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5.どういう意味ですか!?

5話目です。

 お昼休みになり、いつもと同じく昼食をとりにローサと隊舎の食堂に向かいます。寝坊して朝食を取り損ねたので、午前の勤務中はずっとお腹が鳴っていたんですよね。

 中庭に面した窓際のいつもの席に着いて開口一番、ローサが聞いてきました。

「で、昨日団長と何かあったの?」

「うぐっ!」

 口に含んでいたお茶を危うく吹き出すところでしたよ! 

「げほっ、げほ、き、昨日って、何のこと?」

「誤魔化してもダメなんだからね。今朝、あんたが遅刻ギリギリだったことと、その後の団長の態度を見ていれば、何かあったことぐらい察するわよ。白状しなさい。何があったの?」

 うーん、鋭い。ローサには隠し事はできたことはありません。

 あっさりと私は観念して、昨夜のことをかくかくしかじか説明しました。話している途中、ローサはへぇとかほぉとか、言葉にならないことを漏らしながらニマニマ笑っていました。これは人の失敗を面白がっていますね。

「……というわけで、お酒に酔って醜態を晒してしまったので、団長の機嫌はよくないのよ。情けない部下だって思ってるよ、きっと」

 昨夜のことを話して、ため息を吐く。

「そんなことないと思うわよ。団長がそれくらいであんたのことを軽蔑しないって。むしろ、役得くらいに思ってるわよ」

「酔っぱらいの介抱が役得? どういうこと?」

「まぁ、あんたは鈍いからわかんないだろうね。私の口からは詳しくは言えないんだけど、きっと後でわかるときが来るわよ」

 フォークでキッシュを口の中に入れながら、ローサはフッと笑いました。

 ローサは時々わかったようなことを言いますが、私には何のことを言っているのか見当もつかないので、もやっとした気持ちが積もります。

「でも、私が何かやらかしちゃったのは確実だと思う。朝礼後に呼び出されたときも、団長から『覚えてないのか』って聞かれちゃったし。ただ、おんぶしてもらったことまでは覚えてるんだけど、そのあと自分の家に着く辺りから記憶がなくて……。きっと、口に出すのも憚られるようなことをやらかしたのよ! うわーどうしよう、絶対団長に愛想尽かされたよ!」

「そんなことないよ」

 突然、背後から柔らかなバリトンの声が聞こえました。びっくりして振り返ると、そこには副団長様の姿が。

 副団長様は、柔らかな渋茶色の髪と瞳の持ち主。いつでも柔和な笑顔を絶やさず、大人の余裕たっぷりでフェミニストなので、団長とはまた違った人気があります。確か、団長の三つ上のお兄様と同級で、団長とも幼馴染なんだとか。

 副団長の手には湯気のたつお皿が載ったお盆があり、昼食をとろうとして、私たちの会話を聞いてしまったようです。

「隣、座っていいかな?」

 私たちは顔を見合わせて、頷いて着席を促す。

「ありがとう。それで、その話のことだけど、あいつが気に病んでいるのは自分の行為に対してだよ。セシリアちゃんが何かして、それを軽蔑してるだとか、呆れてるだとかいうことはないから。昨日のことはあいつが勝手にやらかして、それで落ち込んでるだけだから、セシリアちゃんは気に病まなくていいよ」

 実はヴィレムに話を聞いちゃった、ごめんね、と副団長が苦笑します。

「団長が落ち込んでる? それは一体どういうことですか?」

 私も気になっていたことを先にローサが尋ねる。

「うーん、君になら言ってもいいかな。ちょっと耳貸して」

 何やら、副団長とローサがこそこそと秘密の話を始めてしまいました。話を聞いていたローサは時折、きゃーとかやるわねぇとか口走りながら身悶えしていましたが、終いにはあんたって小悪魔ねーと呆れたようにわたしを見ました。

「あんたはニブニブだもんね。それが良いところであり、罪作りなところだわ。なんだか、団長が気の毒になってきたわ」

 うんうん、と副団長も頷いています。

「でもこれって進展なのかしら。それとも後退?」

「子どもみたいなことして全然進展なしでこちらがやきもきするほどだったのに比べれば、多少なりとも進展したと思うよ。だけど、あいつがようやく先に進もうとしたのに、相手がそれをどうとも思ってないどころか覚えていないだなんて、僕はあいつが気の毒すぎる」

「本当、そうね」

 ローサが残っていたキッシュを口の中に放り込みました。

「それでセシリアちゃんに聞きたいんだけど、ヴィレムに愛想尽かされたかもって落ち込んでるってことは、あいつに嫌われたくないってこと?」

 副団長が聞いてきます。

「まぁ、上司ですからね。嫌われると仕事がやりづらくなりますから」

 何を当たり前のことを、というつもりで二人を見ると、二人がかわいそうな子を見る目で私を見ています。私、今何か変なこと言いましたっけ?

「あの、」

「とにかく、団長はあんたのことを嫌ってもないし、軽蔑もしてないってこと。それに、鈍いのも結構だけど、あんたもちゃんと団長の気持ちに向き合わないと駄目よ。今度団長と話す機会があったら、私のことどう思ってますかって聞いてみなさい」

 ローサがポンと私の肩を叩いて諭し、副団長を見ると大きく頷きました。

 何のことやらさっぱりですが、ローサのアドバイスは的を外したことがないので、次に残業になったら、聞いてみましょうか。


各キャラの年齢まとめ

セシリア→24歳

ヴィレム→29歳

ローサ→27歳

副団長→32歳


名前はオランダの人名にしてあります。副団長には、名前はまだ無いです。

ちなみに、キッシュやオムレツはフランスの料理。ドイツが有名ですが、ソーセージもフランスの料理(というかヨーロッパ料理)。

舞台設定は超適当です。すみません……。



ありがとうございました。

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