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The Radio Talks Something To Die  作者: 大海原敏彦
3/3

The Case of Tomoyasu Nishida and Ryoko Kobayakawa

西田智康、32歳と小早川涼子、26歳は結婚式の準備に忙殺されている。


式場をどこにしようか。招待客には誰を呼ぼうか。仲人を誰に頼もうか。引き出物は何にしようか。そもそも式をいつ挙げようか。考え出したらきりがない。


式場選びに行く途中、車中で二人は強い地震の揺れにみまわれた。路肩に車を止めて智康はラジオのスイッチを入れた。


「ジジジ ジジジ 13時30分頃、関東・甲信・東海において非常に大規模な地震が発生しました。震源地は伊豆半島沖7.6km、震源の深さは20km、マグニチュードは12.7、関東・甲信で最大震度9強、東海で最大震度8強、津波の危険があります。津波の危険があります。予想される津波の高さはおよそ30m、関東、東海の沿岸部にお住まいの方は出来るだけ高い所に至急避難してください。繰り返しお伝えします。13時30分頃、関東・甲信・東海において・・・・・」


「やべえぞ、これ」


「富山でもこれだけ揺れたんだから」


ラジオが同じことを何回も繰り返している。


「津波の危険があります。津波の危険があります。予想される津波の高さはおよそ30m」


そしてだんだん繋がりにくくなってきた。


「ジジジ ザーザー ジジジ ザーザー 津波の ザーザー 至急避難し ジジジ ザーザー」


やがて、全く音声が聞こえなくなった。


「ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー」


智康がスイッチを消そうとしたその時、何かの音?もしくは声?が聞こえてきた。


「キャアアアアア。ギャアアアアアア。タスケテ。タスケテ。ウワアアアアアア。チクショウ、チクショウ、オレハシヌノカ チクショウ。ダイスケー、ダイスケー、ダイスケハドコダ。ギャアアアアアア。ハアハアハアハア。ウワアアアアア」


絶叫、悲鳴、怒号、阿鼻叫喚。


今まさに死にゆく人々の最後の断末魔。

それがラジオを通して聞こえてくる。

智康と涼子はしばらく聞き入っていたが、耐えられなくなってスイッチを切った。


涼子は嗚咽している。

智康がボソリと言った。

「当面、結婚式なんてあげられそうにないな」


その後、何年もの間、全国民が喪に服すこととなった。




The End


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