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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第二章 巨大蟻退治、あるいは少女たちのメイドさんご奉仕を賭けた戦い
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報酬はおいくら万円?

 三身一体から三体分離を果たした俺たちは、その後、各々で風呂に入りなおした。

 俺は男湯に移り、ちゃんと装備や服を脱いで、ちゃんとぬるぬるを洗い流し、ちゃんと湯船に浸かる。


「はぁ~」


 湯船のへりに背中を寄りかからせ、少し熱めのお湯を堪能する。

 ……いやぁ、一仕事した後の風呂は、最高だな。


 男湯も、今の時間はほとんど利用客がいなかった。

 俺以外には、おっさんが二人、おじいちゃんが一人だけだ。


 ──と、そのとき。

 女湯のほうから「きゃあっ!」という悲鳴が聞こえてきた。


 あー……あれはティトの声だな。


 ちなみにこの露天風呂、男湯と女湯は壁一枚で仕切ってあるだけという安心設計である。

 防音なんてあったもんじゃない。


「ちょっ、ちょっとパメラちゃん、やめっ……!」


「おうおうティトっち、相変わらずええ乳しとんのぉ。ほーれ、ほーれ」


「やんっ、やめてよぉっ……!」


 女湯方面から聞こえてくる、二人のうら若き乙女の声。


 ……何をやっとるんだあいつらは。

 おっさんたちもおじいちゃんも、気になって仕方ないみたいじゃないか。


 ……え、俺?

 いや、まあ、うん……ねぇ?

 ちょっとぐらい想像しちゃうのは、しょうがないと思うんだ、うん。




 風呂に入ってさっぱりした。

 服も新しいものを買ってきて、濡れたものは絞って荷物にしまっておく。


 ちなみに、服を買いに行くのもいろいろ大変だったのだが、そこはどうでもいいので省略。

 とりあえず、三人分の替えの衣服一式を買うのに、合計で金貨五枚ほどが必要になったということだけ付け加えておく。

 この辺は風呂代含め、あとで各自の報酬から天引きだな。


 そうして風呂上がりのほくほく状態で冒険者ギルドに行った俺たち。

 酒場エリアでティトやパメラと軽く酒やさかなをつまんでいると、薄汚れた格好で疲れた感じのぽっちゃりさん一行が帰って来た。


 ぽっちゃりさんは、いい感じに談笑している俺たちを見て、露骨にイラッとした顔を見せる。


「なあお前、僕ちんのことバカにしてるだろ?」


 心外である。

 一度は尊敬の念すら持ったというのに。


「……ふんっ、まあいい。勝負に勝つのが無理と分かったら、せめて最後の楽しいひとときを送りたいというお前の気持ちも分からんではないからな。ぐっふっふ……」


「なあダーリン、こいつ何言ってんの?」


「豚は豚小屋に帰ってもらえませんかね?」


 一人で話を進めるぽっちゃりさんに、うちの娘たちの波状攻撃が突き刺さる。

 ふらっとよろめくぽっちゃりさん。

 しかし、すぐに持ち直す。


「ぐふふ……お前たちも強がっていられるのは今のうちだぞ。明日からは僕ちんのものになるのだからな」


 魔王のように両手を広げ、手指をわきわきさせるそのぽっちゃりさんの姿に、ぞぞぞっとした様子で、椅子ごと俺の方に体を寄せてくるパメラとティト。


「ダーリン、やだよ~。ちょっと想像するだけで怖いよ~」


「と、屠殺とさつ……早く屠殺しないと……」


 ……言葉と仕草だけでここまで人を恐怖させるとは、やはりこのぽっちゃりさん、侮れない。


「ふんっ、まあいい。で、お前たちは何体のジャイアントアントを狩ったのか、言ってみたまえ。駆け出しの冒険者なりに、せめて五体ぐらいは倒せたのだろうな、んんっ?」


 ぽっちゃりさんが魔王をやめ、本題を切り出してきた。


 ……えっと、どうなんだろう。

 クイーンは数に入れていいんだろうか。

 とりあえず五体の護衛は入れてもいいと思うんだが……。


「まあ、百十体かな」


「そうかそうか、百十体か。まあなかなか頑張った方だと思うが、十四体倒した僕ちんたちには──ってうそつけえええええっ!?」


 相変わらずキレのあるノリ突っ込みだった。

 やはりこのぽっちゃりさん、デキる男である。


 俺は、信じてくれないぽっちゃりさん一行を連れて、ギルドの受取・支払カウンターへ。

 昨日と同じ新人ギルド員ちゃんの前で、まずはぽっちゃりさんが十四体分の巨大蟻の大顎を引き渡す。


「それじゃあ、ジャイアントアント十四体の討伐で、報酬は金貨二十八枚ですねー。お受け取りください」


「……ふんっ、こんなはした金をもらっても、仕方ないのだがな。まあこいつらに払う賃金の足しぐらいにはなるか」


 金貨を受け取りながら、そうボヤくぽっちゃりさん。

 この人は何のために冒険者やってるんだろう……道楽か、名声目当てか、そんなところなのかね。


 で、次、俺の番。

 無限収納インフィニットバッグから、討伐証明の巨大蟻の大顎を、地面に並べてゆく。


 延々と大顎を取り出す作業。

 気が付くと、いつの間にか周囲に、見物人の冒険者とギルド職員とで、人だかりができていた。


 ですよねー。

 ぽっちゃりさんも俺たちも、目立つもんねー。

 ……やだなぁ、目立ちたくないのに。


 まあでも、ここまで目立っちゃったら、もうあとは一緒だ。

 ついでにクイーンの討伐証明として、鎌状の前肢と、ひときわ大きな顎も取り出して、ギルドに受け取ってもらう。


 新人ちゃんは、事務的に数を確認してから、


「はい、全部確認しましたっ。──クイーンに関しては、また後日、別途の討伐報酬として検討するそうです。ひとまずはジャイアントアント百十体分の討伐で、金貨二百二十枚の報酬ですね。どうぞお受け取りください、カイルさん」


 そう言って、大量の金貨をカウンター上に出して見せる。

 俺はそれを数えつつ、財布袋に入れる。


 金貨一枚が一万円と考えれば、二百二十万円相当か。

 ティトやパメラと分配しても、しばらく生活の心配はしなくて済みそうだな。


 ちなみに、ぽっちゃりさんは俺が大顎を取り出している途中から、魂が抜けたように真っ白になっていた。

 そしてギルドからの討伐承認まで見届けると、「約束は守る」とだけ言って、とぼとぼと帰って行った。

 ぽっちゃりさん、さすがのナイスガイだった。




 ──それから後のことは、よく覚えていない。


 俺は歓声を上げた取り巻きの冒険者たちからみくちゃにされ──それから酒場エリアに連行され、たくさん飲んで、たくさん笑った気がする。

 それでももちろん財布とかは、がっちりガードしてたけど。


 パメラは、「おうおう、見せもんじゃねぇんだぞ。あっち行け」とか言って俺のガードマンみたいなことをしていたが、すぐに人だかりに潰されてぺちゃんこになっていた。


 ティトはたくさんの人に囲まれ、借りてきた猫のように、大人しくなっていた。

 人見知りをするタイプなのかもしれない。




 そして、そんな飽和するような夜が過ぎ、翌朝──


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