廻り道
最終回
廻り道。
土をもがいた。ドンドンと視界が閉じていく。私の手に硬いものがあたる、石だ。拳ぐらいの石だ。石を掴み母の額目掛け思いきっりぶつけた。首を絞める手が緩む、私は母の両目に思いっきり殴りつけた。何度も。両目から血がダラダラと流れるぐらい殴りつけた。
「アアアアアッ!」
母の絶叫が雨と私に染み込んでいく。雨で体がだるい。頭から脳みそが出るまで何度も殴りつけた。私は気絶した。
右耳を切り落とした男が仲間に合図し駆け出してきた。全員で六人。
私は刀を構える。脳髄が働いてくてれない。何も考えられない。今まで私は人を殺していたのかずっと。烏が宙をグルグルと廻ってる。
「妖なんて生き物、存在すると思ってんのかッ!ギャハハハハッ!なんで、雨の日によく現れると思った、雨の日はお前が殺人衝動を抑えられないからだろ!」
母親の顔をした烏が笑いながら飛んでいる。
「影がない生き物なんて存在すると思ってんのかッ!死んだら煙になって消える生き物なんて存在すると思ってんのか」
呼吸が荒くなる。
「お前の脳髄が見せる幻なんだよッ!」
父の顔をした三本足の烏が絶叫する。
私はしゃがみ込んだ。
そうだ、私が殺したんだ。
ここはどこだろう。宵に満たされた暗、逃げるのかッ!また逃げるのかッ!ハハハッ!い荒れた広い門の下に、お前は人殺しなんだよッ!脳髄に何度も木魂する。
刀が斬りかかってくる。耳の男の仲間だ。私は躱しざまに首を斬り落とした。うぅお。切り落としながら私の口から吐瀉物が撒き散らした。口の中に酸っぱい匂いが広がる。後五人
「ハハハハハハハハッ!」
何故か笑いが止まらない。笑いながら吐いていく。畜生。気持ち悪い。気持ちいい。脳髄がこんがらがる。
私は門の所まで駆ける。少しだけ風を感じなくなる。
「クソ!鬼に取り憑かれてるのか!この餓鬼は!」
何で、和尚を殺したんだっけ、刀を躱しながら考える。頭が痛い。頭の内側が痛い。
和尚の顔をした三本足の烏が喋る。
「教えてやろうか……ヒヒヒ……」
嘲笑うように私を覗く和尚が喋る。門の中央、私を拒むように四人が刀を構える。右耳を切断した男は四人の後ろでニヤニヤしている。
「オリャアアアア!」
雄叫びをあげて、突っ込んでくる。刀が上から降りかかってくる。刀を躱そうとする、背中が熱い。他の奴が背中を斬ったんだ。畜生。背中の中を斬った男を切り上げた。男の体に縦線が一直線に走る。
「ウグアッ!」
怯んだ男の顔面目掛け突きを入れた。右目に打ち込みそのまま脳みそを超え頭の後ろに出た。私の顔に血が飛び散る。後四人。
「和尚はお前の秘めた狂気を恐れていた」
和尚の顔をした和尚の声で烏が喋る。私は刀を躱しながら聞く。何かが思い出していく。
「……はぁはぁ……」
呼吸が荒くなる。
「あの日、お前が母を惨殺した死体の隣に寝ていた時から」
記憶が蘇っていく。
あの日。物音がし、目を少しだけ開けた。和尚が寝ている私の布団の横に刀を持ち佇んでいた。月の光に照らされる、妖美に輝く刀。恐怖と悲哀に満ちた、和尚の表情が鮮明に見えた。数珠を持ち、必死で握ってる。
「お前に殺されると思った、和尚は殺される前にお前を殺そうとしたんだよ」
刀が光を帯びながら頭に切り掛かってきた。すぐさま、布団から離れ和尚の方を見た。床に刀が刺さっている。
「結局!人間皆クズなんだ!生きるためだったら何だって出来るんだよ!」
ガチガチと歯を揺らしながら早く追撃をしないと思ったのか急いで刀を引き抜こうとした。しかし、刀が深く刺さって上手く抜けなかった。私は和尚の顔面を殴った。和尚は後ろに転げ落ち、抜けかかった刀を両手で引き抜いた。重い。
私は一生懸命に刀を振り上げで和尚に向かって切り掛かった。血がブシャーと飛び散る。
右手の小指と薬指が飛ぶ。痛みで我に帰った。断面からダラダラと血が流れる。躱しきれない刀が私を切り刻む。血がダラダラと身体中から流れていく
「アアアアッ!信じてたのにッ!和尚!」
半狂乱になっていた。
「なんだ!この餓鬼ッ!」
刀が私を切り刻んでくる。何もか記憶が蘇った。さらに、呼吸が荒くなっていく。
ふと見た。門の通り先の崩れかかった家の所に人影を見た。目が合った。少女がこちらを見ていた。ボロボロな刀を握りしめながら。あの時、助けた少女だ。
刀で応戦する。自分の血か返り血がよくわからないほど血が飛び散り合った。躱しながら斬り合う。感情がグチャグチャになっている。
「どうした。殺しまくれよ」
私の顔をした三本足の烏が喋る。
「何を恐れる。人を殺すのに、何を恐れる」
嘲笑うように笑みを浮かべながら私の顔をした烏が喋る。
「これ以上!殺したら!人間じゃなくなる!妖になる!」
