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チャザワドオリ

作者: 黒川瑞希

気怠さも心地よい土曜の午後、

どこかで遅めのランチにしようと

私たちは当然のように手を繋ぎ下北沢を歩いている。


ランチと呼ばれた朝食を待ちわびて

胃はきゅうきゅうと寂しそうな音を立てているけれど

それよりもとてつもない幸福感で身体は充ちていた。


私たちはまるでピカピカのランドセルを背負った6歳児のような

ぎこちなくも眩しい金色のオーラを纏っているはずだ。

たった20時間前に出逢ったばかりにはとても見えないだろう。


この街はそこかしこでエスニックな香りが漂う。

カレーを食べることは早々に決定しているのだが

この半端で幸せな時間の惜しい私たちは

次の店へ、いや、この先の店にしようと延ばし延ばし歩いているうちに

随分と駅から遠いところまで来ていた。


私は2種類の、彼は3種類カレーを選べるSETを頼む。

そういえばまだ彼の名前を知らない。

食事が運ばれてくるまでの間、改めてお互いに自己紹介をする。


昨日は駅からほど近い地下のライブハウスで出逢い、

直感的に、衝動的に惹かれ 濃密な一晩を過ごしたのだ。

まるで何年も連れ添った親しい友のようであり、

もう離れる事など考えられない程の愛しさすら感じる。

浴びるようにアルコールを片端から飲み、踊り、跳ね、浸り、

感じ、囁き、全身の感覚が解放された様な夜だった。


さて、一体全体これからどうしようか。

朝方彼を泊めたチャザワドオリ沿いのワンルームは、

帰るまでキミの好きに使って良いと言われた、カレの家なのだ。

当人はブルガリアに長期出張中であり、そのあいだの鍵を任されている。

目の前の円らな瞳をしたかわいい彼に見つめられていることに気がつき、

思い出してしまった現実はナンと一緒に飲み込んだ。


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