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全てを奪われたギフト持ちの少女は覚醒して家族を書き換える  作者: かんあずき
ギフト編

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2/12

2 明らかになる素性

燃えあがる船の熱風で顔がひりつくように熱い。

それなのに、体は水に浸かり冷えで震えていた。


叫び声もない。

静寂が怖い。


先ほどまで当たり前にあった巨大な船が、瞬時にして崩壊し、燃え、黒煙をあげ、崩れて沈んだ。


「何が?何が起こっているの?」


思わず呆然と見つめる。


「船の燃料から火が迫ってくる可能性がある。ここを離れよう。」


男性は船から飛び散った救命艇や浮いたままの浮き輪を確保し、わたしの体を押し上げてその船に乗せた。

続いて男性も乗り込み、近くにある木の破片をオールがわりに漕ぎ距離を取る。


「体温が下がる前に、迎えが欲しいな...君は、一人か?」


その質問に胸がキュッと掴まれるような気持ちになる。


まただわ


迂闊に、男たちに、一人で船に乗っていることを話してしまったからこうなった。

どうしよう。


この人は、助けてくれたからって安全なの?

だって、わたしが飛び込んだと同時に目の前で爆発して沈没したのだ。


もしかしたら、この男性は船の爆破のその犯人で、私は目撃者だという可能性だって。


「......あ」


燃える船の炎に、ぼんやり照らされる男性の年齢は、20代後半ぐらいだろうか。

髪と目の色は黒く、はっきりと顔はわからない。

ただ、私と同様濡れた髪が肌にはりつき、薄いシャツがべったりと肌に張り付いていた。



冷静に考えるとーー怖い!


逃げなきゃ!

私は思わず、後退りする。

救命艇がぐらりと揺れる。


「お、おい、動くな。沈まないだけで小さな船なんだ。揺らすな。」


男性がぎょっとしたように、手で私の動きを制止するように合図をする。

その暗闇の中で、男性の瞳だけが黒く光って見える。


「怪しいものじゃない。というより、俺から見たら、君の方がかなり怪しい」


そう言われるとギョッとする。


それもそうだ。


わたしもあからさまに怪しげな男たちに追われていて、船から暗い海に飛び込んで逃げたんだった。


どう考えても怪しすぎる。



しかも、私は身分を証明するものが何もない。


私のギフトはこの国の管理対象になる力。

それを隠して生きていることを知られたらーー

考えるまでもない。


だが、それを管理する人間すら利用したがるほど危険なギフトだと考えて、両親は、私を守るため、生まれてすぐ死んだことにしたのだ。


だから、私はこの世に存在しないも同然だ。


運良く、私は侯爵家の娘だ。

両親も、貴族として生きるのではなく、ただ隠れて生きるだけならなんとかなるという判断だった。

だから、私は外の世界を知らない。


どうやっても保護された段階で詰む。

喉がひくりとなる。


「言える範囲でいい。」



両親は、離婚してしまった。

二人が、自分の未来を脅かす私の存在を認めるとは思えない。


「わたしは、怪しいものではありません。あの船で初めて出会って、普通に世間話をしただけの人に、突然襲われそうになって、逃げていたんです。」

「助けを求めなかったのか?」

「求めました。でも、助けてくださる方はいなくて.....」


そこまでいうと、震えと同時に不安も襲ってきて、私は、涙と鼻水でガタガタ震え始める。

男性は、しばらく私の様子を見て、手を出せと言った。


私はそーっと手を出すと、その手を「触るぞ」といって、触ったかと思うと色々調べ始める。


腕なども触り、「ふむ」といい、考え込んだ。


「足も出してくれ」


そう言われギョッとする。

貴族社会で、足を知らない男性に触らせる行為は、結婚前の女性は絶対させてはいけない行為だ。

男女関係を疑われても仕方がない。


どうしよう


私は躊躇して固まってしまう。


「足を確認したいだけだ。」


男性の冷たい視線と声に、わたしは、知らない人と接したことがないのに、この距離感でかわし方もわからず、更に震えが止まらなくなる。


男は頷いた。


「いや、もういい。わけありだけど、君は貴族だな。未婚女性で貴族なら、男性に足を触らせることに、絶対的に嫌悪するはずだから。

ついでに言うと、泣き叫ぶ様子もないし、茫然としているようだから、知り合いは乗っていないし、この船の爆発は知らなかったということだな」


そう言われて、思わず瞠目する。


ああ、ちょっと話しただけでバレていくと思うと私は固まってしまう。


男の言っていることは全て正しい。


でも、その貴族の娘だということも、1人で乗っている訳を話すことを証明できるものがないことに焦りを感じていた。


「名前は言えるか?ああ、どうせ訳ありそうだから家名はいい。君の名前だ」


男は聞きながらも私が正直に言うはずがないという顔をしている。

それなら聞かなきゃいいのに...

少しイラっとする。


そう思うが、ギフトのこと以外、つかなくていい嘘はつかないほうがいい。

つく理由もない。


「リリアーナ。みんな、『リリア』か『リア』って呼んでたわ」


もうそう呼んでくれる人はいない。

私はため息をつきながら名前を告げた。



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