溺愛の日々
「あなたには罰を与えます」
わたしは、本棚ある分厚い本を投げつけた。
それは見事にメイドの頭部に命中していた。
「ぎゃっ!?」
メイドは包丁を手放し、転倒していた。このままでは直ぐに起き上がるので、わたしは次々に本を投げて攻撃を加えた。どうせ読めないし、わたしにはこんな方法でしか本を扱えない。雑に扱ったことは、あとでアインに謝ろう。
それよりも、メイドは……気絶した。
しばらくするとアインが何事かと駆けつけてきた。
「こ、これはいったい」
「アイン、彼女が包丁をもって襲ってきました」
「なんだって……。やっぱり、このメイドが」
「その通りです。彼女は危険ですよ」
「しかし、なぜ」
「理由は簡単です。アイン、あなたを愛していたようですよ」
「……僕を」
信じられないと、アインはただただ驚いていた。でも、それが真実だった。メイドは、密かにアインを思っていた。その思いが募り、エドゥアルトくんとわたしの排除という思考に至ったのだ。
愚かとしかいいようがない。
「どうします?」
「もちろん、このメイドは解雇する。それと騎士団へ引き渡すよ」
「そうして下さい」
「このことは父にも知らせねば」
「では、わたしが代わりに」
この場をアインに任せ、わたしは侯爵の元へ向かった。
その後、メイドの解雇と騎士団への引き渡しが決定。彼女は連れていかれた。わたしは、またも侯爵から感謝されて認められた。
「ミレヴァさん、君は素晴らしい女性だ。ぜひ、アインと結婚して欲しい」
「そんな、わたしはエドゥアルトくんの為にと」
「我が息子の為に……こんなに嬉しいことはない! よし、ミレヴァさん……いや、ミレヴァ! 君を家族同然に迎え入れよう!」
侯爵から気に入られた。
以降、わたしはアインとの距離も一気に縮まった。
毎日、お互いを意識するようになり、気づけば溺愛されるようになっていた。なんて、幸せ。ずっとこんな生活が続けばいい。
以上、短編版です。
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