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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第五章 剣闘祭、あるいはセクハラ無双と奴隷の首輪
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控え室(ムサい)

「はっ、ここはどこっすか……!?」


 フィフィが我を取り戻したのは、剣闘祭の選手控え室だった。

 あまり広くない部屋に、二十を超える数のムサい男たちが詰められている。


 中には可愛い女の子も一人だけいたが、その子は武器を抱えて壁際で目をつむり、近寄りがたい雰囲気を発したりしていた。


 水色の髪をツインテールにした美少女なのだが──妙に気になるな。

 ひょっとしてあんな若さで、アイヴィより強かったりするんだろうか。


 一方、俺の胸元からひょっこり顔を出したフィフィは、きょろきょろと周囲を見渡す。

 そして、


「……汗臭いっす」


 一瞬で萎えたようだった。

 再び俺の胸元に、隠れるように戻ってゆく。


 そしてフィフィは、俺の胸にぴったりと張りつくと、すんすんとにおいを嗅いできた。


「ん、やっぱりご主人様のにおいがいいっすね」


「よし、黙ろうか変態妖精」


「以前にも言ったっすけど、変態にも市民権を要求するっす。ご主人様だってそのほうがいいはずっす」


「加害者としてならば賛成だが、被害者としては御免被りたい」


「傍若無人!? ご主人様が不良になっちまったっす!」


 フィフィとそんなやり取りをしていると、ムサい男たちの中から一人、金髪のイケメンが俺を見つけ、近寄ってきた。


 しかしイケメンと言っても、ムサい男たちの中から現れると、やっぱりムサい。

 早くも観客席という名の楽園に帰りたくなってきた。


 金髪のイケメン──Sランク冒険者のヴァイスは、俺の前までくると、その髪をふぁさっとかき上げてキメ顔を作る。


「やぁ野良犬。怖気づかずにこの場に来れたこと、それだけは褒めてやろう」


 そう言って、きらんと歯を光らせる。

 相変わらず、神がかった鬱陶しさだった。


 しかし──俺は周囲のムサい男たちを見渡す。

 これだけ参加者がいる大会だ。

 ヴァイスはこの街を拠点にして活動しているみたいだから、ほかに話す相手ぐらいいそうなものだが……


「お前ひょっとして、友達いないの?」


「何故そうなった!? ──まあいい、貴様は僕が直々に叩きのめしてやるのだからな。どうやら別のグループのようだが、僕と当たるまでに敗退してくれるなよ。ハーッハッハッハ!」


 ヴァイスは高笑いとともに、俺に背を向けて去っていった。

 周りのムサい男たちが、迷惑そうな顔でイケメンを見ていた。

 やっぱ友達いなさそうだなぁあいつ……。


「それはそうと、グループがどうのとか言ってたな。どこかに対戦表でも貼り出されてるのか?」

 

「あ、アレじゃないっすか?」


 フィフィが指さした方を見ると、壁のうちの一面に、貼り紙らしきものがあるのが見えた。

 ムサい男たちが群がっていたせいで気付かなかった。

 近付いて見てみることにする。


 それは案の定、対戦表だった。

 それを見てみると、参加者全員がA、B、C、Dという四つのグループに分けられているようだった。

 それぞれのグループには六人あるいは七人ずつ名前が書かれていて、俺の名前はBグループに記されていた。


 付記されている説明を読むと、どうやら剣闘祭には予選と準決勝、決勝があるらしく、このうちの予選は、グループの全員が一堂に会してのバトルロイヤルということになるらしい。

 つまり俺だったら、Bグループの全員とバトルロイヤルをして、最後まで残れたら準決勝進出というわけだ。


 ちなみにだが、ヴァイスの名前はCグループに記入されていた。


 そしてもう一人、Aグループに見知った名前があった。

 そこには、「パグス」と書かれている。


 そのとき控え室の扉がバンと開いて、筋肉ムキムキの巨漢が窮屈そうに頭を屈め、中に入ってきた。


「いやあ、危ない危ない! ギルドの急な仕事が立て込んで、間に合わなくなるかと思ったわい!」


 巨漢はスキンヘッドで長い白髭を蓄えた爺さんだった。

 言わずと知れた、この王都の冒険者ギルド長、パグス爺さんである。


 ……うわぁ、この爺さんも出るのかよ。

 いい爺さんなんだが、どうもあの勢いには気後れするんだよな。


 パグスの爺さんは、そこにいるムサい男たちと、片っ端から荒っぽい挨拶を交わしてゆく。

 人望のあるギルド長って感じだ。


 そして爺さんはやがて、俺のところにもやって来た。


「おう小僧、やっぱりお前も出るのか。カイルとか言ったな、ギルド報告ではお前、とんでもないことをしでかしとるみたいじゃないか──何をどうやっておるのかはしらんが、今日は直接の喧嘩じゃ、メッキなら剥がれるぞ? ま、楽しみにしておるからの!」


 そう言ってバンバンと俺の背を叩き、また次の男に挨拶しに行った。

 うーん、メッキと言われてもなぁ……。




 そうこうしていると、やがて試合本番の時間となった。


 闘技場への扉が開かれ、薄暗い控え室に、まぶしい外の光が入ってくる。


「さて、それじゃ肩慣らしといくかの」


 パグス老をはじめとして、七人の男たちが、光の向こう、闘技場へと踏み出してゆく。

 彼等がAグループの連中なのだろう。


 Bグループの俺の出番はまだのようだ。

 俺は観客席に戻りたいと思いながら、しょうがないのでそのまま控え室で待つことにした。


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