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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第六章 少女誘拐事件、あるいはこのあと滅茶苦茶セックスはできなかった話
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苦ぁいコーヒーなどを用意してお読みください(2)

 事が終わった後、俺はティトと二人で冒険者ギルドに向かった。


 件の怪しげな儀式を行っていた連中をそのまま放置するわけにもいかないから、とりあえず黒ずくめどもはそこにあったロープでふん縛っておいて、あとはギルドにぶん投げようという次第だった。


 冒険者ギルドに行って、ギルド長のターニャを呼び出しそれを伝えると、彼女はすぐ人を出すと言って、ギルドの職員と、手の空いていた冒険者を数人雇って向かわせた。


 そしてターニャは、あとはこっちで適当にやるから帰ってもええよ、と伝えてきた。


 俺とティトが、どこかそわそわしているのを見かねての事のようだった。

 まったく、持つべきものは物分かりの良いギルドマスターだな。


 ちなみに今回の件、一見すると俺にとっては骨折り損のくたびれ儲けという様相だったが、実は俺は後日に、結構多額の報奨金を手にすることになる。


 というのは、今回たまたまぶっ飛ばした黒ずくめたちは、ターニャから相談されていた『狂戦士のポーション』の件の黒幕だったらしく、さらに彼らは、この国で信仰を禁止されている邪教徒の集団だということだった。


 彼らは邪神降臨の儀式を行なっているところだったらしく、俺はその惨事を未然に防いだ英雄として、国から報奨金を与えられたというわけだった。


 ちなみに、例の儀式が行われていた地下室の上の商館の主も、その邪教徒の信徒だったことが調査によって露呈し、お縄につくこととなったらしい。


 また、あの見張りの少年に関しては、後日再び出会うこととなるのだが……それもまあ、後日の話だ。




 ──そう。

 今は後日の話よりも、今の話をするべきなのだ。




 冒険者ギルドから帰った後、ティトが遅めの夕食を準備する。

 そうして食卓に並べられたご馳走をみんなで満足に平らげた後、夜の時間が訪れた。


「…………」


 俺はキングサイズのベッドに腰かけ、その大きな部屋で一人、緊張の時を過ごしていた。

 薄暗い部屋を、ランプの炎の明かりだけが照らしている。


 そのとき、キィと、部屋の扉が開いた。


「あ、あの……お邪魔します……」


 戸口に現れたのは、ティトだった。

 俺は顔をあげ、その姿を確認するや、ドキッとした。


 風呂上がりのティト。

 その緩やかに波打つ長い銀髪は、しっとりと濡れている。


 薄ピンク色の寝間着姿を押し上げて主張する大きな胸には、いつもにも増して目を奪われる。


 そして、湯上がりで火照った白い肌。

 特にその頬が紅潮しているように見えるが、ランプの明かりの塩梅かもしれない。


 エメラルドグリーンの瞳は、伏し目がちに床を見ている。

 俺のほうをちらっと見ては、俺と目が合い、またすぐに恥ずかしそうに下を見る。


 視線のやり取りだけ見れば、ティトと初めて会ったときにも、同じような感じだった気がする。

 でも今は、シチュエーションが違いすぎる。

 暴力的なまでに生々しい欲が、俺の感情を支配する。


「──ティト」


 俺は腰かけていたベッドから立ち上がり、戸口のティトのもとへ歩み寄る。

 そしてその少女の体を抱き寄せ、部屋に引き入れると──部屋の扉を閉じて、鍵を閉めた。




 俺たちは、このあと滅茶苦茶セックスした──というわけにはいかなかった。

 お互いに手探りで、心探りで、そうそううまくはいかなかった。


 元の世界では三十歳を過ぎていたとはいえ、年齢イコール彼女いない歴という経歴の持ち主である俺だし。

 一方のティトだって、まったくの未経験だった。


 結局、気持ちの面では欲望よりも緊張と気遣いが勝ってしまい、内容で言えば失敗と恥の連続だった。


 でも、ひとまず事を終えて、二人で裸で抱き合って眠ろうとしたとき、ティトが子どもをあやすように俺の頭をなでなでしてきたのは、ヤバかった。

 確かにそうしてほしいと言ったのは俺だが、それで興奮してもう一度狼さんになってしまった俺を、誰が責められようか。


 まあいずれにせよ、そんな夜が過ぎてゆき──




 ──翌朝である。


 ちゅんちゅんと小鳥のなく声が聞こえてくる。

 窓からは麗らかな朝日が挿し込んでいる。


 以前とは違う、まごうことなき朝チュン。

 裸であおむけに寝た俺の上には、同じく裸の銀髪少女が折り重なって、すぅすぅと寝息をたてて眠っていた。


 そのあまりの愛おしさに、俺は彼女の髪を優しくなでる。

 すると──


「んぅ……」


 ティトがうっすらと目を開いてゆく。

 そして少女は、俺の胸の上で寝ていたと知るや、その頬をボッと赤らめる。


「……お、おはようございます、カイルさん」


「ああ、おはよう、ティト」


 俺はティトに応えて、さらに髪をなでる。

 するとティトは、ぷっくーと頬を膨らませて、恨めしそうな目で俺を見上げてくる。


「……むぅ、余裕ぶって。昨日はあんなに慌ててたのに。可愛かったのに」


「う、うるせぇな! 可愛いって言うな! もっかい襲うぞ!」


「えへへー、それも悪くないかもです。カイルさんの弱点とか、そろそろ分かってきましたし?」


「ぬぐぐっ……!」


 どうも旗色が悪いようだ。

 いつか泣かしちゃる、と思いながら、俺はベッドから出て、服を着る。

 するとその俺の背中に、ティトが声をかけてくる。


「カイルさん」


「何だよ」


「大好きです」


 俺は服を着ている途中にかかわらず、へなへなと地面に崩れ落ちた。


「──お、お前なぁ! 毎回不意打ちすぎんだよ! それ卑怯!」


「えへへー。だって好きなんだもーん」


「ぐはっ」


 ダメだ、ティトに勝てない。

 こいつの精神攻撃は強力すぎる。


「あ、私、朝食の準備しないと」


 そう言ってティトは、そそくさとベッドから起き上がって、向こうで寝間着を着る。

 そしてるんるんと、跳ねるように部屋を出ていった。


 銀髪の天使は、行ってしまった。

 すると突然ぽっかりと、俺の胸に、穴が開いたような心持ちになる。


「あー……ダメだわ俺。ティト依存症だ」


 自覚症状。


 俺はチート能力を得て、かなり途方もない力を手に入れた気でいたのだが……。

 どうも心の問題というのは、能力じゃ解決できないもののようだった。


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