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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第五章 剣闘祭、あるいはセクハラ無双と奴隷の首輪
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バトルロイヤルですよね?

「おいおい──これ、バトルロイヤルだろ」


 俺は周囲を見渡して、苦笑する。


 試合開始と同時に、六人の男たちが俺の周囲を取り囲んだ。

 バトルロイヤルのはずが、完全に六対一という様相だった。


「はっ、なぁに、安心しろや。テメェを全員でボコって潰してから、あらためてバトルロイヤルは始めるからよ」


 モヒカンヘッドが答える。

 モヒカンは木製の巨大な棍棒を肩に担ぎ、悠然と俺を見下ろしていた。


 ほかの男たちも、それぞれ木剣や、槍代わりの木製の六尺棒など、思い思いの木造の武器を手にしている。

 それらは大会側から支給された武器で、俺も今は木剣を手にしていた。


 ……うーん、しかし何だな。

 こう俺だけ悪者扱いされると、本当に悪役ヒールを演じたくなってくるな。


 うずうず。

 いいか、やっちゃうか。


「へぇ、そうか──ってことは、六人掛かりなら俺に勝てると、あんたらはそう思ってるわけだ」


「……ああ?」


 俺の思い切った挑発に、モヒカンはじめ周囲の男たちが色めき立つ。

 俺の背後にいたスキンヘッドの男が声を上げる。


「……おいおい兄ちゃん、俺たちをその辺のチンピラか何かと勘違いしてんじゃねぇのか? ここにいるのは全員、Bランク以上の冒険者だぜ」


 そう言って、六尺棒をこれまた肩に担いで、へらへらと俺を見下ろすスキンヘッド。

 ……いや、見た目はどうにも、その辺のチンピラにしか見えないんだけどな。


 俺はステータス鑑定のスキルを発動して、周囲の男たちのレベルを見て回る。

 すると、そいつらのレベルが、軒並み7~10程度であることが分かった。


 確か、アイヴィやターニャのレベルが11だったから、確かに粒揃いではある。

 あのどう見てもザコっぽいモヒカンヘッドでも、8レベルある。

 人は見た目によらないもんだな。


 だが──


「いや、勘違いなんかしてないさ。ただ、その上で言ってんだよ──俺にとってお前らは、その辺のチンピラと変わらないザコだってな」


 そう言って、ニヤリと笑ってやる。

 やばっ、悪役ヒールプレイ超楽しい。

 クセになりそう。


 しかし男たちはあきれた様子で、俺をあざ笑った。


「……はっ、ダメだこりゃ。おいお前ら、このガキには、現実ってものを思い知らせてやらなきゃ、分からねぇみてぇだ」


「そうみてぇだな」


 そう言ってどっと笑う男たち。


 ……あ、いかん、ちょっと自信がなくなってきたぞ。

 ホント俺勝てるのかな、こいつらに。

 数字上は大丈夫だと思うんだが……。


 うーん、よくないな。

 とりあえず、強そうなこと言って自分を奮い立たせよう。


「御託はもういいから、そろそろ掛かって来いよ。俺さ、こんなのさっさと終わらせて、早く観客席に戻ってまたイチャイチャしたいんだよ。──それともアレか、お前ら全員、本当に口だけのチンピラか?」


 その俺の挑発は、主に真ん中に挟んだ言葉が効果的だったらしい。

 ビキビキと額に青筋を浮かべた男たちが、一斉に雄たけびを上げた。


「おいお前らぁ! こいつぶっ殺すぞ! 半殺しだ! 二度とイチャイチャできない体にしてやれ!」

「おぉぉおおおっ!」


 男たちの息は、なぜだかピッタリだった。

 俺を取り囲んだ男たちが六人全員、同時に俺に向かってくる。


 だが──


 それは、スローモーションだった。

 男たちの一歩が、戦闘モードに入った俺の体感では、二秒ぐらいに感じる。


 あ、良かった。

 やっぱり雑魚じゃんこいつら。


 俺は、ぱぱぱっと走って回り、全員の首筋に背後から手刀を入れてゆく。

 万一に殺してしまわないように、攻撃制御ダメージコントロールのスキルを乗せるのを忘れない。


 俺が緊張を解くと、体感時間が正常に流れ始めた。


「がっ……!」

「ぐはっ……!」


 男たちが全員、バタバタと倒れて行く。


 そうして、フィールドに立って残ったのは、俺だけになった。


 沸いていた闘技場が、一気にしんと静まり返った。

 そのとき俺は、はたと気付く。


「あ、しまった……これじゃ木剣の意味ないじゃん」


 俺のつぶやきと同時に、試合終了の銅鑼が鳴った。

 割れんばかりの歓声が巻き起こった。


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