うちのわんこがふてました
「ぶー……」
夕食の席。
食卓のテーブルには、俺とティト、パメラとアイヴィ、おまけでフィフィがついて、食事をしていた。
しかしその席で、パメラがへそを曲げていた。
白身魚のソテーをフォークでいじりながら、ぶすったれた顔で食事をしている。
「パメラちゃん、どうしたの? 何か面白くないことでもあった?」
アイヴィがそう聞いても「別に」としか答えない。
困ったアイヴィは俺のほうを見てくるが、原因がだいたい分かっているだけに、俺も答えようがない。
俺は助け舟を求めてティトのほうを見るが、ティトも所在なさげに、指先で頬をかいている。
まあ、そりゃそうだろう。
「あー……パメラ?」
「何、ダーリン。モブに何か用?」
パメラは綺麗にふて腐れていた。
だが、これは全面的に俺が悪い。
「すまん、あのときは、俺もどうかしてたんだ」
「…………」
パメラはフォークの先に刺した白身魚を頬張りながら、俺のほうにちらっと視線を向けてくる。
別にパメラのご機嫌取りをするつもりはないが、どうかしていたのは事実だ。
「……別に、ダーリンは謝るようなこと何もしてねぇよ。あたしが勝手にふて腐れてるだけだ。しばらくしたら忘れるから、放っといてくれ」
ふて腐れたパメラは、取りつく島も、にべもなかった。
うーん、こいつ何だかんだ、根っこのところがスタンドアローンなんだよな……。
「……ねぇ、フィフィちゃん。いったい何がどうなってるの?」
「さあ。うちも席をはずしてたから、分からないっす。まあアレっすね、見た感じ、痴情のもつれっすよ」
「痴情のもつれかぁ……いいなぁ、ボクももつれたい……」
横ではアイヴィとフィフィが、無責任な会話を繰り広げていた。
ていうか何だ、もつれたいって。
しかしアレだ、パメラはしばらくしたら忘れるから放っておけと言うが、それも何か嫌だ。
もう完全に自己満足でしかないんだが、ちょっとパメラに何かをギブしてやりたい気分がある。
「パメラ、何でもいい、何か俺にできることないか?」
「……ダーリン、そういうの嫌われるぜ。点数稼ぎだろ」
「パメラ相手にそんなことするつもりはないよ。ただ、俺が何かしたいんだ」
「…………」
パメラはミニトマトをフォークで刺して、口に運ぶ。
それを口の中でもぐもぐして、飲み込んでから、パメラは俺の目を見ずに言った。
「……海。あたし、海に行ってみたい。見たことねぇんだ、生まれてからこっち。師匠から話だけ聞いて、一度見てみたいって思ってた。……でもホント、ダーリンは謝ることなんか何もし」
「よし、海に行こう! みんなで行こう! 是非行こう!」
俺はパメラの言葉を遮り、立ち上がって力説した。
その俺に、パメラに対するギブの気持ちなどは、ほんのちょびっとしか残っていなかった。




