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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第三章 赤の剣士、あるいは朝チュンと鬼畜とぬるぬる地獄
27/121

美少女メイドは全男子の夢、異論は認めない

 その日の昼前頃。


 俺は、朝起きたときに最初にいた部屋の、例のキングサイズベッドの上に横たわっていた。

 そして、その俺の上に、メイド服姿のパメラがまたがっている。


「……ん、なにダーリン? ここがいいの?」


「あ~、そこそこ。あー、ヤバい……たまらんわぁ……」


 ベッドの上でうつぶせになった俺は、その俺の尻の上に座ったメイド服姿の美少女から、マッサージを受けていた。

 背中をぐりぐりされたり、肩をまれたりしている。


 パメラのマッサージの手腕は、おじいちゃんの肩揉みをする孫といったぐらいのつたないものだが、この際技術は二の次だ。

 大変下世話な話だが、ミニスカメイド服の美少女に乗っかられて、あちこち揉んでもらっているだけで、疲れなんて溶けていくというものである。


 そう、ミニスカメイド服である。

 パメラのそのチョイスは、パメラのくせにグッジョブと言わざるを得なかった。


「うー……パメラちゃん、ずるい……」


 その俺とパメラの姿を、ベッド脇に立って見ているのは、これまたメイド姿のティトであった。

 こちらは古式ゆかしい、ロングスカートのメイド服である。


「んっ、んっ……! ──え、ずるいって、何が?」


「だって……カイルさんのメイドに任命されたの、私なのに……。それ、私がやりたかったのに……」


 そう言ってねているティトである。

 スカートを両手でぎゅっとにぎっているその姿には、これまた見ているだけで癒されるものがあった。




 ──朝食後、俺がティトにメイドさんになってほしい旨伝えると、ティトは二つ返事でオーケーを出した。

 そして、まずは恰好かっこうからと、俺たちは街の服飾店にメイド服を買いに行った。


 その際、「あ、それあたしも行く!」と言って、パメラもついてきた。

 そして、何故かパメラまで、自分用のメイド服を購入したのだ。


 ちなみに服飾店の店長は、大のメイド服フェチで、その店にはかなりの種類のメイド服が陳列されていた。

 値はどれも金貨数枚程度で、そこそこ質が良くて高価な品だったが、ジャイアントアント討伐の報酬で金貨二百二十枚を獲得していた俺たちに死角はなかった。


 屋敷に戻って、さっそく着替えに入るティトとパメラ。


 俺がリビングでお茶をしながら待っていると、先にパメラが戻ってきた。

 ミニスカートのメイド服姿になったパメラは、「どう、ダーリン、似合う?」なんて言って、その場でアイドルよろしく、くるりと一回転してポーズを決めてきた。


 悔しいが、めちゃくちゃ可愛かった。

 その場でなめ回したくなるぐらい可愛かった。


 でも、パメラに可愛いと言うのは何か負けた気がするので、「馬子まごにも衣裳いしょうだな」とコメントすると、「ぶー、何だよそれー」と拗ねた。

 その姿もまた可愛く、俺も末期だなと思った。


 次にリビングに現れたのは、ティトだった。

 こちらは恥じらいをもって、ほおを赤らめもじもじしながら「……ど、どうですか、カイルさん?」なんて聞いてきた。


 清楚せいそな感じのするオールドファッションなロングスカートのメイド服は、ティトによく似合っていて、大変にブラボーだった。

 仕草まで含めて、パーフェクトだった。


 俺は「すごく可愛いよ、ティト」なんて、傍で聞いていたら蹴り飛ばしたくなるようなセリフを、イケメンスマイルで言ってやった。

 ティトは「はぅぅ……」などと言って、顔から湯気を噴いていた。


 それを見て、パメラが横で頬を膨らませていた。

 「なんだよ、ティトっちばっかり褒めて」なんてふて腐れたパメラは、なんか素直に可愛かった。


 「可愛い」がゲシュタルト崩壊しそうだった。

 俺のパメラがこんなに可愛いわけがない。


 パメラがティトに張り合い始めたのは、そのせいかもしれない。

 「あたしもメイドさんやりたい!」なんて言って、参戦してきた。


 ──そうして今、ベッドの上で、俺の上に跨っているという次第だった。

 要はパメラにとって、遊びの一環なんだろう。


 それが証拠にパメラはすぐに飽きた。

 ティトからずるいと言われたパメラは、


「ん、じゃあティトっち代わってよ。これ結構疲れる」


 なんて言って、さっさとマッサージをやめて、ころんとベッドの上から降りてしまった。


「えっ? ……あ、う、うん」


 ティトは、唐突に自分の番が来たので、心の準備ができていなかったようだ。

 恐る恐るという様子でベッドの上に乗り、すーはーと深呼吸をしてから、


「……それでは旦那さま、失礼いたします」


 そう慎ましやかに言って、やんわりと俺の上に乗っかってきた。


 ──だ、旦那さま……だと?

 こ、こいつ……予想外の攻撃を……!


 そしてティトは、俺の背中や肩、腰などに対して、精魂込めた感じのマッサージ攻撃を仕掛けてきた。


「んっ……はぁっ……旦那さま……いかがですか……?」


 相当力を込めているのか、ティトの吐息が荒い。

 ……おかしいな、どうしてこうこの子がやると、何かとエロくなるんだろう。


「んっ……ふぅっ……どう、ですか、旦那、さま……!」


 はい、ヤバいです。

 何がとは言わないけど、何かとヤバいです。


「てぃ、ティト……! ──ストップ、ストーップ!」


「はぁっ、はぁっ……はい? ──す、すみません旦那さま! 何か至らぬところが──」


 お願い、その設定でその話の進め方もやめて!

 よく訓練された俺なんかは、それだけでもう先の展開、妄想しちゃうから。

 アラホラサッサー。


 ──とまあ、そんな風にメイドさんドリームを堪能していた俺だったのだが、そのとき。


「たのもーう!」


 屋敷の外から、大きな声が聞こえてきた。

 ややアルト寄りだがよく通る、女性の声だった。


 ……はて、何だろう。

 聞き覚えのない声だが……。


 俺はひとまず起き上がろうと、ティトに声をかけようとした。

 しかしその前に、ティトの小さなつぶやきが、聞こえてしまった。


「チッ……これからがいいトコだったのに……」


 聞こえてきた舌打ちは、幻聴だと思いたかった。


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