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【完結】存在しなかった管理ギフトの少女は本当の家族と出会う〜冷遇されていた日々は王子の溺愛で上書きします〜  作者: かんあずき
恋愛編

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22 母の最後

「ゲオルク!往生際が悪いわ!リリアーナ様よりもいい人がいると思うの?あの王妃たちが満足して、あなたが常に手を離さない。自分の香りを付けさせる!そんなこと今までなかったわよね。」


私たちを別室に案内したカリーナは、私の肩に手を置き、すべての女子を代表したかのように声高らかに言い放つ。


「ほら!目の前で愛を乞いなさい!」


あら?

もしかして私、一緒にゲオルクに結婚を迫っている女になってるじゃないの!

ゲオルクも私も目が泳ぐ。

ちょっと待ってちょうだい。

愛を囁くまでは今回の偽装デートに含まれてないわ。


「あの、カリーナ様。まだ私たち、そこまでの関係では...」

「何を言ってるの!」


カリーナ様はわたしの両手を握り、ここで逃してなるものかという鼻息が聞こえてきそうな勢いだ。

ゲオルクは、回りくどく言っても無駄だと思ったのだろう。

きちんと視線をカリーナに向ける。


「カリーナ姉さんも知ってるだろう。母のことを思うと、リリアーナと結婚なんてする気にはなれないよ」


ゲオルクは肩をすくめながら言う。

カリーナは一気に泣きそうな顔になった。

でも、冷静になれば、このパターンで本来ショックを受けないといけないのは私じゃないかしら?


全くゲオルクってば、演技だからいいけど、これほんとの彼女になったら修羅場ですからね。

ダメでもオブラートに包みなさいよ!


でも、どうしよう?

カリーナ様が私の代わりに泣きそうじゃないの?

わたしの泣いたふりもいるのかしら?


私は、ゲオルクにちょっと抑えなさいよと目配せする。


いろんな小説でこんなシーンはなかったかしら?

その時主人公はなんて言ってた?


ダメだわ。

私はため息をつきそうになった。


私が読んだ小説だと、一方的にみんなの前で婚約破棄されて、無実の罪を着せられて、オンナはみんな国外追放されてる。


でも、今回は、ただの婚約者候補が一方的に候補から外れるだけだもの。そうね、で終わる話だわ。

ただ、ヤコブさんの許可なく、ここで勝手に別れちゃダメなのよ。どうしましょ。


わたしは困ったように眉を悲しげに下げながらカリーナ様を見つめる。

すると、カリーナ様もわたしをうるうるの瞳で見つめ返した。


「私は...ただ、ゲオルクにあったお母様の不幸で家庭を持つことを諦めてほしくないのよ」


カリーナは、ゲオルクになんでわかってくれないの?と迫っている。


ゲオルクにもちゃんと心配してくれる人がいるのね。

でもそこまで、カリーナ様はなんでゲオルクを結婚させたいんだろう?


なんか、不自然なモヤモヤ感が残る。


「あの...失礼を承知で伺いたいのですが、カリーナ様はどうしてそこまでゲオルクの心配をしておられるのですか?

正直、カリーナ様のお母様も、第三王妃様のことをそこまでよく思われていない気がしたものですから...」


ゲオルクの前では、第三王妃の話はあまり言いたくはなかった。でも、腹違いの姉弟でここまで心配するかしら?


なんだかしっくりこないし、違和感を感じたのだ。

カリーナは涙を拭いて、ああそうね、と頷く。


「実はわたし、ゲオルクのお母様が倒れられた日に、お茶会にいたのよ」


どうやらゲオルクも初めてそれを知ったようだ。


「えっ!」


わたしと同時に、声を発してカリーナ様を二人で見つめる。

お互い目が合う。

ゲオルクの目が心細そうに揺らぐ。

「ゲオルク、大丈夫よ」

とわたしは反射的に声をかけながら手を握った。


その二人の握られた手を目を細めてカリーナは見つめ、わたしとゲオルクに微笑んだ。


「ほらね、ゲオルク。そうやってあなたを心配してくれる人が側にできたんだもの。離しちゃダメよ。」


そういって、カリーナは外の景色に視線を移した。


「あの時のお茶会は、第一王妃、第二王妃、そして、第三王妃のこじんまりしたものだったわ。子供がみんな小さかったし、王太后はすでに表舞台には顔を出さなかったから、普段のお茶会は今と違って三人と使用人だけだった。」


