「初恋愛短編作品」『君を心から愛していた』
流行りの設定は難しくて書けなかった……笑
「あ、ゆっきー! おっはよー!!」
──僕には好きな人がいる。想い続けて五年は経っていた気がする。彼女は、天真爛漫で活発で。だけれど時折見せる無垢な笑顔がとても可愛くて。
いつからか、彼女に惹かれていった。
「おっはー! 美香!」
「この季節になると暑いよねー。もー本当に!! この日に限っちゃ神様の馬鹿野郎だよ!」
裏表もなくて、分け隔てなく優しくて厳しい。だから、彼女の事はとても信頼していたし、信用もできていた。
幾度となく告白を試みたけれど、僕の小さな意気地は対面する事からも逃げる程度のもの。なのに、風の噂で告白されただとか、されるだとか聞くといても立っても居られなくて、その日は何も手につかなかったりする。
「そうだよ、ね。美香は大丈夫なの??」
「ん? 私は大丈夫だよ! 確かに暑いのは苦手だけどねー」
互いに歳をとって、同じ時間を平等に過ごしてきた筈なのに二人の関係にはズレが生じ始めた。
──違うな。自分に自信がないが故に、甘えていたんだ。自分から距離をとって、彼女の出方をうかがって。話をかけられたり、笑顔を向けてくれたりする態度──対応で身勝手な安心を得ていた。
情けなくてくだらなくて哀れで馬鹿だったと今になれば思う。自分からもっと距離を縮めておけば、だなんて。いつもいつも、たらればが頭をよぎって仕方がない。
「あんた、顔に出さなすぎるのよ。無理するんじゃないよ!!」
「分かってるわかってる! それなら、ゆっきーもだよ! どうなのさ、彼氏とは!!」
「なあに? その笑みは! やらしいなぁ!」
「にひひ。教えてよー!」
でも、彼女は僕と異なり皆から好かれ囲まれる存在。いつしか、窺う事すら出来なくなっていた。勝手に想像して、勝手に嫌な結末を考えて一人で悩んで病んで。
けど、偶々話す時があって、声や仕草を見て聞くだけで全てが吹き飛んで。彼女の存在が僕を一喜一憂させる劇薬だった。
「ん~! 正直、最近話せてないんだよねぇ~」
「え!? どうして!?」
「ほら、私って自分で言うのもなんだけど、友達多いいじゃん?」
「うんうん」
「それで、彼氏がなんか距離をとってるというか……」
その日は勇気をだして自分からメッセージを送ってみたり。
「でも、連絡はあるんでしょ?」
「う~ん。ちゃんと、話し合った時とかは彼氏から連絡してくるんだけどね……」
「なんか不満がありそうな顔ですなぁ?」
返事が来るのが待ち遠しくて、変にドキドキもしていた。このメッセージのやり取りが続いたら、遊びに行く話を持ちかけてみよう。
前みたいに二人で遊べたなら、いいな。とか、一人で考えてたりもした。
「なんか、毎日試されてる……みたいな? だから、ちょっと連絡渋ったりしちゃったりするんだよね」
「ああー……なるほど。ゆっきー的に彼氏さんの事は嫌いなの?」
でも、そーゆ日に限って連絡返ってくるのが遅かったりして。勇気を出した自分を責めたりしていた。何度、追いメッセージをしようとしたか。
急にメッセージ送ってごめんね、びっくりしちゃったよね。とか、忙しかったらメッセージの返信いいからね。とか、心配したフリをして、出方を伺おうとか。その度に文字を消して携帯を投げては寝る努力をしてみたりもした。
「嫌いでは……ないかな?」
「今は気持ちがわからない、みたいな?」
独りよがりで、悲劇のヒロインを気取って。結局、自分の事しか考えてなかったんだと、今なら分かるんだ。
彼女は決して暇を持て余した人じゃなかった。部活も家の手伝いも、友達付き合いも。その中で、時間が遅くても時間を作ってくれたりもした。
「そう! そうなんだよね~。彼氏の一途な所は好きなんだけど」
「やっぱり、気持ちを伝え合うのは大事だと思うよ? 勝手な思い込みとか、自分の想定内の想像じゃ本当の意味で理解し合えないとおもうから」
「そうだよね。……うん、そうしてみる」
結局、反省は後出し。その時に考え至らなきゃ駄目なのに、僕がしている事は結局、結果論から導き出された答え。
いくらこんな答えをだした所でもう遅いのに。
「ありがとうね、美香」
「いいのいいの! 人生の先輩なんだから私は!」
「あんたこそ、もう良いんじゃないの?」
もし──もし、願いが叶うのなら。もし、想いが届くのなら。君に最後の言葉を残したい。優しき君へ。愛しき君へ。
「ん? なにが?」
「何がって……今日なんでしょ? 結城くんの命日」
「あーうん。私はいいの! アイツの気持ちを分かっていながら、逃げてたのは私だし。それに──私はまだアイツの事好きだからさ!」
『僕は──』
ここから見守るよ。君が幸せになる事を。
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