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空を飛ぶ、自分と、もう一人
衝撃音とともに、俺は空を飛んでいた。
いや、何か・・・何かが違う。
雲ひとつない青空は、俺の足の先にあった。
これは落下だ。落ちている。
そう理解したとき、すべてがスローに見えた。
視線をめぐらすと、自分はたくさんの金属の破片と一緒に落下していた。
頭上には緑。
たくさんの木…森? あれは川だろうか。谷だ。そうだ、俺たちは橋を渡ってた。
これは――ダメかもしれない。
隣には…さっきまで一緒に話して、一緒に歩いていた…大事な…。
今は人形のように手足は投げ出され、動く様子はない。
綺麗にまとめていた長い髪は今は乱れ、そのせいで顔が見えない。
「えま……っ」
俺たちはいつも一緒だった。だからこの後生きていても、死んでいても…二人一緒だ。
届かない…届かない、届かない。
このまま千切れてもかまわない。
ふんばりなんてきかないけれど、それでも限界まで腕を伸ばす。
恵麻の周りがキラキラしている。
鉄屑と一緒に硝子の破片も降ってきているのかもしれない。
どうか、どうか傷付かないでくれ。
せめてまっさらな、綺麗な状態で――。
そう願ったとき、わずかに指先が届いた…気がした。