カリーナはその時のことを思い出したのだろう。

指先がわずかに震えていた。


「まだ、私は社交界にデビュー前で小さかった。

でも、ギフトの力を使った香りのものは、もうたくさん作っていたの。今みたいにお店で喜んでもらえるわけではない。だから、作るとみんなにプレゼントして回ったの。」


わたしはそれを聞き、カリーナ様の小さな時を想像して微笑ましくなった。

私もマーサたちと一緒に作ったお料理をお父様やお母様に食べてもらいたくて必死に作ったことを思い出したのだ。


「みんなにプレゼントして回ったの。それがあの第三王妃が倒れたお茶会だった......今みたいに大きなお茶会ではないから...気軽に出入りできたのよ。そして、私は、自分が作った練り香水を第一王妃様と第三王妃様にお持ちしたのよ」


ガタン


ゲオルクが机に手を置き、身を乗り出す。


「か、母さんは?どんな感じだったんだ?何か飲み物を飲んで倒れたり、傷つけられたりはしてなかったかか?」


ゲオルクはやっとお母様の死んだ時の状況を聞くことができる人が身近にいたと知って聞きたいことがたくさんあるようだ。

「ゲオルク、落ち着きましょう。」

わたしは、ゲオルクを落ち着かせようと体をさすり、座らせようとする。

カリーナ様もゲオルクの勢いに返答が遅れる。


「ゲオルク、カリーナ様はあなたを心配して今まで言わずにいたことを伝えてくださってるんだわ。ね、私も一緒に聞くわ。落ち着いて」


何もできないが、ゲオルクに圧倒されて、ここでカリーナが口をつぐむことの方が怖かった。

私は、いつもの仮面がはげ落ちたゲオルクを抱きしめるように必死で体をさすり続ける。


「あの日、第一王妃も第三王妃も私のプレゼントを喜んで受け取って、その場までつけてくださったの。いい香りねって、二人ともそういってくださったのよ。

だから、あなたが思うような、虐められて何かがおきたわけじゃなかったわ。」


カリーナは震えていた。そして苦しそうだった。

当たり前だわ。

つい先ほどまで、自分の作ったものを喜んでくれた人に、その後訪れる不幸なんて想定するわけがないもの。


わたしはゲオルクの体をさすり続けた。

ゲオルクは、じっとカリーナをすがるように見つめている。


「その後、紅茶も配られた。だけど、子供の前ということもあったのか、三人とも和やかに話をしていたわ。飲んですぐ第三王妃になにかあったわけじゃなくて、倒れたのは会が始まってしばらく経ってからよ」


カリーナ様は、その時のことを思い出したのだろう。

つらそうに目を閉じた。


「もちろん、すぐに医者を呼んだし、第一王妃も私の母も駆け寄って「しっかりして!」と第三王妃に声をかけていたわ。でもそのまま意識は戻らなかったわ」


「この間の第五王妃の時みたいに紅茶を飲んですぐではなかったんですね」


私もカリーナ様に聞いてみる。

カリーナは、首を横に振って全く違うことを強調した。


「全然違うわ。もちろんこの間の事は、あなたもびっくりしたでしょうし、私もあの時のことを思い出してショックだったわ。でも、この間みたいに紅茶を飲んですぐ倒れるわけじゃなかったのよ」


ということは、第三王妃の時と第五王妃の状況は全然違うのね。


ゲオルクはもっと聞きたいようだ。

でも、何を聞いたらいいのかもわからないみたい。

口を開いては閉じている。


いっそ、第一王妃が何かしていたとと言ってくれるなら、やっぱりということになるんだろうけど......


カリーナ様は嘘をついている雰囲気はない。

今までゲオルクには聞かせないように配慮していたのだろう。

私にそんな大事なことを聞かせる段階で、結婚に対して期待をかけてくれているんだろうってわかるけど...偽造カップルなのよ。

罪悪感が半端ないわ。


「あの...第三王妃は、第一王妃たちからかなりきつくあたられていたのかしら?その...この間の第一王妃の発言の雰囲気をみていると関係は良くないように感じたのだけど?」


私が知っている範囲の情報で、聞けることを聞いてみる。

カリーナは辛そうな顔をした。


「そうね。第一王妃と私の母は第三王妃に風当たりがきつかったわ。でも、お茶会の少し前に父から、母や第一王妃には、第三王妃への態度を改めるように注意を受けていたのよ。だから、あの日は第三王妃を責める言葉は一つもなかった...断言できるわ」


カリーナは、そこまで話し終えて肩の荷が降りたようにホッとした顔になっていた。





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