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【完結】存在しなかった管理ギフトの少女は本当の家族と出会う〜冷遇されていた日々は王子の溺愛で上書きします〜  作者: かんあずき
恋愛編

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32 振られるための告白

ゲオルクのお母様が使った化粧品と一緒に、カリーナ様の作った香水を持って帰る。


これで、ヤコブさんが告げた目的は達成される。

間違えてゲオルクやその奥さんが触れてしまって危険な目に遭うことはない。


胸がモヤモヤしている。

ゲオルクにカリーナ様のことを隠してこれを持って帰ること。

そして、ゲオルクの奥さんが危険な目に遭うことはなくなるのに、モヤモヤしている。


私は......醜い......


思わず顔が歪む。

視界が涙で歪む。

あと少しなのに...

ゲオルクに告白して、笑顔で振られて...帰って泣くだけ。

それなのに、今泣いたらゲオルクは、振りにくくなる。


「リア?様子がおかしい。ヤコブからの火急の要件はなんだ?お前が泣いているのは、そのことと関係があるのか?」


さあ、勇気を出して、振られるだけ

さあ......


でも.....言わないとダメなの?


「よ、要件は......ないわ。私がわがまま言って、会いたいってヤコブさんに言って困らせただけ。へへっ、第五王妃がなかなか苛烈な人だったから、それを話してなぐさめてもらいたくなっただけよ。ごめんなさい」


告白して、ゲオルクに気まずい思いをさせたくない。

違う......

わかってるんだから、振られるって。

もう言わなくて...いいじゃないの。


「じゃ、じゃあ。これ、ありがとう。」


わたしは、震える手で化粧品の箱を持つ。

手がガクガク震える。

箱を包むものを持ってくればよかった。

人目についちゃう。

私物を持って帰っているんだとみんな思ってくれるかしら?


足の力も入らない。

息をするのも苦しい。

これでもう...ゲオルクとさよならだ。


その時──


「それを一回置いて」


ゲオルクの冷たい声が響く。

失敗した。言い訳しすぎた?

わたしは、ごくっと唾を飲み、化粧箱を机の上に置く。


「リア、隠し事は無しだ。」


ひゅっと息が止まり、わたしは凍りつく。

そうだ、ゲオルクは出会った時から勘が鋭く、状況把握に長けている。


「隠し...ごと?」

「まず、リアは第五王妃にやられたことを楽しんでも、わざわざそれを愚痴りには来ない。そして、会いにきたら困るとわかっている俺と二人きりになろうとはしない」


そうよね、言い訳に無理があった。

わたしはがっくし肩を落とす。


「次、ヤコブが火急の要件というのは相当だ。ヤコブは私情は交えない。今日は、リアは第五王妃の面会の日で、そのまま急いで動くということは、この部屋に何かあることを第五王妃から聞かされたことになる。

しかも、俺がリアと別れて、第一王妃に伴侶を探してもらうことを知った上でリアを派遣することはない。リアの評判に関わるんだからね。何か事情があるはずだ」


「そ、それは......いえ、交えない私情を交ぜてもらったんです。私情半分、任務半分といいますか...」


トホホ...

ゲオルク、勘が冴えすぎてないかしら?

お酒飲んでコレ?

シラフじゃ絶対誤魔化すの無理じゃないの。


「へえ、じゃあ、その私情半分と任務半分を聞かせてもらおう。」


ゲオルクは腕を組み、私の前に立ち塞がった。

私はそれを力なく見つめた。

もう.......だめだ。


「ああ、任務はきっとその化粧品の箱だよね。それを持ってそのまま帰ろうとするし、君が淑女になりきれずガタガタ震えてるんだ。よっぽどのことがあるのはわかる。」


「その通りです。ゲオルクに何も言わずになんて、無理だったわ。」


ゲオルクと出会った時のことを思い出す。

何も言わなくても、私の身分やギフトの内容まで、どんどん突き詰めていった。


ヤコブさん、謀ったわね。

わたしがこうなること、絶対予想ついてたでしょう。

よくも!よくも、カリーナ様のことを伝えるかどうするかは君に任せるなんて嘘ついたわね!


私はもう居た堪れない。


「その...まずは言い訳するわ。あなたのこと考えて伝えるかどうか迷った。それでも嘘をつかれたら、傷つくわよね。それもわかっていて言えなかった」


「だろうね。リアの性格もちゃんと把握している。そこは心配しなくていい。」


ゲオルクは、少しだけ声音が優しくなり、そっと私の髪に触れた。

わたしはその動きにまた心が苦しくなり、涙が出そうになる。


「私情から聞こうか?どうもリアの様子がおかしいし、不安定だ。」

「私情から!!いえ、あの、もう私情半分は捨てます。それをしてもあまり何も変わらないから大丈夫。ヤコブさんとお兄様がわけわからないことを...」


「いや、何度もいうが、ヤコブは私情を交えない。それなのに、私情を入れてくるなんて、むしろそっちがメインかと思うほど関心がある。ほら、何やらかしたんだ?」


ゲオルクは呆れたように、今なら許すと言わんばかりに私に言うように促す。


「いや、任務のことをちゃんと伝えさせて。そっちが先だわ」


どう考えても、失恋した後にカリーナ様の話をするなんて無理だ。カリーナ様のことを伝えたら、ゲオルクがショックを受けるとわかっているのに。


「ダメだ。ほら、そうしないと、その化粧品、何に使いたいのか知らないが持って帰らせないぞ」


ゲオルクは、その冷たい視線を外さない。

誰のために私はこんなに苦労しているんだ...

