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6話

ガーゴイル



先史代の教会の遺跡などで稀に見かける比較的にポピュラーな魔物である。とはいえ神や天使を信じる者がいない現在において悪魔などもまたその存在を否定されている。


そんな魔物が突如として現れたのだから目の前にカタナを構えて立っ ているグレイが震えているのも仕方がないとディヴァは思っていた。

しかし当の本人であるグレイは違った。


「見つけたぞ…やっと天使きさま等の尻尾を!!」

「グレイ?」

「ディヴァ…勘違いするなよコレは震えじゃない。喜びからくる武者震いだ。」


そう言ってグレイは黒く歪んだ笑みを浮かべた。


「オレはなコイツら天使バケモノどもやコイツらの元締めである神にいたるまで一匹残らず殲滅するのが目的なんだ」

「天使や神を?」


ディヴァはガーゴイルを見て突如吹き出すような憎悪を見せたグレイに一抹の不安のようなものを覚えた。

自身の命を狙う魔物を目の前にしながら、その魔物をも超える黒い憎悪の炎を燃やすその姿に。


ガキーン!!


ガーゴイルの鋭い爪とグレイのカタナが合わさり火花を放つと同時にガーゴイルの左腕が宙を舞った。

ガーゴイルの爪をいなす様に合わせたカタナの斬撃をそのままに相手を斬るグレイの切り落としによるものだ。

ガーゴイルは何が起きたのか理解できず翼を広げ上空に距離をおく。

しかしグレイは近くの巨木を駆け上がり、ガーゴイルの上空から刃を入れ共に地面に落とす。


「ここが森の中であった事を嘆くんだな。おまえは木が邪魔で高くは飛べない。」


人間相手に思わぬ手傷を負ったガーゴイルは、再び小さく舞い上がると、右手を頭上に上げ火球をつくり次々とグレイに放つ。しかしグレイのローブには特殊な対魔法の印が編み込まれており、火球はグレイに届かない。

しかしガーゴイルは火球をグレイに投げ続け、気付けばグレイの周囲は炎に包まれた。


「ギヒヒ」


ガーゴイルは下卑た笑みを浮かべると右手に魔力を込める。それと同時にグレイの周囲の草花に燃え移った炎が強い光を伴って勢いよく回転する


「チッ、合成魔法か。」


轟音とともに大爆発がグレイを襲う。

ガーゴイルは自身の勝利を信じ下卑た笑いを続けていたが次の瞬間に表情を一変させた。

轟々と燃え盛る炎の中、薄く光る光のベールに包まれたグレイが平然とそこにいたのだ。


「これはディヴァか?ふん、余計なまねをする。」

グレイは口元だけ綻ばせ鼻を鳴らす。グレイのローブに編み込まれた印は中級魔法にまで対応している。中級に位置する合成魔法ならば無傷とまではいかないまでも、致命傷には程遠い。精々ローブを焦がす程度だ。

しかしディヴァによるものであろう光のベールによって傷一つなく、ローブさえもが無傷だ。

グレイはガーゴイルに意識を向けたままディヴァの方に視線を移すと、ディヴァは宝玉があしらわれた小さな杖を胸元に浮かべ、手と手を合わせて祈るように歌を歌っていた。ディヴァ自身が淡い光を放ちながら。


するとグレイのローブに編み込まれた印が強く輝きだした。そしてそれはローブだけでは止まらず装備するカタナが、グレイ自身の身体までもが光を放ちだしたのだ。

吹き出すような力を伴いながら。

周りの木々草花が活き活きと輝く。風が、グレイを取り巻いていた炎が、静かにたたえる湖の水が…

その全てがまるで生きている事を歓ぶかのように輝きを増す。


「これはいったい…」

「それは祝福ブレッシングです。」

祝福ブレッシングだと?聞いた事がない魔法だが…これは凄いな。」

祝福それは文字通り神の恩恵を得る魔法です。」

「神や天使を屠る者であるオレが神の恩恵で戦うか…まるで笑い話だな。しかしオレは目的の為なら手段は選ばない。例え敵の力であっても使えるものは使う。」


吹き出すような力で満たされたグレイはカタナの刀身に手をなぞらえた。すると刀身が赤黒い禍々しい光を放ちはじめた。


その姿にガーゴイルは驚愕した。

天使より遥かに下位にあたる存在の人間がもはや魔力を越えて瘴気を纏ったカタナを携えて目の前にいるのだ。押し潰されそうなプレッシャーが自身より目の前の人間の方が強いことを悟らせる。

このままでは危険だと明確に悟り全速力で空を駈けたガーゴイルの目に飛び込んできたものは、先ほどの祝福ブレッシングにより淡い光を放ち続ける標的ディヴァと、人間が扱える筈のない瘴気をまるで刃についた血糊ちのりを払うかのようにカタナを振るグレイ。


そして地上そこにある筈のない自身の下半身だった。

彼の歪んだ笑い…ちょっとキモいから一緒に払ってしまおうと思ったのですが…しぶといですね

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