新たなる脅威
いまだに執筆環境が安定しないのですが、ひとまずちまちまと書き進めていってみます。
また長期更新停止になったらごめんなさい。m(_ _)m
今のところ、二月後半あたりからまたちょっと止まる予定ではあるのですが……。
なお、うまくいけば、こちらの作品(↓)と一章ずつ交互に更新してゆくスタイルになるかと思います。
……ええ、うまくいけば。
『セーラー服の勇者 ~ぼっち系女子高生の異世界冒険譚~』
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──ティト視点──
「ふんふふ~ん、ふんふんふ~ん♪」
今日も鼻歌交じりに、カゴを片手に市場でお買い物です。
新鮮なお肉屋お野菜、お魚が並ぶ中、主婦目線で良いものを物色して回ります。
我が家はお金にはそんなに困っていないみたいですけど、それでも良いものを安く手に入れられるなら、それに越したことはありません。
やっぱりこう、一家の大黒柱のお嫁さん……じゃなかった、家計を預かるメイドとしては、こういうところは、手が抜けないところです。
というわけで、こんにちは。ティトです。
まだ本当の意味でのお嫁さんじゃないことぐらい、ちゃんとわかってますよ? 大丈夫ですよ?
それに、カイルさんは行く先々で可愛い女の子を引っかけてきますからね。
なかなか油断ができません。
カイルさんのハーレムの最古参としては、新人イビリ……じゃなかった、新入りの動向には、常に目を光らせておかなければなりません。
でも今のところは、カイルさんのハーレムの中で、私が一歩リードしているつもりです。
まあみんなで幸せになればいいんですけど、やっぱりこう、独占欲っていうんでしょうか、私を一番愛してほしいって思うようなところは、否定できないですよね~。
「今日の晩御飯はなんにしよ~♪ カイルさんは何が食べたいかな」
胃袋をつかんでしまえば勝ちって、よく言いますしね。
正直言って、パメラちゃんやアイヴィさんには、家事で負ける気はしません。
フェリルちゃんは、魔族なせいか、その辺さっぱりみたいですし。
まあ今のところ、私の敵はいない感じですかね~。
……えっ、冒険者として?
あー、えっと、まあ……そっちは、アイヴィさんとかに譲ってあげてもいいかなって。
でも、空いた時間にこっそり魔術書を読んで、勉強しなおしたりはしてるんですよ?
メイドとしての賃金代わりに、冒険で得た報酬を分け与えてもらっているので、そのお金で高価な魔術書だって買えちゃったりするわけで。
何にせよ、カイルさんへの恋慕の情を除いても、いい環境だなぁと思います。
だからこそ、ううんそれがなくても、王子さまの一の従者として、これからも頑張っていきたい所存なのです。
そしていずれは私も、王子さまの横に座るお姫さまに……って、王子さまはお姫さまとは結婚しないか。
じゃあ何だろう。カイルさんが王様になって、私がお妃さま?
いやでも私、お妃さまっていう柄じゃないよなぁ……。
なーんてことを買い物しながら考えつつ、買うものを買ってから、愛しの我が家へと向かう。
今日はまだカイルさんになでなでしてもらってないから、さて、いつなでなでしてもらおうかな~。
ぎゅーって抱きついて、なでなでしてもらって、そのまま今日こそめくるめく大人の時間に……と、突入?
「いやーっ♪ きゃーっ、きゃーっ♪」
道端でいやんいやんと身をよじってみたり。
でもすぐにちょっとだけ冷静になって、こほんと一つ咳払い。
まあ、大丈夫。
言ってもここは路地裏なので、そうそう人通りがあるような道でもないです。
……そう。
ないはず、だったのだけど──
「……誰ですか、あなたたち」
──私が歩いていた細い路地の先に、黒いフード付きコートに身を隠した人たちが数人、姿を現した。
背丈や体格はそれぞれ異なるけど、一様にフードを目深にかぶっていて、顔はよく見えない。
しかも、私の誰何の声にも、何も答えない。
露骨にあやしい人たちだった。
私は即座に、戦闘を意識する。
私だって、カイルさんたちと一緒に冒険してきて、多少は強くなっている。
その辺の暴漢にどうこうされるほど、弱くはないつもりだ。
でも──魔法の補助具になる杖を、今は持っていない。
それに加えて、相手の人数が多い。
お世辞にも有利とは言えない状況だ。
逃走も、当然視野に入れるべき。
そう思った私は退路を確認するため、ちらと背後に視線を向ける。
すると──
「うそ……気配なんて、なかったのに……」
狭い路地で私を挟み撃ちにするように、背後にも黒ずくめのフード男が数人、姿を現していた。
しかもそのうちの一人が、すっと身を沈めて──私に向かって駆けて寄ってきた。
「──っ!?」
──速い!
私はとっさに振り返って、迎撃しようとしたけど、全然間に合わなかった。
「か、はっ……!」
お腹に一発、重たいのを入れられて──
私は食材の入ったカゴを取り落とし、そして同時に、意識も落ちてゆくのを感じた。
「カイル……さん……」
最後に感じたのは、崩れ落ちる私の体を抱きかかえようとする、目の前の男の腕の感触だった……。




