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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第六章 少女誘拐事件、あるいはこのあと滅茶苦茶セックスはできなかった話
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念話の有用性

 『透視』の効果で、視界から壁を片っ端から取り除く。

 商館の中身が、まるで断面図のように、そしてその先の壁も取り除くと、仕切りのない建物のように映った。


 その商館の作りは、一階部分以外はほとんど普通の住居という様子だった。

 寝室がいくつかと、食堂らしき場所、執務室、応接室、トイレなどなど。

 人は、一階部分以外はまばらだ。


 でもそこは本命じゃない。

 俺はさらに、商館の建物の「床」を、視界から取り払う。


 すると──労働者たちが透明な地面の上を歩いて仕事をしているような奇妙な絵の下には、ビンゴとしか言えない光景が広がっていた。


 地下一階のそこは、冷たい石造りの階層だった。


 どこからそこに繋がっているのかと見ると、商館の裏口の一角に地下へと続く秘密の階段が隠蔽されていて、そこから降りていけるようになっていた。


 地下にはいくつかの部屋があった。

 小さな部屋が多数と、大きな部屋が一つ、それにそれらを繋ぐ廊下がある。


 小さな部屋は、どれも鉄格子がはまっていて、牢獄のようになっている。

 それぞれの牢獄にはそれなりに上等のベッドが置かれていて、いずれの部屋にも少女と思しき人物が一人、収まっている。


 そして、その中に──いた、ティトだ。

 俺の愛しの彼女は、ベッドの上で布団を抱きしめつつ、何やらごろごろと転がっていた。


 ……オーケー、元気そうで何よりだ。


 一方、廊下にも一人、立っている人物の姿があった。


 全身黒ずくめで、フードもかぶっているようで、ここからだと背格好や人相は分からない。

 こいつが、ティトが言っていた「見張り」だろうか。


 まあ、それはいいだろう。

 それより何より、もっと露骨にあやしい場所がある。

 その地下に一つだけある、大部屋だ。


 その大部屋の床には、何か黒い塗料で魔方陣らしき絵が大きく描かれていた。

 その塗料が、どこか淡い光を放っているように見える。


 魔方陣の中央には、燃え盛るかがり火。

 でもこの炎の色が奇妙で、緑と青を混ぜたような色を発している。


 さらに、六芒星的な図柄を含んだ魔方陣の各頂点には、はりつけ用の柱のようなものが立っている。

 その六か所の柱それぞれの脇の床には、適度な長さのロープが準備されていた。


 ちなみに、地下牢に捕らえられている少女の数も、ティトを含めてトータル六人だ。

 何と言うかまあ、非常に分かりやすい図式だった。


 そして、その魔方陣の周囲では、一ダースを超える数の黒ずくめたちが、一心不乱に祈祷をしている。

 その祈祷に合わせて、かがり火が揺らめいているようにも見える。


 加えて、部屋の奥。

 一段高くなった場所に、一等偉そうな黒ずくめがいた。

 そいつは両手を掲げて、祈祷する黒ずくめたちを煽っている様子だった。


 ……とまあ、そんな光景。

 これを怪しいと言わずに、何を怪しいとするのかというぐらい怪しい景色だった。


『ティト』


『はっ、はいっ!』


 俺が『念話』で呼びかけると、ベッドの上でごろごろしていたティトが身を起こし、ベッドの上で正座して背筋を伸ばす。


『ティトの姿を見つけた。今から助けに行くからな』


『えっ、本当ですか!? ど、どこにいるんですか!?』


 きょろきょろと周囲を見渡すティト。

 面白い。


『ふっふっふ、何を隠そう、ティトの真後ろだ』


『えっ! うそっ!?』


 慌てて背後を見るティト。

 もちろんそこには誰もいない。


『ああ、嘘だ。でも今、ベッドに座っているティトが、慌てて後ろを振り向いたのは見えてるよ』


『なっ……も、もうもうもう! こんなときに変な冗談言わないでください! わ、私、心細いんですからね!』


『そのわりには、ベッドの上で楽しそうにごろごろ転がってたよな』


『ひぅっ!? き、気持ち悪いですカイルさんっ! 覗き見! 覗き見ですか!?』


『…………』


『……? あの……か、カイルさん……?』


『……ティトに気持ち悪いって言われた』


 ずーん。

 俺は屋根の上で一人、orzな状態になっていた。


『えっ、ちょっ、落ち込んでるんですか……? えっ、えっ……?』


『もうダメだ。家に帰ってからたくさんティトに慰めてもらわないと、この俺の傷ついた心は癒されない』


『ふえっ……? いや、それは……別に、いいですけど。私で良ければ、いくらでも慰めますけど』


『ティトになでなでしてもらわないと』


『えっ、私がされるんじゃなくて、私がカイルさんをなでなでするんですか?』


『男は彼女に母を求めるのです。ママー、抱っこしてー』


『のですって……カイルさんが壊れた……まあ、いいですけど。抱っこも、なでなでも、カイルさんが望むならいくらでもやります。むしろ望むところです』


『あと、大人の階段も上る』


『あぅっ……そ、それも……はい、いいですけど。……いいんですか?』


『めちゃくちゃにしたい』


『ふへっ!? ……うぅ……カイルさんが超絶カッコいい変態だっていうこと、久しぶりに思い出しましたよ……。わ、分かりました、もう、好きにしてください……』


 うん、余人が聞いていたら爆死しそうな会話だが、脳内会話なので大丈夫。

 『念話』いいな。

 今度から日常会話でも使おう。


 まあ、それはさておきだ。

 この後のお楽しみのためにも、目の前の面倒事を、どうにかしないとな。


『よし。じゃあ、ちゃっちゃと悪い奴ら倒して、家に帰るぞ』


『……はい。待ってます、カイルさん』


 ティトの信頼に満ちた声を聞き、俺は屋根の上で立ち上がる。


 ──それじゃ、ミッションスタートと行くか。


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