表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第三章 赤の剣士、あるいは朝チュンと鬼畜とぬるぬる地獄
31/121

そんな言葉、使っちゃいけません!

「さあ、ボクのことを好きにするがいい!」


 赤髪の美人のお姉さんは、そう言ってうちの庭に、鎧を着たまま仰向けに大の字になった。

 まるでおなかを見せた犬のようだった。


 ……さて、このメンドクサイ人を、どうしてやろうか。


「本当に、好きにしていいのか?」


「……あ、ああ! ぼ、ボクだって負けた以上、お前のような鬼畜男に身をささげる覚悟はできている」


 捧げるなよ、と突っ込みたいが、さておき。


 一応こっちもリスクを払ったんだし、それなりの要求をしたい気持ちはあるんだが、正直これといったものが思い浮かばない。

 何でもする、と言われても意外と困るもんだな……えーっと、


「とりあえずお前、俺の仲間パーティメンバーになれ」


 そんなことしか、思い浮かばなかった。


 Aランク冒険者がパーティに一人でもいれば、Sランクのクエストまで全て受領可能になる。

 その辺の高難易度クエストに頻繁に手を出すかどうかはともかくとして、クエスト選択の自由度はあるに越したことはない。


 ちなみに、地道にクエストをクリアして冒険者ランクを上げていこうとすると、そこに至るまで最短でも数ヶ月という単位の期間がかかる。

 そこをブレイクスルーできるというのは、こっちの利益としては割と大きい。


 俺の提案を聞いたアイヴィは、地面に投げ出していた上半身をぐっと起こした。

 そして、驚愕の表情を浮かべ、口を開く。


「なっ──それはボクに一生、お前の(ピーッ)奴隷になれということか!」


「言ってねぇよ!?」


 素で突っ込んでしまった。

 俺そんなこと、一言も言ってないよね?

 何なのこの人……。


「くっ……だが、好きにしていいと言ったのは、ボクのほうだ。いいだろう、今日からボクは一生、キミの(ピーッ)奴隷だ。……ふふっ、ボクの想像を、はるかに超えてくる……さすがの鬼畜ぶりだね」


 頼むから俺の言葉を聞いてほしい。

 俺は助けを求めるように、ティトのほうを見た。


 俺と目が合ったメイドさん姿のティトは、「無理です。話の通じる相手じゃないです」と言うように、哀しそうに首を横に振った。

 俺は絶望するしかなかった。


 一方、その俺の服の裾を、後ろからくいっ、くいっと引っ張ってくる者がいた。

 パメラだった。

 そのミニスカメイド服姿の小柄な少女は、まっすぐな瞳で、俺に聞いてくる。


「なあダーリン、(ピーッ)奴隷って、何?」


「……お前は知らなくていい」


 うちの純真なアホの子に、変な言葉を教えないでほしい。

 しかし、パメラは引き下がらない。


「えーっ! 何だよ、教えてよ! (ピーッ)奴隷って何なんだよー!」


「うるさい! お前は知らなくていいの!」


「やーだーっ! 教えてー! (ピーッ)奴隷教えてよーっ!」


 俺の胴にしがみついて、教えてくれるまで意地でも離さないという姿勢を取るパメラ。


 そのとき、家の庭の背の低い塀の向こうを、こっちをちらちら見ながらひそひそ話をする、奥様方の姿が通り過ぎて行った。


 俺の社会的地位は、今日もこうして、墜落の一途を辿ってゆくのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