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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第二章 巨大蟻退治、あるいは少女たちのメイドさんご奉仕を賭けた戦い
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チンピラ美少女が仲間になりたそうにこっちを見ている

「ま、待ってくれ!」


 二人と一匹(?)で冒険者ギルドへの道中を歩いていると、後ろからパタパタと駆け寄ってくる姿があった。

 振り向いてみると、さっきの残念チンピラ美少女グラップラー、パメラだった。


 通行人をよけながら走ってきたパメラは、俺のすぐ前で立ち止まる。

 ……えっと、まだ何か用あるの、この人?


「はぁっ、はぁっ……あ、あたし、決めたんだ……!」


 息つき駆けてきた少女は、両ひざに手をついて屈んだ姿勢で、キラキラした瞳で俺を見つめてくる。


 ……あー、なんだろう、嫌な予感しかしない。

 とりあえず、アレだな、先手打っとこう。


「断る」


「あたしをあんたの仲間に入れて、ってええええええっ!?」


 よし、勝った。

 俺は、話は終わったとばかりに背を向け、先を急ぐことにする。


「──ちょっ、ちょっ、ちょっと待って! 今あたしが何か言う前に断ったよね!? ねえ!?」


 パメラがひしっと、俺の片腕にしがみついてくる。


「いや、気のせいだろ」


「気のせいじゃないぃぃっ! 酷いよ! ねえ、あたしの何が気に入らないの!?」


 今までの流れで、何か気に入ってもらえると思う方がおかしいと思うよ?


「……はぁ。だいたい、なんでいきなり仲間なんて話になるんだよ。さっきまでお前、お礼参りだの何だの、俺のこと散々、目のかたきにしてただろうが」


 俺が呆れ半分でそう問うと、パメラは俺の腕から離れ、少し照れくさそうにしながら言う。


「それは、その……あたしに武術を教えてくれたお師匠様の、教えなんだ」


 ほう。

 なんかちょっとしんみりした話になってきたな。

 こいつにも何か、やんごとなき事情があるのかもしれない。


「師匠の教え、か……。どんな教えなんだ?」


「ああ。お師匠様いわく──『長いものには巻かれろ』って」


「…………」


 なんかお湯をかぶると女になっちゃうTS格闘家主人公の流派にありそうな教えだった。

 ……この子がダメなのは、おおよそその師匠に原因がありそうな気がしてきたな。


「ねえお願いしますぅぅ! あたし何でもしますからぁっ!」


 少女は、今度は俺の胴回りにしがみついて泣きついてきた。

 鬱陶しいことこの上ない。


 ──しかし、しかしである。

 この女……いま何と言った?


「……いま、『何でもする』と言ったか?」


「うんっ。あたしにできることなら、何でもする! だからあんたの仲間に入れてよ!」


 ……ごくり。


 俺は自分の胴にしがみついている少女を、ついイヤラシイ目で見てしまう。

 少女の健康的に露出した素肌に視線を走らせ、息をむ。


 ──いや、だって、しょうがないじゃん!

 見た目だけなら、ティトに匹敵するぐらいの超絶美少女なんだもん!


 ……よし、いいだろう。

 ならば、最終確認だ……。


「……キミそれは、女子が男子に『何でもする』と言ったとき、男子が何を想像するかを、分かって言っておるのかね?」


「……?」


 口調がおかしくなった俺の質問に、少女はしかし、きょとんとして首を傾げた。

 俺はがっくりと肩を落とす。


 ……あー、ダメだー、分かってないよこの子。

 ダメだわー、天然だわー。

 ちぇっ。


 まあ、でも、いいか。

 何でもするって言ってるんだから、何らか使いようはあるだろ。


 そして何より、見た目は美少女だ。

 一緒にいれば、少なくとも目の保養にはなる。


「……わかったよ。仲間でも何でも、好きにしてくれ」


「やった!」


 俺の許可を得て、無邪気に喜ぶパメラ。

 うーん、こういうところだけ見てると、可愛いんだけどなぁ。


「じゃあさじゃあさ、あんたのこと、『ダーリン』って呼んでいい?」


「なんでやねん」


 素でツッコミを入れてしまった。

 脈絡なさすぎだろ。


「お師匠様が言ってたんだ。気に入った男はそう呼んで、既成事実を作ってしまえって」


 よし、一度その師匠ここに呼んで来い。

 成敗した方が世のためだ。


「……まあいいよ、呼び方も好きにしてくれ」


「うん、好きにする。これからよろしくね、ダーリンっ」


 そう言って再び俺の左腕にしがみつくパメラ。

 なんかラブラブバカップルっぽくて気恥ずかしいが……うん、まあ、悪い気はしないからいいか。




「むー……」


 その様子をふくれっ面で見ていたのは、魔法使い姿の銀髪少女だった。

 そのティトと、パメラの目が合った。


 パメラが、ニヤッと笑う。

 ティトが、カチンときた顔をした。


 ティトが、つかつかと俺の右手側に回ってきた。

 そして少し葛藤した後、俺の右腕に、ぎゅっとしがみついてきた。


「…………」


 ティトは何も言わない。

 どころか、顔を真っ赤にして、全力で俺から目を反らしている。


 ……と思ったら、口元だけ、うへへっという感じで笑っていた。

 そういえばそうだったね、この子……。


 で、結果だけ見れば、両手に花だった。

 外見だけ見れば、超絶美少女たちが俺を取り合っている絵面だった。




「あ、姐御~! パメラの姐御~!」


 そんなとき、背後から野太い男の声が聞こえてきた。

 例のチンピラ男の二人組が、こっちに向かって走って来ていた。


「……あんだよお前ら、ついてくんなっつったろ」


 パメラが俺の腕から離れ、自分の両腰に手を当ててふんぞりかえり、チンピラ男たちの前に立つ。


「で、でも姐御……俺たち、姐御がいなくなったら、もうどうしたらいいか……」


 弱気のチンピラたち。

 しかしパメラは、チンピラたちに向かって行くと──


「──バカ野郎!」


 バキッ、バキッ。

 チンピラたち二人を殴った。


 え、何それ酷い。


「人に頼ってんじゃねぇ! 自分の人生だろ! 自分で切り拓かなくて、どうすんだよ!」


 パメラはチンピラたちに説教した。

 ……うん、その言葉、お前が言ったんじゃなければ、いい言葉だったかもな。


 ──と思ったのだが、しかし、


「あ、姐御……! そうっすよね……俺たち、間違ってました! 自分の人生は、自分で切り拓きます! ありがとうございます!」


 チンピラたちは何故か感動し、パメラに頭を下げると、うおおおんと泣きながら走り去っていった。

 ……そういえば、あいつらのINT、相当低かった気がするな。


「──よし、んじゃ行こうぜ、ダーリン♪」


 パメラはケロッとそう言って、再び俺の腕に抱きついてきた。


 ここに、人類史上最高のクズを見た気がした。


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