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【完結】存在しなかった管理ギフトの少女は本当の家族と出会う〜冷遇されていた日々は王子の溺愛で上書きします〜  作者: かんあずき
家族編

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40/41

40 【サイド】リアランス

晴れた春の日、ポカポカ陽気の中リアランスは船の甲板を歩いていた。


娘リリアーナをかつて乗せた船と同系列のものだ。

あちこちに見慣れた貴族の顔を見るが、お互い知らないふりをする。

それがマナーだ。


それでも、蝶が再び狙いのものを攫いに来たらしい


そんなささやきが聞こえてくる


時々、私を知らないものが声をかけてくる。

だが、パートナー待ちであることを知らせたら、表立っては公表できない関係との逢瀬に使うことは伝わる──


そっと離れていく。

リリアーナは迂闊にも一人だといってしまった。

それは、ぜひご一緒しませんかの合図だ。


本当は、リリアーナの時は、いつも通りおとなしく部屋にいるだろうと予想して回収してもらう予定だったのだけど......


「AのA1ルームね」

A区画に入ると、厳重なロックがあり、更にその部屋も二重ロック。


部屋に入ると見慣れた、私が愛する男性がいる。

入って早々、お互い目が合うだけで気持ちが昂る。


私と会った瞬間、濃厚な口づけを交わしていき、世間から妖艶な蝶と言われる自分は、間違いなくこの男の獰猛な肉食獣の視線にロックオンされ、身体中を支配下に置かれる囚われた蝶に変わっていく。


その床にはお互いの衣服が散らばり、激しい口づけの音が響き渡った。


船室は他の客とは一線引かれたシークレットルームだったが、それでも多少外の音は聞こえる。同様に、こちらもあまり大きな音は立てられない。

それがお互いを、更に興奮させていった。




「ヤコブ、いくらなんでもがっつきすぎだわ」


キスマークをどう隠していこうかしら?

私は首筋から鎖骨、胸まであちこちに散らばるキスマークに触れながらどうしたものかと悩んでいた。


「あのじゃじゃ馬第五王妃は、頭が悪いのに男女の機微は聡いのよね。」

そのくせ、脇が甘く、お腹の子も本当に王の子か怪しい。

実家から連れてきた侍従が怪しいと睨んでるけど。

王は何も言わないし、ヤコブも知らないふりをしているけど......第五王妃だしね。


私は、まずは乱れた髪をとかしながら、大きなため息をつく。


「だって、この部屋に来るまでに色んな男たちの視線を浴び続けただろう?嫉妬するさ」

「仕方ないじゃないの。あなたは世間から存在を知られてないし、ここなら私が男を漁っているだけにしか見えないもの」


それすら嫌なのに...そう呟くヤコブを無視する。

ヤコブはとてつもなく嫉妬深い。

それは、私がオルランド侯爵の元に嫁がなければならなくなってから、特に際立っていた。



元々この船は、存在が明かされていないヤコブとレストニア国に駆け落ちするようにと王太后に騙されて乗船券を受け取り、乗ってしまった船だ。

その指定の部屋には、社交界の華であるリアランスと既成事実をつくり、婚姻に持ち込みたいオルランド侯爵が王太后から指示を受け待っていた。


既成事実を広められ、結婚するしかなくなっても、表向き別れたように見せかけ、ヤコブは決して私を離さなかった。


必ずオルランド侯爵と母に復讐してやる

だから、お願いだ。離れないで...


そう悲痛に満ちた声は今も私の耳に残っている。


「それでどう?可愛いあなたの息子と娘は?」

私はイタズラが成功したように、ふふッと笑うと「この小悪魔め」と再び押し倒された。


以前のように時間や視線を気にする必要はない。

お互いフリーになった。

ヤコブの中性的な色気のある顔立ちから降り注がれる口づけに再び溺れる。


「なんていうか......大半の女性よりは勝ってると思ったんだけど....」

「こら、集中して...」


私の耳や首筋に噛み付くようにしていたヤコブが私を抱きしめる力を緩め、口づけを止める。


「だって、私のメイド姿よりあなたの方が綺麗だったのよ。なんか許せないわ」

「リリアに同じようなことを言われた。親子だな」


ヤコブは、誰が愛する人の前と娘の前で女装したいものかと呟く。


「親子だなっていうけど、あなたの娘でもあるんですからね。グレイもですけど.......」


そういうことだ。

オルランドと関係をもたなければならない時は必ず避妊薬を使っていた。

私の子供は、ヤコブの子供でもある。


ただ、リリアーナが管理対象ギフトを持ってしまった時は、ヤコブと同じ状況にしてしまうことに罪悪感を持ったが...


