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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第一章 異世界と冒険者生活、あるいは残念妖精と山盛りのチート能力
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報酬とレベルアップ

 盲点があった。

 俺はその盲点に、五体目のラッシュ鳥を倒した時に気付いた。


 ラッシュ鳥を入れるずだ袋。

 それに五体目のラッシュ鳥を入れて、袋の紐を縛ると、袋はもう完全にいっぱいだった。

 これ以上無理に詰め込もうとすると、おそらくは袋が破けるだろう。


 つまり、これ以上ラッシュ鳥を倒しても、持ち帰れないということだ。

 普通は、一日の狩りで五体オーバーなんてそうそうないから、この袋で十分なんだろうが……うん、盲点だった。


 で、どうするか──


 ……あんまりね、こう問題が何かあるたびにチート能力切るってのも、どうかとは思うんだが。

 でもどの道これも、いずれ取るとは思うから、ここで切ってしまおう。


 チートスキルの中には、取得することでアイテムを手に入れることができるものもあって、その中の一つに「無限収納インフィニットバッグ」というスキルがある。

 文字通り、中にいくらでもモノを収納できるアイテムを入手できる。


 収納できるモノの大きさには限度があるが、ラッシュ鳥ぐらいのサイズならどうにか放り込める。

 これを取得すれば、その中にラッシュ鳥をいくらでも詰め込めるわけだ。


 ちなみに、見た目は大袋だけど、収納した後はぺったくなって、ポケットサイズまで折り畳み可能。

 しかも中のモノの重量は、これの中に入れている間は無視できるという至れり尽くせりぶり。


 何とこの商品が、今ならたった1ポイントのチートポイントで、あなたの手に!

 もう買わない手はありませんね!


