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第23話 追想と約束

新キャラ(神様)が出てきます!!

「な、え……?」


目の前に突如として広がった光景に俺は目を疑った。いや、正確には固まった。


「こいつぅ〜ふわぁ〜今日ももふもふだぁ〜〜♪」


そこに映し出されていたのは、あどけない笑顔で一匹の小狐と戯れる幼き日の俺自身がいたからだった。


「どうして、琥珀の世界で過去の俺が……?」


そう言って困惑する俺は、幼い頃の俺に触ろうとする。


「え……?」


しかしその手はすり抜けて、幼い頃の俺を通り過ぎて行く。


すると、いつの間にか明美と堅土が隣に立っていた。


「ここは精神世界だからね。あれは記憶でしか無いのよ。それにしても、昔のみちる……可愛いわね」


「随分懐かしいな…これは、十年くらい前か?」


顔を赤くして魅入っている明美と、冷静にどれ位の時期だったのかを確認する堅土。


いや、二人とも?そんなまじまじと見ないでくれるか?過去のアルバムを見られているようで恥ずかしいんだが。


「……ここは正確には明美と離れた後の十年前だな。明美には確か昨日、帰りに話したよな」


そう言った後、俺は狐と戯れる自身をみる。


「おいっ、こらっ、やめろって。くすぐったいってば」


小狐を抱えてはほっぺを舐められて、くすぐったいたそうに戯れている。


「眩しい!そして、子供のみちるの笑顔がとても可愛い!まともにこの光景を直視出来ないんだけど!」


「言わないでくれ!俺は、昔の秘密を見られたみたいで恥ずかしいんだから!」


そんな思い出を立体的に追想させられる俺とは真逆に、テンションが振り切っている明美は、ただただ昔の俺を見て興奮していた。


「この頃の俺は、かなりの寂しがり屋だったんだよな。いつも独りで寂しさを紛らわすように、保護した小狐と遊んでたんだ」


不意に俺の口から漏れた言葉は、当時を思い出したが故の、寂しさを紛らわす為の言葉だったのかもしれない。


「父さんも母さんも仕事で家にはいなくて、学校にもにも友達らしい友達がいなくて、『魔法が使えない』ってだけで馬鹿にされて、堅土以外友達がいなかったけど、その堅土も出席が少なかったから、不登校気味だったんだよな」


当時の俺は、六歳ながら既に寂しさと孤独と、魔法が使えない異端と言う、どうしようもない状況に喘いでいた。


「そうだな…。俺もこの頃から既に組織に身を投じていたからな。学校どころじゃ無かったし、出席日数とテストの点数だけ稼いで、それ以外の日は全然学校に来なかったんだよなぁ」


故に保護した、たった一匹の子狐が俺の唯一の理解者であり、友人だった。


「――――ねぇ、僕ね友達が欲しいよ。一人でも良いから僕のことを見てくれる、ずっと一緒にいてくれる人が欲しい。魔法が使えないからって差別しない、そんな人が欲しい」


過去の俺が呟いた、悲痛な心の叫び。


願ったのはただ一つ。理解してくれる友人が欲しい。幼い自分が望んだのはただそれだけ。


「……どうして僕だけ、魔法が使えないだろうね……って狐の君に言っても何か解るわけでも、状況が変わるわけは無いんだけどね……」


言いたいことを、溜め込んでいたものを吐き出した後はすっきりしと、晴れ晴れとした表情でまた小狐を抱き抱え、また遊ぶ。


それは、折れそうな心を保つ為の、幼いながらに身につけた一種の心の防衛術だった。


「ふふ、ありがとう。すっきりしたよ。お前だけはきっと僕といつまでも一緒にいてくれると、信じてるよ」


そう言って、過去の俺は今の俺に確かに向かい合って。


「いつかきっと、僕にも愛し愛される、そんな人が現れると良いな――――」


そう言って過去の俺は、風景の中へと溶けていった。


「まさか、これが約束?」

「――――――そうだよ、みちる」


声が聞こえて、瞬きすると、目の前に現れたのは。


「こ、はく……なのか?」


綺麗な黒色の瞳をした、琥珀の姿だった。


※ ※ ※


「いや、違うな。お前は琥珀じゃない。いったい……誰だ?」


俺は目の前に現れた琥珀を見て、すぐに自分の言った言葉を否定する。


「え?琥珀でしょ?みちるは何言ってるの?」

「そうだぞみちる。どこからどう見ても琥珀そのものじゃないか」


俺の言葉に明美と堅土はそれぞれ反論する。


しかし、俺にはちゃんとわかる。目の前にいるのは偽物なのだと。


「いいや、違う。瞳の色が違う。琥珀の瞳の色は透き通るような琥珀色だ」


すると、目の前にいた琥珀の偽物は『くっくっく…』と笑った後、俺に賞賛の言葉を返してきた。


「流石だな。その観察眼がどうして、他人の感情に対して発揮されんのか、妾にはまるで理解出来んな」


皮肉を言われるが、俺は意に返さず偽物に詰め寄る。


「で?お前は一体、誰なんだ?」


すると、琥珀の姿は次第にぼやけていき、徐々に騙していたその本人の正体が現れる。


「あんたが……琥珀に封印されている神様か……?」

「ああ。妾も昔は確かに神様と呼ばれていたな。と言っても、四百年も昔の話だが」


俺はその姿を見た瞬間に素直に驚嘆、あるいはあまりの神々しさと美しさに見惚れてしまっていた。


琥珀と同じ腰までかかった金色の髪に、美しい透き通った空を連想させる水色の瞳と、琥珀と同じ狐耳に、琥珀よりも大きな狐の尻尾。


そして整った小悪魔のような幼い顔立ちには不釣り合いの、肩からはだけた紺色の和服の上からでもわかる程巨大な二つの胸。


和服の帯の腰辺りからはみ出ている大胆な健康的な太股は、スリットされた和服お陰で、ぎりぎりのラインで大事なものを隠している。


それが逆に、見るもの全てを誘惑しその全ての視線をその一部分へと釘づけにするほどに魅惑的だった。


なかなか男としては目のやり場に困るが、今はそんなことを言っている場合ではない。


金色の髪の狐神は俺に向かって、腕を腰に当てながら、嗜虐的な笑みを浮かべ話しかける。


「さて、みちるが約束を思い出した所で、次は妾の肉体の主人である琥珀の過去を見てもらおうかの。こちらだけ、お前の過去を知っているというのも、お前からすれば不公平だろうからな」


そして、世界は変わっていく。琥珀の記憶へと。


「――――さぁ、地獄をみるがいい」


ただひたすらに不穏な言葉だけを残して。

タイトル変更致しました!


活動報告にもありますが、処女作の方が今回200話目を超えました!!


これからも応援をお願い致します!!

感想もレビューも好きな時で良いですよ!!レビューに関しては処女作もそうですが、多少のネタバレを含んでも構いません!!お願い致します!!

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