で苦笑いする。


「ゲオルクはアレクの息子だからな。アレクは5人も妻を持っているくせに、意外と純情なんだよな。この間も、第一王妃から、返信が来たと大喜びして自慢されてしまった」


ヤコブは微笑ましそうに、ニヤニヤ笑っている。


「第一王妃から?返信??」


「文通から始めるんだってさ。でも、滅多に手紙が返ってこないらしくて、侍従長もその度に催促に行かされて困っているそうだ」


周りが振り回れるよなと呆れながらヤコブはコーヒーを口に含んだ。


「文通から始まる恋、素敵だわ」


私は両手を組み、きらきらとした顔でヤコブにそれで、どんな感じなんですか?と急かす。

だが、お母様は片眉を上げて、とんでもないというふうに私をみる。


「それ第一王妃とお会いした時に困ってらっしゃったわよ。」

「困る?」


ラブレターが夫から送られる結婚生活なんて素敵じゃないかしら?

私は首を傾げてどういうことだろうと、聞いてみる。


「だって、国王様、朝昼晩手紙を送ってくるんですって。第一王妃はお忙しいでしょう。夜まとめて返信しようとしたら、催促されるし、仕事が忙しくて翌日に回そうとしたら、執務室の入り口の前で、護衛を連れて、ウロウロとストーカー状態になってるらしいわ」


私は唖然とする。

滅多に返信がないって...毎日返信よね。

確かにそれはやりすぎだわ。

というより、護衛も何させられてるんだと思っているでしょうね。


「国王様は、第一王妃様に恋をしておられるのかしら?」


「まあ、そうかもな。あのアレクが、人に任せず、第一王妃から聞いた好きなものを自分の手で買いに行ったり取り寄せるらしいから」


第三王妃のときですら侍従長に任せていたのに?


「その件も、迂闊に百合が好きと書いたら、国中の百合を買って部屋を埋め尽くされたらしくて参ってたわ」


お母様は、惚気ではなく、本当に困った話を聞いたのだろう。気の毒そうな顔をしている。


そういえば、数日、我が家も百合がたくさん飾られていたけど、そういうわけだったのね。


「ゲオルクはその血を引いてるから不器用な執着系だと思うよ。アレクが本当の意味で好きになったのは第一王妃だけなんじゃないかな?第三王妃の場合は周囲への当て擦りもあった感じだけど、今回みたいに自ら動いて、必死に気を引こうとするのは初めてだしね」


「毎日の文通は嬉しいですけど...」


ゲオルクも似た不器用さがあるんだろうか?


「だから、多少はリードしてあげないと、ゲオルク様も踏み出せないかもよ?」


そういいながら、意味深にお母様は笑う。

そして、食事を終え、ヤコブの頬にいってらっしゃいのキスをする。

ヤコブも、そのままお母様と濃厚なラブシーンを演じ始めて仕事に行く。


そんな繰り返し。




「なるほどね。」


ゲオルクと私は馬車の中にいた。

なんだかゲオルクは、ヤコブとお母様の二人ならそうなるだろうなと納得している感じだ。


「なんで納得しているの?」

「うーん、二人の口からまた聞く日が来るだろうけど、一つだけ言えるのは君は二人から愛されているし、俺も君を愛しているから浮気はしないということだ」


馬車にのると、当たり前のように私を膝に乗せ、窓は締切る。


「ああ、馬車から風景を見るだけで楽しいのに...」


そう私がいうと同時に、ヤコブ顔負けの濃厚な口づけをゲオルクは交わし始める。あまりに情熱的なので、口から声が漏れそうになるが、すぐ塞がれる。


「鼻で息をすること、外に聞こえるから、ここの中で声は禁止。外を見たいなら見てもいいけど、外から見えないところを口づけるよ?」


そう耳元で囁かれると、涙目でいやいやと頷くしかない。

かつてよりだんだん、撫でられる場所も、指が触れるところも、キスをされる場所も、声を出さずにはいられなくなっていた。


それなのに、まだ、子供はできることをしていないって?

この先にはなにがあるの?

色々いうくせに、ヤコブさんもお母様もゲオルクも教えてくれない。


お兄様だけだわ。

そんなの知らなくていいって言ってくださるのは。

むむっと、眉間に皺を寄せる。


「オルランド侯爵領まで行くのは僕も初めてだから楽しみだよ。ゆっくり、リアと二人で、手に入れた官能小説を読むつもりだけど...