私の叫びに切り掛かってきていた人は皆、驚いた。
「なんだ!脳がイカれたのか!」
誰かがそう叫ぶ。
「ハハハ!」
全員が笑う。烏も混じって笑ってた。
「こいつらも人を殺してんだよ。何も感じず」
刀が降ってくる。
「自分のためにやることを何をそんなに恐れる」
私の耳元で烏が囁く。
「君は自由だ。好きなようにすればいい。私は君の根本意識、君の本音さ」
優しい諭すような声で言ってきた。
「自分がやりたい事をやれ。邪魔する人間がいるなら殺せよ。人間生まれながら妖さ。気にするな。殺したい時に殺すそれが人間じゃないか」
斬りかかってくる刀を躱し、首を切り落とした。ボトっと落ちる。後三人。そのまま横の奴の脳天を貫いた。後二人
「クソ餓鬼ッ!」
四人の最後の一人が突っ込んでくる。グチャ。降りかかってくる刀を私は躱し両手を斬り落とした。
「痛エッ!アアアアアアアアアアー!」
血がダラダラと流れる。怒りに満ちた顔で睨む。首を切り落とした。ボトっという音をしながら落ちた。首からピューピューと首から血が出る。
残るは最後の一人、右耳を切断した男だ。
男は萎びやかに刀を構える。
「ハハハ。こいよ」
私は刀を振る。刃と刃がぶつかり、火花と金属音を散らした。
「あの時みたいにはいかないぞ餓鬼!」
男と私の刀がぶつかり合う。刀が私の顔面に少し当たる。そのまま、男の体に斜めの大きい切り傷を入れた。
お互いの体の至る所からちがダラダラと流れる。手が震える。小指と薬指がなくなった右手は力が入らない。左手でしか握れない。倒れそうだ。
「ふんッ!」
男は刀を突いた。グチャという音がする。握れなくなった右腕を貫いた。右腕から血がダラダラと流れる。私は男の腹部を突き刺した。貫いた刀を急いで引き抜いた。
「アアアッ!」
男は悶絶した。すぐに引き抜き、右足を斬った。このまま切断しようと思ったが、すぐさま刀が私の方に向かってくる。
「あの時みたいにはいかないといったろう!ハハハ!」
ビュウッ。私の右耳が熱い。切断された。
「アッ!」
目の前に不敵に笑う男。私は右耳を急いで塞ぐ。
「どうだッ!ノミカスッ!」
男は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。体から血がダラダラと流れるを痛みをモロともしない笑み。
「ギュは!ぎゃはハハハ!」
血を口から吐きながら笑う。
「ハハハハハハッ!」
私も笑い返す。
もう全部、どうでも良い。自分の快楽だけ生きるこそ人間だ。
同時に刀が光る。
ギュチャ。顔面に突いていくる刀を躱そうとするが私の右頬の皮をぶち抜いた。歯が少し剥き出しなる。そのまま、刀が突っ切ったのを横目に左手の逆手で刀を持ち、刹那。
左足の膝から下を切断した。男の切断した左足がギュチャと音をして地面に跪いた。
「死ねるかよッ!」
男は右足を全力で蹴り上げ最後の突きを向かわせてきた。
グチャ。私の右目を突いた。脳みそまでは届かず、ギリギリで止まった。男はそのまま腹から倒れた。
「ははハハハははっははははっハッハハッは!」
男は体を門の上の方に向け、狂ったように笑う男。男はもう動くことが出来なくなっていた。
「右耳と右目をやってやたんだ!餓鬼の!ハはハハっはハ!」
私は門の外へ歩く。石階段を降りていく。何か心地がいい、体がボロボロ、血がダラダラと流れているが気持ちがよく、私は門の外へ歩いてく。右目はもう見えないがそれでも気持ちいい。
雨が降るなか、春の日差しを浴びるような気持ちになっている。
生きていれば出会える思想。自分以外はどうでもいい、邪魔する奴は殺す、この思想はいつか何処かで手に入る。私は妖じゃない。私は人間だ。廻り道をしまくり、三本足の烏が道を教えてくれた。私の気持ちは人生で一番良い。初めて生きていることへの快楽を感じる。
少女が門の前で雨に打たれながら待っていた。ボロボロの刀を握りしめながら。
「……は、話していて……あ、あいつらがあなたを見つけたって……あ、あなたに伝えないと思って……」
しどろもどろになりながら少女が話す。俯きながら泣きそうな表情をしていた。
私は三本しかない右手で少女を撫でた。私はボロボロの刀を右手の人差し指で差し、そして、瀕死の譫言をブツブツと喋り続ける左足と右耳を切り落ちた男の方を次に差した。
「……え?」
私はそれ以上、何も言わず歩みを続けた。雨が心地よい。風が心地よい。
少女は譫言を続ける、男の方に歩み始めた。石階段を登り、門の下で倒れる男の腹部に立った。ボロボロの刀が光る。
三本足の烏はもう見えない。血がダラダラと流れる。死ぬのかな。それでも私は歩き続ける。
私の行方は、誰を知らない。
読んでくださり、有難うございます。




