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第16話 昨日の敵は今日から妹

貴方には貴方を受け入れてくれる理解者がいますか―――?


5000文字です。

脱衣場での一悶着の後、私とオーディンは一緒に向かい合うように、お風呂に入り、肩を寄せあっていた。


「それにしても、オーディン」

「何?琥珀お姉ちゃん?」

「結局、オーディン達ってなんなの?どう言う存在?」


私はオーディンに対してそんな質問をする。

正直に言うと、オーディンのチカラに関してはどうでも良かった。けれど、彼女の事を知らないよりは知っていた方がいいと思ったのだ。

オーディンは話し出す。自身の存在意義と目的を。


「私達は神様を殺すために作り出された兵器」

「ーーー?、どうして神様を殺すの?」


同時に生じた私の疑問。言い終わるのと聞き返すのはほぼ同時だった。

オーディンは疑問に答える。


「神様になるため」

「どうして、神様にならなきゃいけないの?そもそも神様って何?どう言う存在?」


そしてまたしても生じた疑問。神様自体いるのかどうか私は怪しいと思ったからである。

オーディンは目を伏せて私の疑問に答える。


「……わからない。そんなこと考えたことも無かった…」


「オーディンは自分でもよくわからない、あやふやな神様って存在を殺そうって今まで考えてたの?それ、おかしくない……?」


「確かに……おかしい……。どうしてこんな簡単なこと、今まで気が付かなかったんだろう?……物事を多方面から客観的に捉え、それを定義して仮説を組み立て、実践する。そんなことは今まで私が散々やって来た事なのに……」


落ち込むオーディン。どうやら、本気で考えてこと自体無かったようだ。当然と言えば当然ではあるが。

大抵の人は『どうして生きてるの?』と聞かれれば、『何となく』とか『それが当たり前の事だから』とか答えるだろう。彼女達にとっても自分の存在する理由なんてそれくらいの考えだったのだろう。


「じゃあ、せっかくの良い機会だし、ここで私と一緒に考えてみない?神様って奴は本当にいるのか。そもそも神様ってなんなのか。どうすれば神様って奴になれるのかを」


表情を暗くしてしまったオーディンを励ますように私は明るく話題を持ちかけた。


「……琥珀お姉ちゃんはもしかして頭がいいのかな?」


少しばかり思案した目で私を見るオーディン。

私はそのオーディンの考えを真っ向から否定する。


「違うよ。私はただ物事を色々な方面から客観的に考えるのが好きなだけだよ。これが意外と面白いんだよ?それまで気が付かなかった、色々な見方が出来るから。私がオーディンをただの女の子として見ているようにね」

「ありがとう……じゃあ、琥珀お姉ちゃん。まずは神様が実在するのかってところからだね」

「うん」


頬を少しばかり紅潮させて、風呂のお湯に顔をうずめたあと、オーディンは話し始めた。

顔が少しばかり赤く感じるのは、お風呂に入っているだけではないような気がした。


「結論から言うと神様はいるよ。私の製作者がそれを立証しちゃったんだ」

「立証した?いったいどうやって?」


話は前提からではなく、結論から始まった。

オーディンは確信しているように、神が存在すると言った。

そしてその理由が語られる。


「何でも、ある神様が使っていたと言われる、物語上にしか出てこない筈の武器を千葉市上空の黒い穴の先の世界……『並行世界』で見つけたらしいんだ」

「なるほど。その武器が物的証拠となって、神様って奴が実在したことが確定したのか。少なくとも過去にいたなら、その子孫が今もいる可能性は充分あるし、少なくともその足跡は追えるってことになるね」


過去にいたなら未来にも存在している可能性はある。あくまでも確率ではあるが。

しかし話の論点はそこではなく、実在したと言う事実が重要なのだ。空想上の存在ではなく、確かに神様という存在がいた証拠になるのだから。


「そう、神様の実在はこれで立証出来た。次は神様とはなんなのか…だったね。これは私の中での考えだけど、神様とは後の世の人にその存在全てをことごとく脚色された、元は別のナニカって言う考えがある」


「どうして、そう考えたの?」


つまりそれは良くある小説などと一緒で、モチーフとなるAがあり、それを作者が面白おかしく書いた後、その物語がほかの人々に信じ込まれてしまったと言うもの。

今回の場合ならAと言う何かがいて、そのAが神様のモチーフになり、Bという神様として語り継がれてしまったというものである。


「でも、それなら神様って言う存在は少なくとも過去の人達には目で見ることが出来る存在だったって事だよね?でも、今の私達には神様という存在を見ることも観測することも出来ない」