もう、いい加減にしてほしいわ。

目からホロリと涙がこぼれ、どうしたらいいのかわからなくなる。


次から次にポロポロと......恋をしたのも初めてだったのよ。

告白するのだって、振られるのだって初めてなのよ。

なのに、追い詰めないで......


「うっ.......どうして...みんなそんなに...意地悪いうの?...わかってる...無戸籍だもん。管理対象...だもの。期待も...夢もみない。わがまま...言わない」


わたしは溢れる涙を手で拭った。

ゲオルクが、思わず息をのみ、じっと見る。


「リア?...ごめん、いじめ過ぎた。ゆっくりでいい。落ち着いて、怒らないから、ね?」


ゲオルクは分かってないのだ。何かゲオルクが呆れたり、怒ることを話すと思っているのだ。


「ただ...ゲオルクを...好きになった。それだけよ...初めての恋だった.....それだけ。振られなくても...結果はわかってる。王子だもの......なのに...みんな振られてこいって......何も望まないのに。ただ、想ってちゃ...いけない...の?」


「リア───」


部屋に静かさが広がり、わたしの嗚咽だけが響いた。


ゲオルクは全く動かず、固まっている。

全く予想していなかったという顔だ。

それを見て、わたしは冷静になれ、淑女になれと言い聞かせる。


「ごめんなさい...取り乱した。忘れて......」


わたしは手で目を擦って、涙を拭おうとする。

その手を慌てて、ゲオルクが止める。


「......リア...俺は」


ゲオルクが聞いたことがないぐらい低い声でわたしの名前を呼ぶ。


「あなたには、新しい方が待っているってちゃんと理解しているの。迷惑はかけない。ちゃんと社交界でも、気まずくならないように、新しいパートナーを連れて笑顔で対応する。だから、やっぱり......ちゃんとあなたを忘れるから、今は振らないで」


そこまで言うと、再び涙がポロポロこぼれてきた。

わたしは、最後の言葉を聞きたくなかったんだ。

グッと唇を思いっきり噛み締める。

痛みが口に広がる。冷静に──冷静に。


その時───


溢れる目尻に温かいものが落ちてきた。


へっ?

わたしは思わず顔を上げる。

柔らかい、少しアルコールの香りが近づく。


「え......あの...ゲオル....」


ゲオルクの目が、わたしと重なり、目尻から彼の唇が離されたのを見た時、私は思わず動きが止まる。


「唇を噛まない。ああ、血が出てる。」

ゲオルクは、唇を指で触れる。


「自分を痛めつけない。可愛い目を擦るのも禁止。私情を挟んだヤコブの思惑はわかった。」


そういいながら、再び目尻にキスを繰り返す。


「えっ!あの? よくわからないのだけど、振られる時には、目に接吻をしてお別れするものなのかしら?」

「どう思う?」


ゲオルクは、クスッと笑い、額や、こめかみ、頬に触れながら、小さなキスを繰り返す。


「私......ハッピーエンドの本しか読んだことなくて...でも、お別れのキスというのはなんか聞いたことがあるの......これがそれなのね。そっか、良かった。言葉でボロボロに詰られて泣いて帰るのだと思ってた。王宮で泣いて帰ると目立っちゃうでしょ。これなら、笑顔で帰れそうだわ。ありがとう。」


そういうと、ゲオルクは無表情から呆れた顔になり、キスをやめて「違う」と一言。

そして、大袈裟にため息をついた。


「嘘だろう......ここまでしても俺の幸せを叶えてくれるリアには通じないんだ」

「幸せを叶えてくれるって?」

「あのね、俺の幸せにリアと結ばれること以外あると思う?こっちは、片思いだと思っているから、俺がリアを忘れるために離れて、君と添い遂げたいと願ってはいけないって思ってたんだ。ギフトが発動して、原因となるリアに何か起きてしまうじゃないかとビクビクしていたのに.....」


わたしは驚いて、ゲオルクを見つめる。


「ゲオルクが片思いって...じゃあ、このキスは?」

「俺のものっていうマーキング。はい、じゃあ目をとじて」


目を閉じる.....目を...

わたしは、パニックになり目を急いで閉じる。

今、ゲオルクが話したことは夢?


「閉じた?よしよし」


ゲオルクの楽しそうな声が聞こえてくる。

わたしはぎゅっと鼻にシワが入るほど固く目をつぶり、手に力を入れる。


「軽くでいいよ。じゃあ、好きのキスをよく覚えておいてね」


その瞬間、唇に温かいものが重なってくる。


ん!!


パッと目を開けると、ゲオルクの顔が目の前にあって、温かいアルコールの香りを含んだ唇が何度も角度を変えて重なってくる。


んんっ!...…ん!


パニックから、力が抜けてくると、今度は、それは深くなり、わたしは力がガクッと抜けるが、そのキスは終わることはない。


ゲオルクの優しいキスのシャワーは、やがて深く激しいキスへと変わっていくのだった。














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