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The Radio Talks Something To Die  作者: 大海原敏彦
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The Murder Case of Reico Sawaguchi

沢口玲子は28歳で大手総合商社に勤めるOLだ。

グループチーフを任されている。

英語とスペイン語が出来る沢口は、主に南米の農作物の輸入と国内の取引先店舗への販売を取り扱っている。

今はコロンビア産のマンゴーの輸入と出荷に大わらわである。

マンゴーは糖度が15度以上、つまり完熟でないと輸入できない。

南米の多くの農家は糖度が低くても出荷する傾向があり、その意識の違いをすり合わせるのに沢口は苦労していた。

今日もサンプルのマンゴーが送られてきたが、糖度の点で問題があり、再度、交渉する必要があった。

マンゴーの輸入に関しては現地農家との交渉に既に3年を費やしている。

沢口はイライラしていた。

頭がカッと熱くなり、仕事が手につかなくなる。

そんな時はスマフォのラジオアプリを起動する。

音楽垂れ流しのコンテンツを選択する。

陽気なレゲエソングが流れる。


沢口はデスクに座り、両手の人差し指でこめかみを抑えながら、音楽に耳を傾ける。

両目を閉じ、他のことは何も考えないように音楽に集中する。


しかし、チーフマネージャーに呼ばれ、はっとしてアプリを閉じると席を立った。

コロンビアのマンゴーの輸入が遅々として進まない件だろう。

コンビニへの出荷予定日が来月に迫っている。


その夜、沢口は遅くまで残業していた。

オフィスには沢口独りしかいない。

改訂プランを明日までに作成するようにチーフマネージャーに指示されたのだ。


いきづまった。

これ以上の改訂プランが思いつかないが、それでは不十分だとわかっている。

時計は夜1時を回ろうとしている。


気分転換にラジオアプリを起動する。

たまには違うコンテンツをと、いろいろ探してみる。

パーソナリティがリスナーからの投稿メールを朗読している。

テーマは真夏の夜の怪談話らしい。


「ええ、豊島区の本条ピスタチオさん」

「今、オフィスで独り、残業しています。ふっと背後に気配を感じ、振り返るとそこには、ずぶ濡れの女が立っていました。本条さん。女が私の首に手をかけました。体が凍りついたように固くなって、私は身動きひとつできません。少しずつ女の手の圧力が増していきます。ああ、絞め殺される。絞め殺される。絞め殺されるううううう」


沢口は今の自分の状況と似ているので、まずいと思い、他の音楽コンテンツに移動しようとした。


その時。


沢口は背後に嫌な気配を感じた。

濡れた冷たい手が沢口の首にかかった。

首をすくめたが、恐怖のために振り返ることが出来なかった。

甲高い女の声がした。


「さ わ ぐ ち れ い こ」


スマフォのラジオアプリから声がする。


「れ い こ し し し し し ぬ し ぬ し ぬ し ぬ し ね し ね し ね し ね」


沢口は慌ててアプリを閉じた。


それでもその声は聞こえてきた。


「し ね し ね し ね し ね さ わ ぐ ち れ い こ し ね し ね し ね し ね し し し し し」



翌朝、非常階段の踊り場に転落した沢口玲子の遺体が発見された。首には人の手形が痣になって残っていた。


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