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異世界に来たら余命わずかな彼に看取ってほしいと言われました  作者: 壱真みやび
召喚された少女と、優しい彼が死ぬ理由
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庭での出来事

エマ視点です。

ジーク様と一緒に住むようになってしばらく。

異世界生活にもだいぶ慣れてきた。


学校も部活も塾もないこの世界で、私はちょっと暇を持て余していた。

だから、せっかくなので庭を綺麗にしようと思いついた。

庭付き一軒家だというのに花の一つもないなんて少し寂しいと思っていたのだ。

日本で学生だった私には趣味はガーデニング!なんて余裕はなかった。

住んでいたのはマンションだったし、庭で土いじりなんて経験することはこれからもないだろうと思っていた。

だから学校の農園やら花壇に用意された種や苗をちょっと植えたぐらいの経験しかない。



それでも…日本で見るような植物はこの世界では見たことがないけれど。

ジーク様が昼も夜も、ゆったりと外を眺めていることを知っているから。

その目に映る景色を、もっともっと綺麗なものにしたいと思ったのだ。



ジーク様は好きにしていいと、やっぱりあっさりと許可をくれた。

イルヴァンの屋敷の綺麗な庭を思い出して、庭師のおじさんを捕まえていろいろと教えてもらった。

不慣れで不器用ながらも少しずつ庭には花が増えていった。


「すごいね、窓から見える景色が綺麗だよ、エマ」


そう言って笑うジーク様を見て、がんばってよかったと胸が温かくなった。




しばらくすると、見たこともない鳥が頻繁に来ていることに気が付いた。

不思議な色合いの鳥だ。

ぱっとみると桃色のようだが、角度によってはキラキラと金色にも見える。

そこまで大きくもなく、肩に乗りそうなサイズ。飾り尾がすごく長いのが特徴だ。

来ている鳥が毎回同じなのか、種類が同じだけで違う鳥なのかはわからないが、この鳥の特徴だけは他の鳥とは違っていたので覚えてしまった。

猛禽類のような顔つきだったら警戒したかもしれないが、綺麗だなぐらいにしか思わなかったのでジーク様に見せたいと声を掛けた。


「ジーク様!見てください、最近この子よく来るんですよ~綺麗ですね!」


一瞬、ジーク様が険しい顔をしたような気がした。でもそれもほんの一瞬のことで、すぐにいつもの穏やかな表情になった。


「最近?よく来るの?」

「はい!毎日じゃないですけど、この頃よく見ますよ!」


そこで思い至る。ここは異世界だった。


「…もしかして、怖い鳥ですか?」


ジーク様がじっと私を見る。


「エマは、あの鳥を怖いと思う?」

「綺麗だな、と思います。見た目は怖くないです」


心配になってきた。追い払うべきだったのだろうか。

もしかしたら一瞬の険しい表情は、この鳥が危ない野鳥だからだろうか。

病気とか、作物を荒らされる…とか。


「そう。それなら大丈夫かな」


そんな不安がグルグルと頭の中を駆け巡っていたが、ジーク様は大丈夫と微笑んだ後、鳥に向かって話しかけるように言葉をかけた。


「何か悪いことをするようなら……駆除するからね」


異世界は鳥とも言葉が通じるのだろうか。

鳥のほうも一瞬動きを止め、何事もなかったかのように飛び去って行った。

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