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全てを奪われたギフト持ちの少女は覚醒して家族を書き換える  作者: かんあずき
ギフト編

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11/11

11 ゲオルクの素性

第二章 お仕事編スタートです。

ストックが貯まるまで、毎日21時20分に出します。

王立管理局───調査課


初めての外出から、いきなり働くことになったのだけど...


「リリアってやっぱり貴族なんだな」

ヤコブが嬉しそうに破顔する。

今いるのは訓練室。そして潜入捜査用のダンスレッスンの真っ最中だ。

「元貴族ですし、社交経験なしですよ」

「顔が割れてないのは重要だよ。付け焼き刃で入るとバレるし、貴族女性は働かないだろう」


兄を含め、課には貴族の男は有り余っても、女がいない。しかも、外に出せる貴族女性になると皆無。

当然と思う。なるほど。私は都合がいいわけだ。


「いいですけど...潜入中にお父様やお母様と鉢合わせしないか心配です......」

私は思わず本音がこぼれてため息をついた。


兄が父に私を保護したと伝えてみたが、

「我が家に最初から娘はいないだろう?」

という言葉だった。


母も──あの船で私は死んだと安堵しているのでしょうね。


「あのクソ親父が!!」

グレイは低く吐き捨てるように話し、怒りを隠さない。

むしろ私の方が、諦めもあって冷静だった。


「お父様が知らないっていうなら、いっそ、妻ですと私をお父様に紹介してみます?お兄様」

私のために怒ってくれるのがうれしくて、つい、唯一の味方である実の兄を茶化してしまう。


「それは面白そうだな。今の戸籍なら赤の他人だ。侯爵家の嫡男が、一目惚れで自分と似た顔に恋に落ちたってのもアリだよな」

うんうんと頷きながら、ゲオルクも悪ノリする。


「お前たち、俺はまだ未婚だ。勝手にバツをつけないでくれよ」

グレイは冗談でも面白くないと、嫌そうな顔をした。


そんなつらい話でも、こうして笑い話にしてくれるこの環境は心地いい。


かつて、両親の嘘に騙されて「お菓子のような甘い環境」で愛されている娘だと思い込んでいたあの頃──


外の世界から遮断された心地よさより、本当の私を知る周囲といる今の方が息がしやすい気がする。


「実際の潜入場面では、グレイかゲオルクをパートナーを固定しようと思っている。課内のいろんな男と連れ立ったら、それこそリリアーナはそういう目でみられかねない」


ヤコブはどっちがいいのかと悩んでいるようだ。


「お兄様は、縁談が多数舞い込んでいるんじゃないの?」

婚約者やこれから婚約を控える場合は、その手の噂は避けた方がいい。


「となると、相手は俺だな」

ニッとゲオルクが笑う。

「そういえば、ゲオルクは貴族ではないの?」


身なりや動きはこなれているし、テーブルマナーや行儀作法もお兄様と変わらない。

訓練の賜物なのかしら?


「貴族って言えば貴族なのかなぁ」

うーんと顎に手を当てて遠くを見て考えるゲオルク。

「だってお兄様と寄宿舎時代からの付き合いなんでしょ」

「まあそうだね。あそこは貴族しか来ないから。俺はね、第三夫人の息子なんだよね」


はい?今なんて?


思わず、ダンスレッスンの足が止まる。

「あれ?知らなかったのかい?」

ヤコブが、驚いたように私とゲオルクを見つめる。

「第三夫人って、そんなに夫人が持てるのは...」

「そうそう。王だけなんだ。ああ、でも第一と第二だけでも子供が3人はいるからね。ちなみにこの間の作香師の姉は、第二夫人の降嫁した娘なんだ。」

「えっ!じゃあこの間の船とか爆破に巻き込まれてたらとんでもないじゃないですか!」

「そうでもない。王子は上にも下にもいる。だから、こんな危険業務をしてもむしろ他の兄弟は大喜びだ」

ゲオルクはケラケラ笑っている。


確か第三夫人は早くにお亡くなりになったんじゃなかったかしら?

踊り子だった夫人を王が見初めてお手つきにしたのよね。

世間では、シンデレラストーリーのように話されていたけど、お父様やお母様の反応は逆だった。


教養もない女性に、王がそそのかされたのだと。

頭を下げなければならないのは嫌だと二人が話していたのを聞いたことがある。


「そんなふうに、自分の命を軽く考えないでくれ。リリア、無理強いはしないが、もしゲオルクに何かあればギフトを使って助けてやって欲しい」


ヤコブは、ふざけて話すゲオルクを軽く睨む。

ゲオルクは、笑いを止めて私たちを見たが、ふっと一瞬、目の光に影が走ったような気がした。


「いや、何か俺にあるならそこは無理強いしてくれよ」


再びゲオルクが真面目な表情で突っ込み、おどけたように笑い出す。 


(さっき影は気のせいだったのかしら?)


ふふっとゲオルクの言葉に私もつられて笑い声を漏らした。

ギフトをそんなふうに軽く扱ってくれるのはありがたかった。

今まではギフトを抑え込むことばかり考えていたのだから。


「いや、冗談ではなく、今度の潜入は王室だ。どうやら、第一夫人と第二夫人の争いに、第五夫人が絡んできている。先日、第五夫人の妊娠がわかったんだがね」

「ああ、あの件か」


ゲオルクも嫌そうな顔をして、顔をこすった。

「第一、第二、第五夫人は、それぞれ三大公爵家の娘なんだ。第五夫人は一番若いから、父王も夢中でね」


ゲオルクの父親なのだから年齢もそこそこだと思うけど。

第五夫人ってほぼ親子じゃないの?


「この間から、第五王妃がいろんな嫌がらせを受けているそうだ。それこそ堕胎を狙うような...」


それを聞いて背筋が凍った。


「じゃあ......もしもの時はギフトを使ったらいいんですね」


私は自分の目的を悟って、ヤコブに聞いた。

だが、ヤコブは迷っている素振りを見せる。


「それが、第五夫人は、裏で内通している男がいる噂があるんだよ。君のギフトは、因果を断ち切るからね。お腹の子が王の子であればよいが...」


状況は違えど、過去の自分とリンクして私の心は凍りつく。


「迂闊にギフトを使ってしまったら、その子の未来に影響してくるかもしれない...ってことですか?」


助けた子が王の子でなかったとしたら───


本来のあるべき姿に戻る?

その時私のギフトは、どこまで、誰の運命を変えてしまうのだろう。

私は、そのわからない結果に戦慄するのだった。







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