 というわけで、チートポイント1ポイントを支払って、女神通販センター(仮)より、無限収納インフィニットバッグをお取り寄せした。

 俺の目の前の空間にぱああっと光が生まれ、その光が大きな布袋っぽい袋に姿を変え、俺の両手に収まる。

 ちょっと神々しい光を放っていることを除けば、外見は今持ってるサンタ袋に似てるな。


 俺はそれを折りたたんでポケットにしまい、狩りを再開する。

 さ、頑張んべー。




「意外と早く帰ってきたな。……もう諦めたのか?」


 街の入り口の門。

 門番のロリっ子、リノットさんから声を掛けられる。

 時刻は夕刻を過ぎ、空が夕焼けの朱色から、夜の紺色に変わろうとしている頃だ。


 彼女の視線は、俺が持っているずだ袋に、一瞬だけ向けられていた。

 最初の五体も、重量を無視できる無限収納インフィニットバッグのほうに移したから、ギルドから渡されたずだ袋には、今は一体も収納されていない。


「いや、大収穫でしたよ」


 嘘をついて後々面倒になっても嫌なので、事実を言う。

 ドワーフ娘は、再びずだ袋の方に視線を向けて、


「……見た感じ、一体も捕獲していないようだが」


「いろいろと企業秘密ってものがあるんですよ」


「はあ……そうかい。何だか分からんが、法にもとることはするなよ」


 リノットさんはそう言って、門を通してくれる。

 俺は通るときに、一応確認しておく。


「この門を通るときに、捕まえたラッシュ鳥に税金がかかったりしないですよね?」


「冒険者ギルドのクエストなら、税はギルドで天引きしてる。ここで取ることはないよ」


 なら大丈夫、問題になるとすればそれぐらいだろう。

 俺はリノットさんに挨拶をして、門を抜ける。




 冒険者ギルドの受取・支払カウンターは、ギルドの入り口を入って右手側の、奥まったところにある。

 俺はそこに行って、クエスト達成を告げる。


 窓口の担当は、新人っぽい、小柄な女の子だった。

 彼女は手元のカンペみたいなものをちらちら見ながら、受け答えをしてくる。


「ラッシュ鳥討伐・捕獲のクエストですねー。えっと……このクエストだと、一体捕獲につき銀貨五枚の報酬になりますけど、捕獲したのは何体ですか?」


「あ、五十二体です」


「五十二体ですねー。でしたら、銀貨五枚が五十二体だから……合計で、銀貨二百六十枚のお支払いになりますね。えっと、金貨でのお支払いにしますか?」


 金貨は一枚あたり、銀貨十枚分の価値がある。

 銀貨二百六十枚も受け取っても邪魔だから、金貨でもらった方がいいだろう。


「はい、それで。──捕まえたラッシュ鳥はここに置いておけばいい?」


「あ、はい、ひとまずそこの床に置いてください」


 俺はカウンターの前の床に、無限収納インフィニットバッグから、ラッシュ鳥を一体ずつ引っ張り出してゆく。

 積み上げられてゆく巨大鶏の山。


「……すごいですね、その袋。マジックアイテムか何かですか?」


 窓口の子が、ほえーという驚き顔で聞いてくる。


「うん、我が家に代々伝わる、家宝のマジックアイテム」


 ということにしておく。


 で、俺がラッシュ鳥五十二体を出し終えると、窓口の子がそれを数え始めた。

 そして、


「はい、ラッシュ鳥五十二体、確かに確認しましたっ。それじゃあ、こちらが報酬の金貨二十六枚になります。ご確認ください」


 俺は金貨二十六枚を確認して、財布袋に投入。

 窓口の子に手を振って、その場を去る。

 窓口の子も、またねーという感じで、きゃっきゃと手を振り返してきた。


 ちなみに、背後から以下のようなやり取りが聞こえてきたりもする。


「先輩~、このラッシュ鳥五十二体って、どうしたらいいですかね?」


「……はぁ? あんた何言ってんの、五十二体なんてあり得るわけ──って何これ!? ぎ、ギルド長ーっ!?」


 ……うん、なんかキナ臭いから、面倒事に巻き込まれる前に退散しよう。

 俺はささっと冒険者ギルドをあとにした。




 冒険者ギルドを出た後、街中をぶらぶらしながら、今日の宿を探す。


 宿は安めのところで、一泊朝食付き、銀貨二枚からというのが相場だった。

 俺は銀貨三枚を支払って、ちょいちょい快適な個室の部屋を確保する。

 そして部屋に入ったら、胸元からフィフィを解放してやった。


 一方俺は、ベッドに腰かけて、ステータスの確認だ。

 レベルがどれだけ上がっているかの確認を、まだしていない。

 これは楽しみに取っておいたのだ。


 いや、無限収納インフィニットバッグを獲得した段階で、本当は一度、確認はしている。

 そのときは、ああなるほどな、こりゃあ何年も戦士やってるその道のベテランさんが、7レベルとかで止まってるわけだと納得したもんだ。

 必要経験値の桁がおかしいんだよな。


 まあとにかく、今の数字を見てみよう。

 ステータス、オープン!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:カイル

 種族:人間

 性別:男

 クラス:ノーマルマン

 レベル:12(+11)

 経験値:3,194,880/4,302,000


 HP:370(+110)

 MP:140(+44)


 STR:75(+22)

 VIT:74(+22)

 DEX:71(+22)

 AGL:75(+22)

 INT:76(+22)

 WIL:70(+22)


 スキル

 ・獲得経験値倍化:10レベル

 ・治癒魔法:5レベル

 ・炎魔法:5レベル

 ・ステータス鑑定

 ・ステータス隠蔽

 ・痛覚遮断

 ・飛行能力:3レベル

 ・ホークアイ

 ・無限収納


 チートポイント:148


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ──ん、まあこんなもんだろう。

 まだ一日目だしな。


 能力値成長がぺったいのは、クラスがノーマルマン──一般人だからのようだ。

 クラスチェンジは特定の条件がそろっていれば冒険者ギルドでできるらしいが、正直このままでいいような気がしている。


 どの能力値がどこで役に立つか分かったもんじゃないから、一点特化が正義とも言い切れないし。

 『最強の一般人』っていうフレーズも、なんか熱いしな。


 で、レベルが上がったら能力値に割り振れるチートポイントも増えるという話だったので、それも軽く試してみる。

 すると、全能力値に+110ずつ、チートポイント換算で+11ずつが割り振れることが分かった。


 これまたダイナミックな上がり方だが──正直、それに66ポイント支払うのも、いかがなものかなぁと思い始めている。

 割り振ったら割り振ったで、また一段階、次元をぶっちぎれる気もするんだが……それよりも、スキルの方があまりにも便利過ぎて、ポイントはそっちに温存しておきたい気がしている。


 そんなことを考えて、能力値への割り振りは、一度保留にしておこうかと思った。

 能力値はレベルアップでも上がって行くし──何か能力値不足で困ったことがあったら、そのときまた考えればいいだろう。


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