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第18話 姉妹と恋人。そして家族

いつぶりの更新でしょうか。皆様、覚えていらっしゃいますでしょうか。椎名 花恋です。

もう一つの作品の方はほぼ毎日更新しておりますが、こちらはかなりの不定期となっております。

投稿すれば必ずTwitterにて更新宣言を致します。

これからもどうかよろしくお願い致します。

そして時は進み、みちる達の放課後。


「そう言えば琥珀の家って今まで行ったこと無かったな。どんな家なんだろ?」

「さぁ?俺も行ったことないから知らないけど、見てみれば分かるだろ」

「……ごくごく普通の一軒家だと思うけどね」

「アパートって言う可能性も否定出来ない」


琥珀とは高校に上がってからの付き合いの為、実は未だに琥珀の家には上がったことは今のところ無かったりする。

とはいえ今は夏。かれこれ約三ヶ月程友達として一緒にいたので堅土ほどでは無いにしろ、気の合う仲だったりする、俺にとってはかけがえのない女の子なのだ。


「あ、先生から貰った地図だと、ここを更に真っ直ぐか」


そう言って曲がり角を曲がった先に俺達の目に飛び込んで来たものは。


「えっ…………?」

「でかっ……!」


広大で巨大な木で出来た和を基調とした豪邸だった。


「流石にこれは予想してなかった」

「何よこの和風庭園の家は…?琥珀って、地主か何かの娘だったの…?」


隣りで明美もあまりの家の広大さに戦慄している。かく言う俺と堅土も空いた口が塞がらない程である。


「い、行くぞ二人共」

「お、おう……」

「う、うん……」


俺は二人を先導しつつ、恐る恐るその物々しく感じる豪邸のインターホンを鳴らすのだった。


※ ※ ※


「すいませーん。天風 琥珀さんはいらっしゃいますかー?」


しかし、声は空に響くばかりで、なかからは何一つ返事がしない。


「あれ?おかしいな出てこない……?すいませーん」

「はーい、聞こえてますよー。ってあれ?珍しい、みちるだ。どうしたの?」

「どうしたも何も、琥珀が体調悪くしてるって言うから見舞いに来たんだよ。もう起き上がっても平気なのか?」


再度声をかけると、今度は中からしっかりと琥珀が現れて、和服に身を包み出迎えてくれた。

俺は琥珀の容態を心配する。まさか病人が出迎えてくるとは思わなかったからだ。


「ああ、うん。立ち上がるくらいなら大丈夫。……ありがとね。みちる」


優しく笑いながら、お礼を言う琥珀。


「俺だけじゃ無いぞ」


だが琥珀を心配して、ここに来たのは俺だけではない。


「お、おう久しぶりだな……琥珀」

「三日ぶりね。久しぶり」


そう言って奥から堅土と明美が現れる。

少しばかり堅土は引け目に、逆に明美は強気と言った態度で。


「ささ、立ち話もなんだから入って入って」

「「「お、お邪魔しまーす」」」


琥珀に促されるままに俺達三人は琥珀の家の敷地内に入っていく。


「ふふっ、誰かを家に招いたの何て初めてだよっ♪」


琥珀は素晴らしく上機嫌に歩きながら家の中に入っていくが。一方の俺達はと言うと。


「門の前にたったときもそうだったけど……中に入ると改めて……」

「ああ、凄く広いな」

「これが和式のお家……!」


三者三様。あまりの和風庭園の大きさに、それぞれ戦慄していた。外で見るのと中で見るのとでは天と地程の差がある。さながらここは別世界のようだった。


「そういや琥珀。ご両親は?やっぱり仕事か?」


ふと疑問に思った俺は琥珀に質問した。

しかしその質問に対して琥珀は悲しげに顔を伏せたあと、日が沈みつつある黒と茜色に彩られた空を見上げて指を指し。


「ん……両親は二人共もういないよ。空の上」


ただ、無感情にそう言い切った。


「……なんかすまん。」

「気にしなくて良いよ。もう随分前の事だし、気持ちの整理もとっくについてるよ」

「そ、そうか…」


そう言うが、空を指した手とは反対の手が握り拳を作りながら、震えていた。


「それよりも、みんなに知らせたいことがあるんだ」


琥珀俺達の方に視線を合わせて向き合い話題を無理やり反らした。


「知らせたいこと?」


あからさま過ぎる程の誘導だったが、俺はそれに乗っかってさっきの話から目を背けるように話題を変えた。


「うん。こっちこっち。……驚かないでね三人とも」


そう言って上機嫌に俺たちを家の中に誘導したあと、居間の引き戸の前に立ち、扉に手をかける。


「どうぞ〜御開帳〜♪」


俺たち三人は愕然とした。


視線の先。そこにはフリフリのエプロン姿に身を包んだオーディンと呼ばれた少女が立っていた。


※ ※ ※


「どうしてここにオーディンがいる……!?」


意外な人物を目の当たりにして驚愕と同時に、いつもの穏やかな雰囲気は一転。鋭い目つきで堅土はオーディンを睨む。


「こら、堅土!!オーディンが怖がってるでしょ!」


しかしそれを見るや否や、琥珀は堅土の蹴りを入れて鈍い音を叩き出す。


「ぐ……っう。脛をいきなり蹴るか普通……?」


その場にうずくまり、悶絶する堅土。


「お姉ちゃん……」


琥珀はオーディンの前に立ち塞がり、その背中からオーディンは怯えた様子で俺達を見る。


「よしよし。大丈夫だよオーディン。怖い人は今ちゃんとお姉ちゃんが成敗したから」


頭を撫でながら、琥珀はオーディンを優しく宥める。


「自己紹介は……まぁいらないよね。今オーディンに夕飯を作って貰ってたんだ。せっかくだし、食べてってよ」

