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1.残業ですか!?

初投稿です。おかしなところがあっても、お手柔らかにお願いします。

「今日こそ、定時で終わりそうー!」


 他の人には聞こえないくらいの小さな声で、書類にペンを走らせながら私はほくそ笑む。


 ここはバンデマルク王国の第三騎士団の隊舎。

 第三騎士団と言えば、第五まである騎士団のうち、王都カピタウの治安維持を任され、『王都の皆さんの安全と安心のために☆』がスローガンの、王都の人々の憧れを集める騎士団です。

私、セシリア・ストラウクはそこの事務官をやっております。

 騎士団というと、体を張って犯罪者を取り締まったり、王族や貴族の警護をしたりというイメージを持たれがちですが、経費の計算をしたり書類を作ったりと地味ーな仕事も多いのです。騎士様たちの中にはそういうのが不得意な方も多く、事務仕事を専門におこなう事務官が、少数ですが騎士団にはおります。ですから、騎士様たちが毎日思う存分仕事ができるのも、我々事務官がいるからだと自負しております。私たち事務官は、陰ながら騎士様たちをお支えできれば光栄なのです。


 他の騎士団には、噂によると第一騎士団なんかは最悪らしいのですが、事務官を馬鹿にする騎士様も多いのだとか。仕事に貴賤はないはずなんですけどね。華々しいのはそちらなのでしょうがないです。でも、ここの騎士団の騎士様たちは、皆さん気さくで優しく、仕事のできる有能な方ばかりですよ。

 たった一人を除いては。


「よお、ちびっこ。暇か?」

 お、噂をすればですね。現れました。我らが第三騎士団の団長、ヴィレム・ファン・エイク様です。

この方、ご婦人たちや町のお嬢さん方には大人気だそうです。王都を巡回するだけで、きゃーきゃー言われて、必ず恋文をもらうのだそうです。確かに、整ったお顔をされてますし、飴色の髪を短く切って後ろに撫でつけ、鍛え抜かれたお体に第三騎士団の濃紺の軍服を身にまとったお姿は、凛々しいの一言に尽きます。名家出身の割に、気安く人懐っこくて面倒見もよいので部下たちからの信頼も篤いのです。

 でも、こうやってニヤニヤしながら私に話しかけるときは、何か面倒事を持ってくるときと相場は決まっています。

「暇じゃないです。そう言う団長さんは暇そうデスネ」

 警戒心明らかにじっと見やると、団長さんは何が楽しいのかわかりませんが、ニヤニヤ笑いをやめません。

 本当だったら、一介の事務官が騎士団の団長様にこんな口をきいていいものではありません。歳も私より5つ上ですし、史上最年少で騎士団長に任命されたという経歴の持ち主ですから、最初は私も丁寧に団長に接していましたよ? でも、身近で団長の仕事っぷりを見ていると、次第に尊敬の念が薄れていきまして、ぞんざいな扱いになってしまいました。

「あと、私のことちびっこって呼ばないでください。子どもじゃないんですから」

「じゃあ、眼鏡っこ」

「むきーっ!」

 確かに分厚い眼鏡をかけてますけど。身長も150センチしかなくて成人にしては小さいけど!

 少しでも大人っぽく見られたくて、髪型とかひっつめにしてデキル大人を演出しようとしても、黒目が大きい垂れ目と、痩せぎすな体のせいで、未成年に間違われることしょっちゅうです。悔しいことに。もう24歳なんですけどね。童顔を私が気にしていることを知っていて、団長は、いつもそうやって私をからかうんです。悔しいー!

「ははは。ちびっこはからかうと楽しいなー」

 ニヤッと口の端を上げて、完全に楽しんでます。もう、手で頭をぐりぐりしないでください!

「そんなちびっこにプレゼント」

 はい、と団長から渡されたのは紙の束。

「もしやこれは……」

「そ、書類。これ明日の朝までだったの忘れてた。悪いけど、よろしくー」

 わなわなと震える私の頭にポンと軽く手を置いて、去っていく団長。そんな軽ーい感じでお願いしてますけど、これ、結構時間かかるやつですよね!? 悪い、だなんて絶対思ってないですよねー! 団長が仕事できる人って誰が言ったんですか!? 実力が認められて史上最年少で騎士団の団長になったって本当ですか!? 

 時計を見ると、4時すぎ。

 残業確定。今やってる書類作成が終われば、定時で帰れるはずだったのに!

 怒りで震えてデスクの後ろを振り向くと、手をひらひらと振って颯爽と去っていく後姿。

「団長ぉおおおおおおおおおーー!!!」

 私の怒声が今日も第三騎士団に響きました。


ありがとうございました。

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