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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第五章 剣闘祭、あるいはセクハラ無双と奴隷の首輪
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準決勝

 Dグループの予選は、特に何の変哲もなく、そこそこのやつ同士で戦って、そこそこのやつが勝ち残った。

 そうして予選が終わると、昼食休憩を挟んだあとに、準決勝となった。


 一人控え室にいた俺は、係の人の案内で、闘技場のグラウンドへと出て行く。

 予選と違い、今回の対戦相手は、別の入口から現れることになっている。


 俺が闘技場のフィールドに出て行くと、正面の別の出入り口から、筋骨隆々たる爺さんが現れた。

 木製の大斧を、肩に担ぐように持っている。


 この王都の冒険者ギルドのギルド長、パグスだ。


 俺とパグス爺さんは、ともにフィールドの中央部あたりまで歩を進める。

 そして十メートルほどの間を取って、対峙した。


「おう、小僧。──お前さんひょっとして、ものすごく強いんかの」


 俺の予選を見ていたのだろう。

 パグスは空いているほうの手で髭をしごきながら、そんなことを聞いてくる。


「まあ、そのつもりですが」


「はんっ、ほざきよるわ。──Cグループの予選は見とったか」


「ええ」


「あれに勝てるか?」


「実際にやってみないと何とも」


「まったく……世界は広いのぅ」


 パグスはそう言って、木の斧を構えた。

 そして試合開始の銅鑼が鳴ると同時、俺に向かって真っすぐに、巨体を唸らせ走ってきた。


「うぉおおおおおおおおっ!」


 空気を揺らすような気迫の叫びとともに、大斧が振り下ろされる。


 遅い。

 俺は横にステップを踏み、振り下ろされた斧を難なくかわす。


「──無限狂乱斧むげんきょうらんふじゃあああっ!」


 パグスの斧はさらに、縦横無尽の連打を繰り出してきた。

 だが、これも一撃一撃は遅く、たやすくかわせる。


 俺は身を屈め、あるいは横に身を逸らせ、斧による連打をぶんぶんと空振りさせてゆく。

 そして、その連続攻撃の五撃目を、斧の柄の部分を手でつかんで受け止めた。


「……ふんっ、バケモノめが」


 パグスが吐き捨てるように言ってくる。

 その腕が、斧の柄をつかんだ俺を押しつぶそうと、筋肉を膨れ上がらせる。


 しかし──


「あんたみたいな、バケモノ爺さんにだけは言われたくないですよ」


 この世界の筋力──STRの値は、筋肉の力だけで決まるわけではない。

 パグスがいくら力を込めようと、斧の柄をつかんだ俺はびくともしない。


「ぐぬぅううううっ……小童こわっぱが、これほどとはな」


 それでパグスは、ふっと力を緩めた。

 そして斧から手を放し、両手を上げた。


「降参じゃ。ワシじゃこの小僧には、逆立ちしても勝てんわ」


 パグスがそう宣言すると、試合終了の銅鑼が鳴った。

 歓声と湧きおこる。


 しかし同時に、パグスに対する罵声がいくつか飛んできた。

 「情けねーぞ!」とか「ギルド長やめちまえ!」とかいうヤジの類である。 


 そのヤジ、パグスの爺さんは甘んじてそれを受け入れていたが、俺はちょっとムカッとした。

 なので観客席に向かって、声を上げる。


「おい、今パグスの爺さんにヤジ飛ばした奴、全員降りて来い。──お前らは『情けなくない』んだろ? まとめて相手してやるから、掛かって来いよ」


 俺がそう言うと、飛び交っていたヤジは一瞬にして消え去った。

 まったく……。


「……おぬし、妙なところで人情みたいなもんを見せるのぅ」


 パグスが意外そうな顔で、俺を見ていた。


「いや、別に。俺がムカついただけなんで」


「はっはっは、そうかそうか! そういう所まで、ワシの若いころにそっくりじゃわい!」


 バンバンと背中を叩かれた。

 そう言われると、年取るとこの爺さんみたいになるようで嫌だった。




 そうして、準決勝での俺とパグスの決着がついた。

 そして一方のCグループとDグループの勝ち抜きで行なった準決勝はというと、当然のように例の少女が勝ち進んだ。


 ──いよいよ、決勝の舞台。

 俺はこの段になって、「あれ、どうして俺は自らこんな目立つことやってるんだろう?」と首をひねるのだが、今更あとには退けないのであった。


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