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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第三章 赤の剣士、あるいは朝チュンと鬼畜とぬるぬる地獄
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よく頑張った

「ひっく、ひっくひっく……」


「パメラちゃん、大丈夫……きっと大丈夫だから。今は怖いけど、カイルさんは、本当はきっと優しい人だよ……きっと、きっと……」


 パメラとティトが、ぬるぬるの地面の上で、全身ぬるぬるになった身を寄せ合うように座り込んでいた。

 パメラは完全に泣きじゃくっていて、それをなだめるティトは、むしろ自分に言い聞かせるように言葉を発していた。


「……あー、二人とも」


「ひっ……!」


「あっ……あ……」


 俺が声をかけると、パメラはびくっと反応して瞳の光彩を失い、ティトは恐怖の大魔王を見るような目で俺を見上げてくる。

 う、うーん……おかしいな、なぜこうなったんだろう。


 そして、その二人をかばうかのように、赤い人影が割り込んでくる。

 彼女──アイヴィは、ティトとパメラの前に立って二人を守るように抱き、俺に背を向けたまま首だけを向けて行ってくる。


「これ以上、この子たちに何をさせるつもりだ、悪魔め! もう十分だろう! これ以上虐げるというのであれば、ボクが相手になる! ──さあ、先にボクをやるがいい!」


「あー、いや……そろそろ帰ろうかって、言おうと思っただけなんだが……」


 困った、どうも彼女たちの中で、俺のキャラが変な風に出来上がってしまったらしい。

 うーむ、ままならんものだな。


 ──朝に『ぬるぬるの森』に入った俺たちは、とにかく片っ端から巨大ナメクジを撃破していった。

 主に俺が弱らせてから、ティトやパメラに叩かせるという戦法を取り、かなり効率よく二人の経験値を稼ぐことができたと思う。


 そうやってどんどん奥へと進み、半日ほどその作業を続けると、「生命感知」レーダーを使ってももう反応が見つからなくなる程度に、森にいる巨大ナメクジを殲滅せんめつしていた。

 ちょっと生態系とか壊しちゃったんじゃないだろうかと思うが、その辺は気にしても仕方ないので、あえて見ないことにする。


「……帰、る……?」


 瞳から光を失い、ティトとアイヴィに抱擁されたパメラが、どこかあらぬ方を見ながら声を発する。


「じゃあ……あたしもう、ぬるぬるしなくていいの……? 服の中まで……下着の中まで……もうぬるぬるの冷たいの、入ってこない……?」


「あ、ああ」


「うっ……帰れる……やっとおうちに帰れる──うわあああああんっ!」


 パメラは天に向かって、大声で泣き出した。

 そのパメラを、ティトが「よかったね、よかったね」と言って抱きしめている。


 その二人の頭を、アイヴィがよしよしとなでているが、あれはぬるぬるをなすりつけているだけじゃないだろうか。


 まあ、よくわからないが、感動のシーンのようだったので、結果オーライとしよう。

 お疲れさま、ということで。




 ちなみにこの荒行で、二人のレベルがどのぐらい上がったかというと──


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:ティト

 種族:人間

 性別:女

 クラス:メイジ

 レベル:6(+3)

 経験値:223,200/355,000


 HP:95(+30)

 MP:54(+18)


 STR:12(+4)

 VIT:19(+6)

 DEX:24(+7)

 AGL:23(+7)

 INT:33(+10)

 WIL:27(+9)


 スキル

 ・獲得経験値倍化:4レベル

 ・炎魔法:1レベル

 ・水魔法:1レベル

 ・風魔法:2レベル

 ・光魔法:1レベル


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:パメラ

 種族:人間

 性別:女

 クラス:グラップラー

 レベル:4(+1)

 経験値:96,240/130,000


 HP:80(+15)

 MP:30(+6)


 STR:17(+3)

 VIT:16(+3)

 DEX:11(+1)

 AGL:24(+4)

 INT:10(+1)

 WIL:15(+3)


 スキル

 ・獲得経験値倍化:2レベル

 ・格闘マスタリー:1レベル


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ──と、こんな感じで、ティトが3レベル上昇、パメラが1レベル上昇と、レベル面でティトがパメラを完全にまくっていた。

 誰のせいかはさておき、今回圧倒的に苦労していたのはパメラのほうだった気がするが……生まれついての素質の差というのは、かくも残酷なものかと思い知らされる。


 そして帰り道、廃人のように光を失った瞳でとぼとぼ歩くパメラがひどく愛おしくなって、俺はそのぬるぬる姿の少女をぎゅっと抱きしめた。


「ごめんな……ごめんな、パメラ……! お前はよく頑張った……頑張ったよ……!」


「あっ……えへー……いつものダーリンだぁ……」


 虚ろな目をしたパメラは、まるで幼女のようにぎゅーっと、俺に抱き着き返してきた。

 我ながら、何の茶番かと思った。


「……こ、これが飴と鞭の使い方、調教の極意だというのか……なら、ボクも同じことをすれば、彼女たちと……むふっ、むふふっ……」


 そしていつも通り、アイヴィの発言は危険だった。

 本当に調教されないといけないのは、こいつだと思った。


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