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第5話 再開

放課後。俺は自分の体を検査してもらう為に近くの病院に来ていた。


しかし、結果は「正常」と判断された。


ただ、どうやら体の中に自分のとはまた別に、違う種類の魔力が流れていると、医者に診断された。


魔力とは体に流れる生命エネルギーのこと。

魔力の量は生まれ持った時にある程度備わっており、修練や健康的な生活によって、その溜め込んでおける最大量は増やすことが出来る。


要は健康な人ほど多く持つことが出来るのである。


「まったく、俺の体はどうなっちまったんだ……?」


考えてもこの問題は埒が開かないので俺はそのまま自宅に戻ることにした。


「おかえりなさい」

「ただいま」

「お風呂出来上がってるわよ」

「ありがとう。先に風呂に入るわ」


自宅で母に出迎えられ、俺はそのまますぐに風呂に入る。


「はぁー、落ち着く」


風呂に入っている時が俺にとっては一番落ち着く。


「せっかくだし、試してみるか」


リラックスして意識を集中させ、俺は体に流れる魔力を丁寧に感じ取っていく。

少しづつ、正確に。魔力は体全体を流れる川のようなものだ。普段、俺は魔法が使えないから意識したことは一度も無いが、やり方は学校で習った為に知っている。


……確かに何か違う、別の魔力と言うか、冷たささえ覚える魔力が、俺のとは別に身体の中を流れているのがすぐに解った。


―――これはいったいなんなのだろうか?


疑問に思った俺はそのまま更に意識を集中させて、そのよく分からない魔力を体外に追い出すイメージをする。


パシッ!っと何か体の中で音がするのが聞こえた。


―――そして同時に自分の体の上に跨る別の感触も。


今の裸の自分の上に跨っている感触は明らかに女性の体の柔らかい感触で。

その女性は昨日、公園で俺と話しをして、男達に追いかけられていた女性だった。


「え?何でここに、この人が?」


そう思ったのも束の間。風呂場であっても分かる重篤な高熱を女性は帯びていた。


すぐさま俺は母さんを呼び出す。


「母さん!大変だ!」


「どうしたの、みちる?そんな大慌てで」


母さんは穏やかではあるが明らかに困惑していた。

しかし、俺はそれ以上に困惑していた。


「とにかく、手伝ってくれ!」


母さんは取り敢えず落ち着けと言った様子で、俺にとっては致命的な一言を放つ。


「とりあえず、まずはパンツを履きなさい。………本当に、大きくなったわねぇ…」


※ ※ ※


「なるほどね、状況は良くわかったわ。理解もした。けれど納得出来るかどうかはまた別の問題ね」


俺と母はその後、女性を寝室に運んで母が自分の服を着せて看病していた。


「どんな病気か解る?」


母は頷き、そのまま見たままを端的に伝える。


「この女性の症状はみちるを除いて、誰もが一度は起こす病気。『突発性とっぱつせい魔力放まりょくほう出病しゅつびょう』よ」


「突発性魔力放出病?何それ?」


俺は聞きなれない病名に母に聞きなおす。


「突発性魔力放出病というのはね。簡単に言うと、初めて魔法を使った子供が自分の魔法を使った時の魔力消費に耐えきれず一時的に、高熱を引き起こし、最悪死にはしないけれど昏倒するレベルの病気よ。但し、一度発症してしまえば、その後は体が魔力のリミッターを作り上げて、絶対に発症しなくなる病気でもある」


「治す方法は?」


「彼女の手を握って彼女と貴方の魔力を循環させるのよ。繋いでるだけでいいわ。後は単純に高熱だから体の熱を取り除きさせすれば、自然に治るわね」


一部の隙も無く、治し方まで教えてくれた母の助言通り、俺はそのまま女性の手を取り、風呂場でしたように意識を集中させて魔力を循環させる。


「幸い、私の専門分野だったから良かったわ。軍医での経験が活かされてよかった。その子のことお願いね、みちる。私は熱を冷ます方の準備をするわ」


ひとまずほっと胸を降ろし、準備に取り掛かるために部屋を後にする母。


そして、慣れない作業に疲れきった俺はそのまま学校での疲れも相まって、寝込んでいる女性の手を握ったまま、深い眠りの中に落ちていくのだった。

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