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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第一章 異世界と冒険者生活、あるいは残念妖精と山盛りのチート能力
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ゲーマーですから

「……う、ん……」


 目を覚ましたのは、どことも知れぬ森の中の小道だった。

 ほぼほぼ真上にのぼった太陽から、まばゆい陽光が降り注いでいる。


「あ、起きたっすね」


 寝ころんだまま空を見上げていると、その視界にきゅりりんと鱗粉りんぷんのような光をく、羽虫が現れた。


 ──いや、虫じゃないか。

 背中に半透明の羽を生やし、人間の少女のような姿をしている。


 大きさは、俺の手の平と同じぐらいだから、二十センチぐらいか。

 1/8スケール美少女フィギュアという大きさだ。

 緑を基調とした可愛らしい服装は、いかにも妖精っていう感じ。


「記憶とか、大丈夫っすか?」


「トラックに撥ねられて死んだ俺の魂は、異世界に送られて今ココ」


「大丈夫みたいっすね」


 そう言えば、女神(仮)が、案内役ナビゲーターを付けるとか言っていたな。

 この妖精っぽいのが、それか。


 俺は起き上がって、一つ伸びをする。

 腕をぐるぐると回してみたり、ぴょんぴょんとジャンプしてみたり。

 とりあえず、体は問題なく動くようだ。


「よし、この世界での俺を、三行で説明してくれ」


 俺はさっそく、目線の高さにふよふよ浮いている妖精姿に、説明を要求する。


「順応が早いうえに、しょっぱなから無茶振りするご主人様っすね。ていうか、うちが何者かとか、聞かないんすか?」


「聞いてやってもいい」


「ワイルドっすね……」


 妖精はがっくりと肩を落とし、何やらあきれていた。

 空中で腕をブランブランさせている姿が、どことなく可愛らしい。


「えーっと、うちは女神様から、ご主人様の案内役を仰せつかった者っす。この世界では妖精フェアリーの姿を取ってるっすけど、世界への干渉能力はほぼないっすね。名前はフィフィって呼んでほしいっす」


「フィフィな、オッケー。──ところでご主人様ってのは、俺のこと?」


「ほかに誰かいるっすか?」


 口の悪い案内役だなおい。


「で、ご主人様の現状説明っすね。ご主人様の体は、この世界に住む、しがない村人だった少年のモノっす」


「だった」


「冒険者になろうとして、街に行こうとしていたとこだったっす。でもその道中で、魂を食うモンスターに襲われて、魂がなくなっちまったっす」


 えっ、魂を食うモンスター?

 何それ怖い。


「そのモンスターって、ひょっとして今もすぐ近くにいるのか?」


「大丈夫、もう遠くに行ったっすよ。まあそのモンスターのせいで、この世界の魂が減って減ってしょうがないっていうのが、今回ご主人様がこの異世界に転移するように頼まれた理由なんすけどね」


 うわぁ……。

 なんかいきなりラスボスに遭ってしまった気分だ。


「で、何、俺がそいつを倒さないといけないわけ?」


「……ん? ああいや、違うっすよ。ご主人様がこの世界に呼ばれたのは、単純に数合わせのためっす。通常、魂の世界間の移動ってほとんどないっすから、減ったら減るばっかりなんすよ」


「そのモンスターは放っといても大丈夫なもんなの?」


「んー、まあそのモンスターも、数年に一人の魂を食うぐらいのモノっすからね。そのうち別の神の使徒が倒すんじゃないっすか? もちろん、ご主人様が退治してくれてもいいっすけど」