「そうだね。今の推論なら、神様って呼ばれてたナニカは私達にも見える存在であるはずだよね。だって存在していたんだから」


そう。存在していたのなら観測することも出来るはず。なのに私達は神様という存在を見ることは出来ないし、出会うことすら出来ない。だからこそ、今まで神様とは空想上の産物だと思われていたのだ。


「でね、私は仮説を二つ考えたんだ」


オーディンはそう言って二つの仮説を提示してきた。


「一つ。神様はかつてはちゃんと存在したけれど、今は何らかの要因Xによって滅んでしまったか、私達の目には見えなくなってしまった『要因Xによって、元々本物の神様はいたけど後天的に見えなくなった説』」


恐竜とかと同じ考えである。隕石によって恐竜が絶滅したのと同じように何らかの要因Xがあり、神様は見えなくなってしまったと言う考え方。


「二つ。後の世の人達が、普通の一般人をモデルにあれこれ脚色したあと、その人が神様と言われるようになった。『神様は元々一般人として存在していて、その人が後でたくさんの人から神様と呼ばれるようになったっていう説』」


後者は俗に後の世で英雄などと呼ばれるようになったギルガメッシュやジャンヌ・ダルクなどと同じ考え方。


普通の人がその時代の人達の思想によって英雄や王と呼ばれ、後の世に著書や伝記として伝わって言ったというもの。


でも、今の話を聞いて私も1つだけある仮説が思い浮かんだ。


「ねぇオーディン。私も一つ思った説があるんだ。そもそも神様が存在していないで、武器だけが本物だった。その武器を使った人が神様って呼ばれただけで、実際には神様なんていないって言う説」


