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【完結】存在しなかった管理ギフトの少女は本当の家族と出会う〜冷遇されていた日々は王子の溺愛で上書きします〜  作者: かんあずき
家族編

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35 【サイド】国王の後悔①

「敵国の王女でしかも、腹に子供がいるなんて!」


周囲は母を許せなかった。

かといって、大国から和平で嫁いだ身で、離婚もできない。


「ヤコブをどうする?」

「レストニアとしても王家と公爵の子供となると蔑ろにはできないようだ。」


結局、母アンジェは、ふしだらだと周囲から蔑まれ、追い詰められていった。

アンジェは、愛する男との間に産まれたヤコブに全ての愛情と必要な教育を注ぐ。

産まれてから王になった今でも、母は俺を見ることはない。



「お母様!見てください!よく文字が書けたと褒められました。」

「お母様、今日は剣術の先生に褒められました。」


俺には母に抱きしめられた記憶はない。

声を、母からかけてもらったこともない。

自分がどれだけ母を喜ばせようと、どれだけ母を求めても、

「ヤコブに比べてお前は出来が悪いこと。やっぱり、こんな田舎の小国の血では、大した子供にはならないのね」

と俺を蔑む声しかなかった。


唇を噛み締め涙して耐えるしかない俺に、ヤコブは優しい兄だった。

俺に冷たい母を嫌悪し、俺をいつも庇ってくれた。


それなのに、兄に嫉妬する自分と比べて、高潔な行動を取ることができる兄ヤコブに引け目を感じ、心は歪み始めていた。


だが、自分の中身は誰も求めない。

王になる準備だけはただ進んでいく


「アレク様、この二人があなたの未来の妻ですよ。どちらも我が国の公爵家の血を引いたご令嬢です」


「どちらを正妃にするかはアレク様が決めてください」


ヤコブがレストニアの公爵との間に産まれたから対抗したのだろう。

どんな家であっても、俺には拒否する権利はない。


妻は二人──


マリア嬢は...綺麗な顔をしているのに、全く笑わない。

鉄仮面みたいだ。

幼き頃から、徹底された淑女教育を施されているのだろう。

まるで操り人形のように、決められた動き以外はしない。

俺たち二人の会話も......ほぼない。

話をしても、この国の政治問題や、公務のことばかり。


面白くない───


アニス嬢は...いわゆる典型的な貴族特有のお嬢様だ。

俺を立てているようで自分を立てている。

こちらも、徹底されて淑女教育を施されているのか、受け答えや恥じらいはまるで演技のようだ。

マリア嬢の悪口をさりげなく入れ込むところは、表裏があり、鉄仮面より打算的で人間らしいか


いやらしいな───


二人から正妃を選べ?反吐が出る。

それでも選ばなきゃいけないなら、マリアが第一で、アニスが第二だな。

マリアなら、極力話すこともなくて済みそうだ。


そうして彼女たちと結婚した。

マリアは、運良く2ヶ月ほどで懐妊してくれたので、閨も不要になった。

マリアはヤコブに似て、出来が良い。

女なのに、周囲が誉めそやし、政治的な場面にも名前がよく出てくる。

貴族に対しての領地の分配、税制の決定に向けて、俺にまとめ上げた情報を出し、王宮の人員配置や外交など、俺の仕事は頷けば良いだけになっていった。


そのうち、


「王も、第一王妃がおられたら安泰ですな」

「もう第一王妃にサインもお願いしてはいかがですか?」


そう言われるようになり、第一王妃に嫌悪感を抱くようになり、完全に足が遠のいた。

社交界でも、わざと彼女を一人にしたり連れ立たないなど、子供っぽいと思いつつ嫌がらせをしてみるようになる。

だが、彼女の鉄仮面は、ぴくりとも動くことはなかった。


マリアのところで過ごしたくなくて、第二王妃のアニスと一緒にいた。

だが、彼女はずっと社交界の噂話や流行やマリアを出し抜きたい思惑の塊で、虚しさだけが残っていく。


それでも、アニスとの間には二人の娘に恵まれた。

だが───


「アレク様、カリーナのギフトが《求める香りが作れる》というものらしいんだけど、管理対象じゃないわよね」


アニスが震えていた。

娘のカリーナが生まれた時のことだ。

戸籍登録の時に、赤ん坊の手を水晶に当てるとギフトがわかる。《求める》というところがネックだが...


「管理対象になれば、レストニアでどんな目にあっても文句が言えないらしい。女の子の好きなおまじないや占いレベルと思えばいいじゃないか。

人の人生を左右するレベルのことが、香りぐらいで作れるとは思えないよ」


「そうよね。たしかに、普通の香水だって、リラックスしたりリフレッシュさせたり、求める香りで気分を変えるんだもの。」


実際、その後カリーナはいろんなものを作ったが、それらは効果がないか、ほのかに効果があるというものばかりだった。


「おまじないみたいなもんだったな」


アニスはほっとしていた。




その頃、兄ヤコブは、王立管理局で自分の配下となり、極秘で動かなければならないような仕事をするようになった。


俺は、あんなに出来が良かったヤコブを、自分の配下に置く事に爽快感と後ろ暗さを同時に感じるようになる。


ヤコブは母の束縛が更に激しくなっていたらしい。

しかも、存在を消されているのに、ヤコブには好きな女性が出来たようだった。


報われない恋と理解をして交際してしても、母は自分から息子が離れることを嫌い、その交際を許さなかった。

相手の女性を騙し、別の男性の傷物にさせてその男性と結婚させて、別れさせた。


「もう二度と誰も好きにならないよ」


ヤコブの悲痛な声を忘れない。

母との関係も決裂し接点を持たなくなったと聞いた。



一方で自分にも転機が訪れていた。

王宮には定期的に、世界中の芸術に長けたものが訪れる。

その中の一つ、演舞の踊り子から受ける接待に、俺はすっかり虜になった。


彼女の名はセリーナ。


彼女は踊り一つで成り上がっただけあり魅力的だった。

エキゾチックな顔つきと素晴らしいスタイル、自分が良いと思う相手にしか媚びは売らなかった。

マナーの基準も彼女だ。


彼女が尊敬しても良いと思う相手にしか礼儀は見せない。

そして、その相手はこの国では俺だけ──それだけで自尊心がくすぐられた。


そして、俺は見たのだ。


すっかりセリーナと親しくなったころ、俺が、所かまわずスキンシップをとっていると、あの鉄仮面だった第一王妃のマリアの眉が初めて動くのを。


第二王妃のアニスは、明確で、セリーナに対して嫌悪の目を隠そうとしない。

俺はすっかり、二人を、そして、俺を種馬のように扱ってきた周囲を出し抜いてやったような気持ちになった。


俺は、誰の反対も止めるのも聞かず、ただの平民の踊り子のセリーナを第三王妃にすると決めた。


母から愛されて育っても、好きな人と添い遂げることすらできない兄


俺の寵愛も貰えないくせに結婚した、家柄だけの第一、第二王妃


そして、小国の血統だと俺を馬鹿にした母


第三王妃との結婚は、俺を取り巻く環境への復讐だった。


平民の妻を持つことで、血統など、王の寵愛の元では何も意味を持たないと母に示せた瞬間、俺は最高に気持ちが良かった。




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