プロローグ
龍―――それは三つの大陸、五つの海、そしてそれらを覆い尽くす天、あまねく全ての支配者。あらゆる生物はおろか自然さえ彼らに平服し、その支配を逃れうるモノなど何一つ存在しなかった。
しかし、ある時点より彼らは忽然とその姿を消し、歴史の舞台から退場した。やがてその存在は後世の者たちの記憶からも忘れ去られていった。
やがて龍に代わってある猿の一種が二足歩行を取得、爆発的に世界を覆い尽くし、世界を支配する種へと成り上がっていった――――――。
時は流れて冬季のある寒い朝、人間の町、フルサナブラを大きな地震が襲った。かつて無い程の記録的な大地震は多くの住民を傷つけ、死に至らしめた。
しかし、それはただの序章に過ぎなかった。
大地震によってできた、現在は人間に”龍の爪痕”と称される巨大な地割れより、無数の龍が悠久の時を超えて地上へと帰ってきたのである。龍によってフルサナブラは瞬く間に陥落。被害はそれだけにとどまらず大陸中の都市が征服された。龍の侵攻を止められるものはおらず、残る二つの大陸の内一つは既に滅ぼされた。
現在、人間の生活圏は唯一残った大陸のわずか七分の一、総人口は五百万を切っている。