これは、よく言う雷神トールのミョルニルやポセイドンの三つ又の槍は存在していると言う考えから派生した考え方。

たまたまその武器を使った人が神様と呼ばれただけで、神様とはその時その時で変わるという考え方だ。


「その考え方はなかったね。製作者が立証したから神はいるって言う説を真っ向から否定する新しい視点だ」


オーディンが感心したように首を縦にふる。


「まぁでも結局、神様って何?って言う質問は、神様って奴自身に直接会って見るしか方法は無いんだけどね」


私はどこか自嘲気味に話し、苦笑いする。

結局この質問は海を知らないに人に対して『海って何?』と聞いているようなものなのだ。

自分の目で見てみるしか、確認する方法なんてないだろう。


「全部、的外れなのかも知れないし、どこか一つだけは当たっているかもしれない。でも考えることを辞めたら私達は成長出来ないと思う」


私は思ったことをそのまま口にして、話しを切り上げる。

するとお風呂場にオーディンの腹の音が盛大に響き渡った。

途端に笑い声に包まれる浴室。


「そろそろ出ようか。何か長くなっちゃったね」


笑いながら私達は浴槽から出る。

するとオーディンが途端に笑顔になりお礼を私に言ってきた。


「とても楽しい時間だった……ありがとう。琥珀お姉ちゃん……」


私に抱きつきながら感謝するオーディン。

恐らくオーディンには今までこうやって話す人は誰一人としていなかったのだろう。そう考えると、何故か優しい気持ちにもなれた。


「……どういたしまして。それじゃあ一緒に、ご飯食べようか」


そして、私達は浴室から出て火照った体のまま熱に浮かされ、居間に行くのだった。


※ ※ ※


「さてと、お料理のお時間です!」


私はキッチンに立ち、高らかに宣言する。

誰かと一緒に料理を作るというのはかなり久々だった。


「琥珀おねえちゃん!私も手伝いたい…!」


目を輝かせ、始めてやることに興味津々のオーディン。


「じゃあ、オーディンにも手伝って貰おうかな?」

「がんばるっ!」

「その意気その意気」


そう言って二人してやる気になるのも束の間。冷蔵庫を開くと途端に私は悩み果てることになった。


「どうしようかな……」

「どうしたの琥珀お姉ちゃん?」

「うーん、実は買出しに行けてなかったせいで、冷蔵庫に全然具材が無いんだよね…」


そう。冷蔵庫の中にあまり具材が入っていなかったのだ。

よくよく考えれば昨日は買い出しの日だったのに買い出しもしないで研究所で乱闘した後、そのまま家に帰ってきたのだ。


……後ろに浮き出てしまった、この魔法陣をみちるに見られたくなかったからと言う、ただそれだけの理由で。


「あ、それならお姉ちゃん。私に任せて!」

「え?」


憂鬱になり、そのまま冷蔵庫の前で嘆息していると、途端にオーディンが何やら手を丸めて、私に向かってくる。


「はい!どうぞ!!」


そう言って渡してきたのは茶色の四角い粉の塊―――カレー粉だった。


「え?ええええ!!!!???何これ!!どうやったの!?」


驚愕に満ちた表情で私は叫んだ。確かカレー粉なんてものは、今のこの家には存在すらしていなかった筈だ。


「ふふふ……実はこれが私の能力……!!」


そう言ってオーディンは少しばかり溜めて。


「物質の変質と再構築なのですっ!!」


堂々と胸をはり、自分の能力を言い放った。

包まれる静寂。正直に言うと、どうリアクション取ったらいいのか分からなかった。


「物質の再構築はわかるけど…変質って?AをBに変えるってこと?」

「そう。でも今やったのは、再構築だけどね」


そう言って今度は左手と右手にそれぞれリンゴとバナナを作り上げ、手に生み出した。


「私はそれの構成さえわかってしまえば、それを生み出すチカラと、素材さえ揃えばそこから物質を変質させるチカラを持ってるんだ」

「……えーとつまり、何でも生み出せるチカラと何でも作り変えるチカラってこと……?」


「まぁ端的に言えばそうなるね」


戦慄している私を他所に、冷静に、なにが凄いのかと言わんばかりにオーディンは肯定する。


「最も、構造をちゃんと解析できなければ生み出すことは出来ないし、当たり前だけど無限に生み出すことも出来ない。生み出せば生み出しただけ、私の熱量も消費されるって言ったデメリットがあるから結構欠陥のある能力だよ?」


「いやいやいや!!!オーディン!それ、とても凄い能力だよ!?」


私はオーディンの肩を掴んで、オーディンの認識の間違いを問いただす。


「そうなの……?」

「そうだよ!!」


驚きと不安に満ちた表情のオーディンだったが、私はオーディンの能力の素晴らしさをそのまま伝えた。


「だって医療に使えば、欠損した他人の体に癒着させる時に変質させて、そのまま拒否反応無しの上に、道具なし、傷の跡も無しで癒着させることが出来るし、化学反応の工程も分子配列も全部吹っ飛ばして、あらゆる物質を生み出すことが出来るんだよ?」


唖然となり、話についていけてないオーディン。

けれど私の言葉は止まらない。


「何より、無から有を生み出す。この事自体、偉業と言っても差し支えない事なんだから、誇っていい事だよ!!」

「そう……なん……だ……」


かろうじてようやく話について来られたオーディンは笑顔になり。


「……始めて、褒められた…♪」


容姿と相応のとても可愛い笑顔で笑うのだった。


「でも、作り出す時に熱量を使うのか……そうなると生み出して貰っても、オーディンのお腹は膨れないよね…どうしたものか……」


再度、思案して悩む私。


「ねぇお姉ちゃん?今、冷蔵庫の中には何が入ってるの?」


するとオーディンが質問してきた。


「ん?人参とじゃがいもと昨日のあまりのお米が少々って所かな?」

「だったら……はい!」


そう言ってオーディンが渡してきたのは。


「トマトとナス……?」


はて?何かこれで作れただろうか……?

そんな私の疑問は次のオーディンの言葉によって一気に氷解することになる。


「カレー食べたいっ!!」


オーディンは声を大きくしてまたしてもキラキラした曇りのない瞳で話す。

なるほど。カレーでございましたか。それなら納得。


「お肉無いけど大丈夫?野菜だけのカレーになるけど?」


お肉が無いのは正直、凄い気になったのだが今はオーディンのお腹を満たして上げるのが先だと思った。


「大丈夫!早く作ろう!!」


オーディンは近くにあったエプロンを取って、私と一緒に初めてのキッチンに立つ。


「それじゃ、オーディン!カレーを作ろうか!」

「うん!お姉ちゃん作ろう!!」


そうして私とオーディンの初めての料理は見事成功し、美味しく出来上がったのだった。



先に謝ります。かなり遅れて申し訳ございませんでした!!!


でも、しょうがなくない??もう一つの方毎日更新してるんだよ?

今週週6夜勤だよ?コミケも控えてるんだよ??

行くっきゃないだろ!!

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