 随分と適当な話だな。

 神様業界も、いろいろと政治とかあるのかもしれない。


「つまり、この体の元の持ち主は、べらぼうに運が悪かったと」


「そういうことっす。ご愁傷様っす。こんなにイケメンの体なのに、もったいない。ご主人様、もうかったっすね」


 扱い軽いな、元の持ち主……。


 というか、俺の今の姿、イケメンなのか。

 鏡でもないと、自分の姿見れないから分からないな。

 まあ、さておき。


「ところでお前、その三下っぽい残念なしゃべり方、何とかならんのか? すっすすっすと鬱陶しいし、美少女な妖精姿が台無しなんだが」


「お前じゃなくて、フィフィって呼んでほしいっす。あとうちのアイデンティティを秒殺するのはやめてほしいっす」


 アイデンティティらしい。

 我慢するしかないようだ。


 さて、それよりも重要なのは──


「じゃあフィフィ、そろそろ女神(仮)から俺が授かった200ポイントの使い方を教えてくれ」


「いきなりそっちっすか? この世界の説明とかは、しなくていいんすか?」


「そういうのは聞いても覚えられる気がしないから、追々で」


「ワイルドっすね……」


 フィフィは諦めた様子で、要求した内容の説明を始めた。


「まずステータスを見てもらった方が、分かりいいと思うっす」


「ステータス」


「そうっす。頭の中で、自分のステータスを表示するよう念じてみるっす」


 えっと──よく分からないけど、こうか……?

 俺は言われたとおりに念じてみる。


 すると俺の頭の中に、以下のようなイメージが現れた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:カイル

 種族:人間

 性別:男

 クラス:ノーマルマン

 レベル:1

 経験値:0/10,000


 HP:60

 MP:16


 STR:13

 VIT:12

 DEX:9

 AGL:13

 INT:14

 WIL:8


 スキル

 (なし)


 チートポイント:200


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ──はい、どう見てもゲームです、本当にありがとうございました。


 で、このチートポイント:200っていうのが、女神(仮)から受け取ったポイントだろうな。


「ポイントの割り振りは、スキルか能力値に好きに振れるっすよ。全部頭の中で念じればできるっす」


 フィフィにそう言われたので、試しにいろいろ割り振りを試してみることにした。


 まずは能力値。

 STRにチートポイントを1ポイント割り振るように思考したら、チートポイントが199に減少し、STRの数字に+10という表示。

 これはまだ未確定で、STRに振ったポイントを戻そうと思ったら、チートポイントが200に戻って、STRへの追加表示も消えた。


 STRにチートポイントを2ポイント割り振ると、STRへの修正値は+20に。

 3ポイントを割り振ると、修正値は+30に。

 どうやらチートポイント1ポイントにつき、STRに+10できるようだ。


 どこまで伸びるかとやってみると、4ポイントで+40が限界みたいだった。

 試しにSTR、VIT、DEX、AGL、INT、WILの6つの能力値に+40の修正を乗せると、チートポイントが24減って、176になる。

 あと、VITの増加に伴ってHPが+200、WILの増加に伴ってMPが+80された。


 そうなることを確認してから、一旦キャンセル。


「これ、ポイントは使ったら、もう戻せない?」


「そうっすね。割り振りの確定前ならキャンセルできるっすけど、一度確定しちゃったら、もうチートポイントは買い戻せないっすよ」


「今割り振らないで、ポイント取っておいてもいいの?」


「それは問題ないっすね。ちなみに能力値への割り振り限界は、レベルが上がると伸びるっすよ」


 ほほう。

 それはいいことを聞いた。


「ちなみにこの世界の一般人の能力値って、どのぐらい?」


「一般人は1レベルで、能力値オール10前後が標準っすね」


 ふむ。

 この体はノーマルマン──一般人にしてはそこそこ優秀だったみたいだが、ポイント割り振りでアホほど数字が伸びるから、わりとどうでもいい感じになってるな。

 チートポイントという名称、伊達だてではないか。


 さて、能力値についてはザックリ確認したので、次はスキルを見てみる。


 例えば言語スキル。

 女神(仮)が言っていたとおり、ドラゴン語や妖魔語など、各種言語が1ポイント支払えばマスターできるようだ。


 例えば魔法スキル。

 炎魔法、氷魔法、雷魔法、治癒魔法……などなど系統ごとに習得できるようになっていて、1ポイントで一つの魔法スキルを1レベル取得できる模様。

 5レベルがマスターレベルで、最上級の魔法を使えるようになる。


 例えば獲得経験値倍化というスキル。

 1ポイントで獲得経験値を2倍にでき、2ポイントで4倍、3ポイントで8倍……というように倍々ゲームで増えていって、最大レベルは10ポイントで1,024倍。

 まあ、これは確定で取るだろう。


 その他にも様々な便利スキルがあって、総じて言えるのは、1ポイントの価値が随分でかいなということだ。

 これは100ポイントでも大奮発だった気がする……ぼったくり過ぎたかとも思うが、まあ、あって損をするものでもない。

 ありがたく使わせてもらうことにしよう。


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