「この匂い……カレーか?」


キッチンから漏れてくるこの香辛料とルーの独特な匂いですぐにわかった。


「お姉ちゃんの体調があまりよくないので、買い出しも私がしたんだよっ!」

「ならせっかくだし、ご相伴に預かろうかな」


断る理由も特にないので、俺達三人はそのまま一緒に食卓を囲む事となった。

食卓は正直気まずいものが少しばかりあったが、努めて俺と琥珀は明るい話題を出したことにより、結果的には、それなりに皆が楽しめる夕食になった。


※ ※ ※


夕飯も食べ終わったその後。


「それじゃお姉ちゃんはゆっくり休んでて。後は私がやっておくから」

「ありがとうオーディン。お願いね」

「うんっ!」


そう言って夜にも関わらず天真爛漫と言わんばかりに、せっせとオーディンは家事に戻っていった。


「すっかり馴染んでるな…」

「まるで姉妹みたいね……」


俺と明美から自然と笑みが漏れる。それはきっと、自分達と同じ境遇の子が幸せにやっていることに対してだろう。


「折角だし、私も洗い物手伝って来るね」

「ああ、いってらっしゃい」


そう言うと明美はそのままキッチンの方に行って、オーディンと一緒に洗い物を始めた。


「だから、どうしてここにオーディンがいるん……」

「堅土。その話、いい加減終わらせないと、また蹴りが飛んでくるぞ。今度は脛じゃなくて金的に来ると予測する」

「………………すまない」

「わかればいい。同じ男だ。俺も無用な血は見たくない」


俺は即答して、睨んでいる琥珀から堅土を守る為に、言葉だけで震え上がらせる。男の最後の弱点は、どうやっても鍛えることは出来ないのだ。ましてや琥珀の身長ならとても狙いやすいだろう。友達同士の争いなんて見ないに越したことは無いのだから。


「でもまぁ…その…なんだ。…幸せそうで何よりだよ」


複雑な様子でキッチンにいるオーディンを見ながら堅土はその胸中を呟きだす。


「オーディンだけは、組織の中でも立場がかなり特殊だった上に上司がアレだったから、かなり不憫だったんだ」


そして堅土は琥珀に向き直って素直に心中を吐露し出す。


「琥珀。俺が言えた義理じゃないのは重々承知の上なのは理解してる。だが、それでも言わせてくれ」


そして至極真っ当な表情で改まって堅土は。


「―――オーディンを、受け入れてくれてありがとう。これからも一緒にいて幸せにしてやってくれ」


言い表せない心の底からの感謝の言葉を琥珀に伝えた。


「……言われなくても一緒にいるよ。もう家族みたいなものだしね」

「……ありがとう」


頭を下げて堅土は再度感謝の言葉を口にする。きっとこれは本人にしか分からない気持ちの整理であり、ケジメなのだろう。


「さてと、そろそろお風呂の準備でもしてこようか…な……?」


不意に立ち上がった琥珀が目眩をおこした。


「とと、大丈夫か琥珀」


咄嗟に体を支える俺と堅土。


「う、うんありがとうみちる。堅土」

「まだ琥珀は安静にしてろ。病人なんだから」


俺はそう言って琥珀を床に座らせて安静にさせる。


「お風呂は俺達で入れておくから、お前はゆっくり休んでいろって」

「うん。そうするよ。ありがとう二人とも」


どこか病弱そうな琥珀を見て、俺と堅土は一抹の不安を感じずにはいられなかったのだった。


※ ※ ※


「さてと、それじゃもうかなり遅いし、俺達は帰るとするよ」


よく見ると時間は既に夜の十時を過ぎている。


「え、もう?まだ一緒にいようよ」


琥珀はそう言って引き留めようとするが、いかんせんそうは行かない。


「良いからさっさと治せって。そんで明日、学校にちゃんと元気な姿で来いよ」

「…………うん。わかった」


そう言って、琥珀は渋々といった様子で引き下がった。


「じゃ、そろそろ帰るとするよ」

「「「お邪魔しましたー」」」


そう言って俺と明美と堅土は琥珀の家を出て、帰るための帰路につく。空には真っ白に輝く満月が浮かんでいた。


「そういやお月様の模様何に見える?」


ふと、子どもの頃によく話していた事を明美と堅土に質問する。


「俺は兎かな。やっぱりそれにしか見えないな」

「私は月の女神の名前をつけられてるから、下手に言えないわね。なんかそれになってしまいそうで。みちるは何に見えるの?」

堅土が答えた後、明美は今度は俺に質問してきた。


「俺は昔から狐にしか見えないんだよな」


「―――狐?どうして?」


明美は俺に疑問を投げかけてきた。そして俺はその理由を答えた。


「昔、明美がいなくなった後の小さい子供の頃、小さな狐を何日間か保護した事があってな。その時も満月の綺麗な日だったんだ。その狐の姿が月の模様に似てて、それ以来俺は月の模様が兎じゃなくて、狐に見える」


「ふーん。そんな事があったんだ。不思議な話だね」


そんな他愛も無い雑談をしていると堅土が何かに気がついたようにバックを漁り出す。


「ん?あ、琥珀の家に忘れ物しちまったわ。すまん。今日はここで解散にしよう」

「ん?分かった。堅土それじゃお疲れさん。また明日」


「おう、また明日」


そう言って、堅土は走って琥珀の家に戻っていった。


「あれ?忘れ物って、今日あいつカバンから何か出してたっけ……?」

さて、実は今日はお知らせがあります。

とっても素晴らしいお知らせです。

Twitterにて乞うご期待!!

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