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【完結】存在しなかった管理ギフトの少女は本当の家族と出会う〜冷遇されていた日々は王子の溺愛で上書きします〜  作者: かんあずき
恋愛編

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33 ヤコブの正体

どれだけ時間が経ったのだろう。

わたしは、ゲオルクに大切に抱きしめられ、少し会話を交わしては降り注がれるキスにすっかり溺れていた。


でも......その幸せに浸っていられないことは気付いている。


「ゲオルク......あのね...」

わたしは、ゲオルクが近づけてくる唇を手で制止した。


「リア、私情半分が予想外に嬉しかったから、もう少し浸りたいんだけどねぇ」


君の性格的に無理だよね...と苦笑しながらため息をつく。

私を抱きしめたまま、ゲオルクの瞳には影が差していた。


「もう、大体の予想はついているよ。君が持ち帰ろうとしていた化粧品箱には、母さんの化粧品ともう一つ、カリーナ姉さんが、母さんが倒れた日に渡した香水がある」


私はぎくっと身を固くした。

ゲオルクは、私の首筋に自分の頭を沈めてそのまま語る。


「君はカビだらけの化粧品のことを聞いた時、俺がかつて記憶していた化粧品に戻すから、奥さんに使ってもらったらいいと言ったね。」


「ええ。」


ああ、そうか。

化粧品に問題があるならそんなことは言わない。


「化粧品を持ち帰らないといけないのにそんなことは言わない。だが、俺が使って欲しいと君に渡した後から、君の手は震え始めた。だとしたら、化粧品以外に持ち帰ろうとした他のものはなんだろう?残りは、カリーナ姉さんの香水だろうね。」


「はい。」


私は、そのままゲオルクを抱きしめる。

もう、ゲオルクはわかったはずだ。


私が、先日倒れた第五王妃の部屋から帰ってすぐに、第三王妃が最後に身につけたカリーナ様の香水を持って帰ろうとした理由を──

侍従が、側で話を聞くことがあってはならない理由を...


「ヤコブが、私情を交えたのは正解だな。リアがいなかったら、発狂して暴れて、カリーナ姉さんのところに飛び込んでいる。大丈夫、俺は冷静だよ。酒を飲んでるけど、ちゃんと君とのキスも会話も意識にあるから安心して」


くすっと笑うゲオルクは、私の表情を見て、再び、耳たぶや首筋に唇を寄せる。


あまりに、見たことがないぐらいのスキンシップ、いや見たことがあっても困るスキンシップの嵐で、もしかして、アルコールでなんの記憶も残らないパターンかもしれないと思い始めていたのだけど、それすら見抜いているのよね。


むしろ判断能力はキレッキレだわ。


安心したような、事実を伝えることに苦しくなるような感覚が襲ってくる。


「俺は大丈夫だから、今わかっていることを全て話してくれる?」


変わらず、唇を落とし続けるゲオルクに、わたしは第五王妃から聞いたことを含め、ここまでにあったことを説明した。


「ごめんなさい。何も言わずに帰るのは申し訳ないと思っていたけど、あなたが信頼しているカリーナ様のことを伝える勇気がなかったの」


私は、そう頭を下げた。


「いや、それなら早くグレイに香水を見てもらったほうがいいな。ただ、どうしようか?うーん...」


ゲオルクは少し私から体を離して、じっと私のことを見つめる。


「はぁーっ、戻ったらいちゃつけないだろうな。グレイはとんでもないシスコンだし」

「シスコンじゃないですよ。自分の持ってるギフトのことで私に負い目があったみたいで、気にしてくれていたようです」


わたしは、何をゲオルクは言っているのかしらと首を傾げながら、お兄様を必死に庇う。


「そう思っているのは君だけだよ。これに関してはリアランス夫人に大感謝だね。貴族社会に塗れすぎていたら、リアはこうも可愛い性格にはならなかっただろうからね。」


そう言うと立ち上がり、ゲオルクのコートを取り出してわたしの頭からすっぽり被せた。


「涙で目が腫れているから、これで隠して歩こう。俺が、時々口づけしながら歩くから、明日には復縁の噂が飛び交うだろうね」


ゲオルクはくすっと笑い、化粧品箱を持たせた私を抱え込むようにしながら部屋の扉を開けた。





ヤコブの部屋には重い空気がのしかかる。

香水には、予想通りギフトがかかっていたからだ。


ただし、第五王妃の時のような明確な殺意を持ったギフトとは異なっていた。


《第三王妃が消えていなくなりますように》


そのギフトの願いは、恐ろしいほど無邪気な願いで、残酷な願いだった。

うつむくゲオルクの手を握り、わたしはその香水の瓶を見つめる。


「あの......不思議なのですが、カリーナ様のギフトは管理対象ではないはずです。おまじないレベルの、叶うといいなという柔らかいものではなかったでしょうか?おまじないが発動したということですか?」


わたしはヤコブやゲオルクを前に聞いてみる。

ヤコブは事情を知っているようだ。


「いや、それなら第五王妃の香水にあんな明確な殺意をつけることはできないよ」


グレイが、険しい顔つきで否定する。


その時──


「兄さん、それ以上は僕から話さないとゲオルクたちは納得しないんじゃないかな?



ヤコブの部屋の衝立の奥からスッと立ち上がる人影がある。


「えっ?」


全くそばにいる気配を感じなかったのだけど......


「立場的にあまり姿を現すわけにはいかなくてね。気配を消すギフトをかけてもらっているんだけど、どこでもかしこでも盗み聞きしているわけじゃないから安心してね」


そう話しながらヤコブの隣に出てくる男性は、ヤコブと似た彫刻のような深い顔立ちに綺麗な肌と同じ色合いの長い髪、ヤコブさんがメイドになった時のような雰囲気だ。


「アレク、こいつらとの信頼関係にヒビが入る。話に加わるなら最初から入ってくれ」


ヤコブは嫌そうな顔で、深くため息をついて、男性の顔を見る。


「父さん......」

「国王様...」


ゲオルクとグレイが唖然とした後、グレイは急いで臣下の礼を取る。

わたしも慌てて、カーテシーをする。


国王アレキサンダー様....が、ゲオルクのお父様で......

ゲオルクのお父様...初めてお会いするわ。


で、その方はヤコブさんをお兄さんと呼ぶ??

あれ?待って、どういうことなの?


国王は御兄弟はおられないはず...

ヤコブさんは、一体何者なの?


わたしはカーテシーの礼のまま、驚きを心の中に押し込めるのだった。









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