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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第五章 剣闘祭、あるいはセクハラ無双と奴隷の首輪
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観客席でイチャつくのはどうかと思います

 剣闘祭当日。

 王都のメインストリートには出店や屋台が立ち並び、いかにも祭りらしい雰囲気と喧騒が街じゅうを覆っていた。


 しかし祭りと言っても、メインの出し物は神輿みこしでも、踊りの行列でもない。


 王都のメインストリートを少し外れたところのとある一角には、円形の闘技場コロセウムが設えられている。

 俺たちは今、その闘技場に来ていた。

 ちなみに「俺たち」というのはもちろん、俺とティト、パメラ、アイヴィの四人のことである。


 なお闘技場は、ざっくり言ってプロ野球の球場のような構造だった。

 中央部にグラウンドがあって、その周囲にすり鉢状に観客席がある。

 俺たちが今いるのは、その観客席の一角だ。


「なぁ、ダーリンって選手として出場するんだろ。ここにいていいの?」


 俺の隣に座ったパメラが、出店で買ってきた焼き鳥をかじりながら聞いてきた。

 確かにそろそろ準備しないといけない時間だった。


 それはそうと、パメラの持っている串がおいしそうだったので、俺は首を伸ばしてそれにパクッとかぶりつく。


「あーっ! ダーリン何すんだよ! あたしのー!」


「もぐもぐ……うまいな」


「うまいなじゃねーし! じゃあダーリンの持ってるオーク豚の串焼き、あたしももらうぞ!」


「あっ、こら!」


「もぐもぐ……うまひ」


 俺が持っていた豚串の、四つ刺さっていた肉のうち、三つをいっぺんに持って行かれた。

 くそっ、パメラのやつ、やってくれる……


 そうしてパメラといがみ合っていたら、逆側からくいっくいっと、ティトに袖を引っ張られた。


「カイルさん、私とも、食べさせ合いっこ……」


 拗ねたような上目遣いでそう言ってくるティトに、俺のハートはがっちりつかまれた。

 むしろティトを食べてしまいたかった──いや、そうじゃなくて。


 俺は残っていたオーク豚の串焼きの最後の一切れと、ティトの持っているイカ焼きとで、お互いにあーんで食べさせ合う遊びをする。

 リア充だけに許される、高度で至高な遊戯であった。


「うん、うまい」


「えへへ……おいひいです」


 にこにこしながら肉を頬張るティト。

 やっぱりティトを食べちゃいたいと思うけど、どうにか我慢。


 すると今度は、俺の背後の席にいたアイヴィが、何やら身を乗り出してきた。


「ね、ねぇカイル、ボクもそれ、やりたいなー、なんて……」


 身を乗り出しながら、もじもじしている。

 器用だなおい。


「いや悪いけど、俺の豚串、今ティトが食べたのでラストだわ」


「がーん!」


「パメラが三つ食ったのが悪い。文句ならパメラに言ってくれ」


「うううっ……こうなったら、パメラちゃんから口移しでもらうしか──」


「うわっ、ちょっ、アホかお前! やっ、やめろっ……!」


 横でパメラとアイヴィが格闘を始めた。

 アイヴィが少し優勢で、パメラが徐々に押し倒されてゆく。


 頑張れパメラ。

 骨は拾ってやる。


 俺は隣のバトルを無視し、何となく寄りかかってくるティトの肩を抱きながら、闘技場のフィールドのほうを眺める。


 ……幸せだなぁ。


 もう剣闘祭なんて、出場しなくてもいいんじゃないかな。

 きょうはここでずっと観戦していたほうが、よっぽど充実してる気が──


 なんて思っていたら、視界の上から蜘蛛の糸を伝うように、ジト目の妖精がすーっと下りてきた。


「最近のご主人様はどーしてそう、ちょっと目を離すとイチャコライチャコラしだすっすかねぇ」


 フィフィだった。

 俺の目の前の空中で、あぐらをかくような姿勢でふよふよと静止する。

 俺はそのフィフィの姿を見て、率直な感想を述べた。


「フィフィはもうちょっと、妖精の愛らしさというものをキープする努力をすべきだと思う」


「う、うるさいっす! 怠惰の権化であるご主人様にまで、努力とか言われたくないっす!」


 反応がガチだった。

 結構気にしていたようだ。


「怠惰とは失礼な。ここ一週間は、毎日ずっーと魔獣の森でバトルして、レベル上げをしていただろうが」


「そ、それはそうっすけど……あれ、ひょっとしてうち、ご主人様より怠け者ってことっすか? ……そんな、ありえないっす……」


 フィフィはひどくショックを受けたようだった。

 Σ(゜д゜ノ;)ノ ←こんな顔になったまま、空中で硬直している。


 俺はひとまず、その妖精を引っつかんで胸元にしまった。


「さて──まあ、この一週間を無駄にするのも嫌だし……名残惜しいけど、行くとするかな」


 俺は抱いていたティトの肩をそっと離し、ゆっくりと立ち上がる。


「あ、あのっ、カイルさん……!」


 そうして選手控え室に向かおうとした俺を、ティトが呼び止めた。

 何かと思って振り向くと、ティトが顔を真っ赤にして視線を泳がせ、もじもじとしていた。


「あの、カイルさん……もう一度ちょっとだけ、しゃがんでもらってもいいですか……?」


「ん……? いいけど」


 俺はティトに言われるままに、ティトの前にしゃがみ込む。


 するとティトは、座ったまま少し背伸びをして、俺のほっぺたに──ちゅっ。

 キスをしてきた。


「……い、行ってらっしゃいのキスです。あの、えっと……信じてます」


 ティトはそう言って、再びちょこんと自分の席に座った。

 うちの彼女は最高だった。


 これが家だったら、確実に悩殺されて一直線だった。

 この場にあっても、一瞬周囲が見えなくなった。

 マジヤバである。


「──ああ、行ってくる。余裕で勝ってくるから、安心して見てろ」


 俺は内心最高潮にドキドキしながら、できるだけカッコつけてその場を立ち去った。

 取っ組み合ったアイヴィとパメラが動きを止め、ぽかーんとしながら俺を見送っていた。


また長期で更新滞ってしまって申しわけないです。


ちょっとシリアス成分が補充したくなったので、これの更新サボってシリアス系のファンタジー短編作品書いてました。

「シリアスも嫌いじゃないよ」という方は、よろしければこちらもどうぞご覧になってくださいませませ。m(_ _)m


『少年魔術師は男の娘!? いいえ、真面目な冒険ファンタジーです。』

http://ncode.syosetu.com/n8489dj/


この作品も、休んだ分だけいいネタが浮かんだので、自信を持って剣闘祭編をお送りいたします!

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