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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第五章 剣闘祭、あるいはセクハラ無双と奴隷の首輪
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天国に帰ってきました

「いやぁ、予選終わった。俺がんばったわー、超がんばったわー」


 フィフィを回収して観客席に戻ってきた。

 我が愛しの三人娘が待っていてくれた席に、どっかりと腰を下ろす。


 そうして席に陣取った俺の、左の席にはティトが、右の席にはパメラを抱えたアイヴィが座っていた。


「おかえりなさい、カイルさん。すごかったですね。──でも私、見てましたけど、何が起こったのかさっぱりでした」


 ティトが俺の腕にすがりついて、上目遣いの尊敬のまなざしで俺を見てくる。


 ローブの布地越しのやわらかい感触が、俺の左半身に襲い掛かった。

 少女の温度を持った吐息が俺の左の首筋にやんわり吹きかかってきて、やばいやばいってなる。


 それで、ああ俺は、この観客席という名の天国に帰って来たんだなとあらためて実感する。

 というか、観客席というよりティトが天国、いや天使。


 しかしあれね、なんかティトも最近、べたべたするのに抵抗感なくしてきてる感あるよね。

 俺としてはもちろん、一向に構わんというか大歓迎なのだけど。


「だって、あの下賤げせんな男たちがカイルさんを囲んで、一斉に向かって行ったと思ったら、バタバターって倒れて」


 ……いや、下賤とか言っちゃうあたり、やっぱりティトだなぁとは思うけど。

 まあそれはともあれ。


「ところでティト、こいつらの今の状態を三行で説明してほしいんだが」


 俺はティトに、自分の右側に座っている二人の状態についての説明を求めた。


 アイヴィがにこにこしながら席に座っており、そのアイヴィが抱えるようにして、パメラを自分の前に座らせている。

 パメラはというと、その瞳から光が失われていた。


 パメラの目の前に手をかざして見ても、その手の動きをうつろな目でぼーっと追うだけ。

 完全なる廃人の仕草だった。


「あっ、えっと、それは…………私の口からは、ちょっと……」


 ティトは俺から視線を逸らし、頬を赤らめる。

 おい、一体何があった。


 俺は逆側の、当の本人へと向き直る。


「アイヴィ、お前パメラに一体を何した」


「何って、可愛がっただけだよ?」


 アイヴィに聞いてみるも、きょとんとして首を傾げるばかり。

 聞いてもらちが明かなさそうだったので、とりあえず自己解決を図ることにする。


「わかった、とりあえずパメラを渡せ」


「えー、カイルにはティトちゃんがいるからいいじゃない」


 アイヴィにパメラの身柄の受け渡しを要求すると、赤髪の変態剣士は珍しく、口を尖らせて反抗してきた。

 面倒くさいので、アイヴィ語で対応。


「黙れ。口答えは許さん」


「わっ、カイルがワイルドモードだ。……渡さないとボク、お仕置きされる?」


 何やら期待するようなまなざしをされつつ、ともあれアイヴィからパメラを受け取った。

 俺はパメラを抱きかかえ、その体を俺の膝の上に、俺と向かい合う形でまたがるように座らせる。


「おーい、パメラ~」


 目の前で手を振ってみる。

 パメラは瞳に光彩を失ったまま、不思議そうに首を傾げた。


 ダメだ、完全に死んでいる。


「おーい」


 次に、わき腹をふにふにと揉んでみた、

 パメラはやんやんと身をよじるが、単なる反射のようで、瞳に理性が戻る様子はない。


「ならば……これでどうだ」


 今度はパメラの背に腕を回し、ぎゅっと抱きしめてみた。

 そして片手で髪をなで、もう片方の手で背中をぽんぽんと叩いてやる。


「あー……えへへ、ダーリンだぁ……」


 おっ、わが胸の中で、パメラの反応あり。

 この路線は有効のようだ。


 俺はパメラを抱きしめつつ、その耳元でささやきかける。


「ああ、ダーリンだぞ。パメラは将来俺と結婚して、たくさんエッチなことして、子どもを産むんだぞ」


「けっこん……? あたし、ダーリンとけっこんして、えっちして、こどもうむの……?」


「ああそうだ。だから、このあと家に帰ったら、俺とたくさんエッチなことしよ痛っ!」


 スパーン!


 ティトが俺の後頭部を引っぱたいていた。

 俺がいざというときのためにティトに渡しておいた、ツッコミ用のハリセンだった。


「か、カイルさんのバカぁッ! パメラちゃんを洗脳してどーすんですか!?」


 涙目で抗議するティトがそこにいた。

 可愛い。


「じょ、冗談だよ、冗談」


「冗談に聞こえません! もう、カイルさんなんか知らない!」


 ぷいっと、天使が拗ねてしまった。

 可愛い。


 ちなみにパメラは、しばらくすると普通の状態に戻った。

 でも、何があったかを聞くとカタカタと震えてまた元に戻るので、真相は闇の中だった。


 そしてアイヴィは、ひゅーひゅひゅーと口笛を吹いて、そっぽを向いて誤魔化していた。

 あとで本気でお仕置きしてやろうかと思った。


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