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その7

 アレクサンドラお嬢様のお召し物を変えなくては。

「あっ、只今ご用意致します」

 もうお着替えをしなくては間に合わない。

 ふわふわドレスは大変お名残り惜しいのでありますが、礼装はお着替えにとても時間がかかるので、すぐに取り掛からねばならない。

 なにせ、下着の段階から礼装専用のものを着なければならない。

 その生地にはすべて、ランドレード伯爵家が受け継いでいる文様が透かし編みされている。

 貴族の家には、代々伝わる独自の文様があって、王宮に参上する際の旗や、馬車の彫刻などにも使われている。

 だから勿論、礼装にもふんだんにあしらわれているわけだ。

 貴族って、あらためてすごい。

 平民はどんなにお金持ちでも、文様を持つことはできない。持っていることが地位の証だから。

 さ。続けましょう。

 手早くしないとお嬢様が飽きてしまわれる…

 肌着、コルセット、パニエと進みましたら、やっとドレスの出番。

 生成り色の厚手の地に、赤、緑、黒の刺繍が施されたドレス。腰に細いベルトがある以外は、至って飾り気がない。

 ただ生地はとても上質で、柄は当然のようにランドレード家の文様。

 花と果実、それと槍を交ぜて出来た、伝統の文様。

 襟から腰、袖にかけては体にぴったりと沿っていて、ベルトから下は踵まである筒型のスカートになっている。

 どんなものでもお似合いになってしまうアレクサンドラお嬢様。

 ではあるが、さすがに、こういうお召し物では、お歳の若さが浮いてしまう。

  他の貴族の礼服を何度か見たことがあるけれど、お子様のものは、スカートがもっと膨らんでいたり、ゆとりのあるシルエットだったり…もう少し着やすそうなものしか見たことがなかった。お嬢様のものは、大人の…それも結構昔ながらの…デザインを、小さくしただけである。

 刺繍も遠慮なく、かなり重厚に縫い込まれているし、本格的といえばじつに本格的で、これほど伝統に忠実な子供服は他にないのではと思う。実はお運びする時、私の両腕にかなりしっかりと重みが感じられた。8歳の子に着せていいんだろうか…と思う。

 お嬢様がもう少し成長なされば…

 今でもお美しいお嬢様のことだ、気品と威厳を身につけられた未来のお嬢様ならば、とても馴染むに違いない。



つづく

伝統の。

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