「グレイは聡い子だからね、自分の元に偶然、妹が来るなんて出来すぎていると思っているところはあるみたいだよ。流石に私の息子とは気づいてないがね」


「リリアを助けだすところまではいいわ。でも、船の爆破はやりすぎよ」


私は顔を顰めた。

船が爆破されたことはニュースにならない。

存在してはならない船だからだ。

だが、あの日、数人の貴族がこの世から姿を消した。


「あの日、初めてリリアを見た。君の若いときに似ていて、俺の娘なんだと思うと思わず息を呑んだよ。それが、追われて泣いて逃げてるんだ。君を助けられなかった過去の怒りと被ったよ。ちゃんとゲオルクが助けたのを確認して爆破させたから許してよ」


「無事だったからよかったけど......」


「そっちこそ、部屋で待機しろとか、何かリリアに話をしているもんだと思ったから慌てたよ」


ヤコブはふーっと息を吐くと、再び私を体温の中に包む。

耳たぶから首筋に向けて、激しい口づけ、いや獰猛獣の食事が始まり、彼により、魔法のように、私を哀れな蝶に変えていった。


そのまま私はどれほど時間が経ったのかわからないほど、何度となくお互いを求め合う。

気づけば夕暮れにかかっていた。


「俺たちの子供が、オルランド侯爵に逆襲してくれた」

「そうね、結局シルビアとも別れたらしいし...」


ヤコブは私を離さない。

オルランドの愛人が、まさか自分とリリアーナを殺そうとするとは思わなかった。

リリアーナが私を助けなければ、二度とヤコブと会えなくなるところだった。

愛するグレイとリリアーナとも会えなくなるところだ。


「もっと早く別れさせれば良かった。私に戸籍さえあれば

......そして、リリアーナに戸籍さえあればと思ったよ」


管理ギフトを持っているものは、レストニアに送られる。

何に使われても、研究対象にされても慰み者にされても、文句は言えない。

その中でも、リリアーナのギフトはとんでもない恐ろしい力だ。人間兵器にされても、権力者の道具にされてもおかしくなかった。


だが、結果的にリリアーナを、存在しないヤコブと同じ環境にしてしまった。


復讐より、オルランドから逃げることを優先しよう。

同じ学校に通うゲオルクを通じて、ルームメイトになったグレイに声をかけて、ヤコブの元に引き摺り込んだ。


あとは、オルランドが離婚したがる時を待つだけだ。

しっかり食事に精力剤を混ぜ、愛人宅に通わせる。

社交界やお茶会などでは、わざと匂わせてドヤ顔をしてくるシルビアを見て辛そうな顔をするだけ。


私はヤコブとの逢瀬のこの船で、散々男漁りをしていると噂されているしね。


勝手に周りはオルランド侯爵とリアランス夫人は、仮面夫婦で離婚間際と噂が立ち始め、愛人は懐妊、無事オルランド侯爵から望んだ離婚となる。

そして、時が経ち、私たちの子供が、オルランド侯爵を乗っ取る。



「長かったわね。」

「本当にね」


王太后も死んだ。残念ながら復讐はできなかった。

あれだけヤコブを苦しめても、私を傷物にしても、腹立たしいほどに、誰にも気づかれないまま、静かに暖かいベッドで息を引き取ったらしい。


ヤコブは、乱れ切ったベッドから立ち上がりそのまま服を着替え始める。

「シャワー浴びないの?」

「君の香りも、何もかも流したくない」

そう言いながら、シャツを着てトラウザーズを履く。


「そう言われると...シャワー浴びるのに抵抗があるじゃないの。次いつ会えるのかわからないんだから......」


王宮内で姿を見ても、視線を合わせることが少しできるかどうか。こんなふうに会える機会は、何歳まで残されているだろう?


そう、切なくなったが、私たちには二人の子供という繋がりがあるものね。子供達は知らないだけで......


そう、思おうと私もベッドから起き上がる。

その時───


ずっと目の前でヤコブが膝をつき、私の前に指輪を差し出す。


「母が亡くなったことをレストニア国に連絡したんだ。その際に、国王が私の存在を明確にしたいことを伝えてくれてね。和平のためにきた母はもう亡くなって批判に晒されることはないからさ。」


確かに、当事者である王太后はもうこの世にはいないし、すでに時も40年以上経っている。


「俺は、新たな両国の架け橋となる役割で、国王の兄であることもあって、ちゃんとこの国で伯爵位をもらえることになったんだ。

遅いけど、私と結婚してもらえないだろうか?

リリアーナは、レストニア公爵家の遠縁という形から私たちの養女として引き取る予定だ。

リリアーナの偽の戸籍を作る際に、私の子供であることは伝えているから、レストニアの実父も了承してくれた。あんな母だけど、実父は愛していたみたいだね」


そう、会話を続けるが、私の目はヤコブが差し出す指輪から目が離せなかった。

ヤコブの手が震えている。


私が受け入れるかわからなくて、不安なまま会話を続けている感じだ。


「ヤコブってば......あなたの提案を拒むわけないじゃないの」


私は、目から涙が溢れる。

そして、そのままシャワーを浴びることない姿でヤコブに飛びついた。





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