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The Radio Talks Something To Die  作者: 大海原敏彦
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The Murder Case of Taizo Onishi

大西泰三、17歳はラジオのヘビーリスナーだ。

今日も学校から帰ると、ラジオをつける。

FM局を聞くことがほとんどだ。

自室でラジオを聞きながら勉強をする。

母の大西美和子と夕食を食べるときも、ラジオはつけっぱなしだ。

ラジオは泰三にとって娯楽であると同時に貴重な情報源である。

最新のトレンドやニュースなど、全ての情報をラジオから得ている。

テレビは見ない。

勉強の妨げになるからだ。

スマフォも持っていない。

母子家庭では、高校生にスマフォを持つことは許されない。

大学に進学する泰三にとって、勉強する時間は1分でもおろそかにできない。

何としても地元の国立大学に進学しなければならない。

私立大学に行くことは金銭的に不可能だ。

ラジオを聞きながら勉強すると、程よく脳が活性化されて、効率が上がる。

寝る時もラジオを聴きながら眠る。

ラジオを聴きながら目を閉じていると自然と眠気がやって来て寝落ちする。

 

今日も泰三はラジオを聴きながら就寝しようとしていた。

8月の夏真っ盛り、熱帯夜。寝苦しくなかなか寝付けずにいた。

3曲目の音楽が終わる頃、ようやくうとうとし始めた。

「さて、真夏の深夜のミュージックライフ。次のナンバーは”Star Surprises”の “Summer Drift”」軽快なロックミュージックが流れてくる。

泰三はもうほとんど寝落ちしようとしていて、頭の片隅で音楽が流れているが、意識が遠のいていく。

その時だ。音楽に被るように男の声がした。


「た い ぞ う」「お お に し た い ぞ う」


泰三はかすかに「うん?」と思ったが、まだ眠りのはざまを漂っている。


「た い ぞ う お ま え は し し し し ぬ し ぬ し ぬ し ね し ね し ね」


野太い、地鳴りのような男の声だった。

「ううううう」泰三はうなり声をあげたが、そのまま眠ってしまった。

夜中に目が覚めた。

ラジオがガーガー、ザーザー言っている。

また声がした。


「お お に し た い ぞ う し ね し ね し ね し ね」


泰三はぞっとした。

慌ててラジオの電源を切った。


ガーガー、ザーザー 

「た い ぞ う し ね し ね し ね し ね」


ラジオの電池を外した。


「し ね し ね し ね し ね た い ぞ う お ま え は し ぬ ん だ」


ラジオを机に叩き付けて壊した。

それは真っ二つに折れて、無残に配線を飛びださせ、部品が散乱した。


「し し し し し ぬ し ぬ し ね し ね し ね」


泰三は両手で耳をふさいだ。


「お お に し た い ぞ う お ま え は き よ う し ぬ し ぬ し ぬ し ぬ し ぬ し ぬ し ぬ」

 


朝、登校途中、交差点で大西泰三は信号待ちをしていた。

突然、予想もしない方向からトラックが突っ込んできた。

泰三はトラックとガードレールに挟まれ、内臓が破裂した。

薄れていく意識の中で思った。


「ラジオなんて大嫌いだ」







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