はあ、グレイが邪魔しそうだな。早く父さんや叔父上にグレイのいい人を選んでもらった方が良さそうだ。」


ゲオルクは自然にもうヤコブさんことを叔父上って言うのよね。私もお父様と呼ばないといけないのに、まだ照れてしまう。


オルランド侯爵家の領地は王都から近い。

以前のお父様は先王や王太后に気に入られていたらしく、王都に近い領地をもらっていたから、すぐ行くことはできる。


「やっと官能小説が手に入ったのね。楽しみだわ。

邪魔するって、お兄様も一緒に読みたいのかしら?恋愛小説は、そんなの女々しいもの読みたくないって拒否するのにね?」


私は不思議そうな顔をすると、ゲオルクは露骨に嫌な顔をした。


「ダメだよ。二人で読んで、疑問を解決し合うのが面白いんだ。そこに兄が入ったら、倫理的にとんでもないことになるからね。絶対、グレイをいれちゃダメだからね」


「わかったわ。約束ね」


私は指切りしながら頷く。


久しぶりに出会うヴァンやマーサと抱き合い、再会を喜ぶ。

他のスタッフにも、いいように言いくるめてくれたらしく、みんなお久しぶりですと、笑顔で出迎えてくれた。


「ただいま。みんな。やっぱりここが私の我が家だわ」


かつての私のすごした部屋でゲオルクやお兄様と団欒する。

シルビアによって、少し派手になった部屋もあったが、私の部屋は変わっておらずホッとした。


ヤコブとお母様の関係について、目のやり場に困っていることをお兄様に告げると、目を丸くされる。


「ヤコブが......ねぇ」

お兄様は少し思案しているようだ。

「あんな真面目で女の人には全く関心もなさそうだったし、結婚が決まった時も、言われたから仕方なくするって感じだったのに」

「そうか......もしかしたらヤコブの復讐も終わりを告げたのかもな。」

「復讐?」

「そう、王太后様も亡くなったと聞いたし、やっと自由になれたんだよ。俺は侯爵になったし、リリアはゲオルクの妻になる。ヤコブも伴侶を得てみんな幸せになれたんじゃないかってことさ」

「それが、復讐の終わり?」

「そう」

たしかに、添い遂げられなった人がヤコブさんにはいたと聞いた。その人は、今も誰かと結婚生活を送っているのだろうか?

ヤコブさんが、新しい人と幸せになろうと決めたならそれはいいことなのかもしれないわ。

お母様なら、ヤコブさんを飽きさせないテクニックを持っているのかも.....


飽きさせないテクニックかぁ...


はぁーっ

私は深いため息をつく。


「リリアはすぐにお嫁にいかないでくれよ。俺は寂しく、相手が居ないんだからね」

「ふふっ、結婚したってお兄様は私のお兄様よ。ただ、あんなに淑女の鏡のお母様が淑女じゃないのに今は幸せそうなの。ヤコブさんもね。それに戸惑っているだけ」


そう息を吐く私を見ながらゲオルクは、わざとお兄様の前で私に抱きつく。


「リアの願いがみんなを変えていったのかもな。俺はリアといることが幸せで、その幸せを拒む原因となるものがみんな変わっていってるんだよな。戸籍の問題も解決したし、間接的にヤコブも幸せになったようだし......あるべき形に戻っているような気がする。だから...」


ゲオルクはお兄様に指を突きつける。


「グレイ、俺たちの結婚を拒まず、むしろ早く祝福しないとお前にはとんでもないことが起こるかもしれないぞ......例えば...お前にも嫁が来るとか...な!」


そう言ってニヤリと笑う。

「え、まさか?」

「まさかじゃない。国王に、叔父上とリアランス夫人のタッグを舐めるな。早く好みの女を伝えておくんだな」

「あら?そうなの?お兄様にも縁組が??」


私は、思わず笑顔で手を叩く。

少し寂しいけど、いいことだわ。

グレイお兄様はとんでもなく焦っているけど?


私はゲオルクを見つめる。

お兄様の結婚式に参加するときには、私たちはもう新しい家族になっているかしら?


お兄様の叫び声と、私の笑い声、ゲオルクのからかう声を聞きながら、私は幸せな気持ちになったのだった。


《完》





















この話のスピンオフを短編で作成しました

第一王妃と国王アレクの話になります。


「二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました」 短いので良かったら読んでください

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