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星の泉  作者: 詩穂
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3話 五星士

サブタイトル考えるのが難しいです。そして、短い・・・。

  五星士は基本的なスケジュールは定められていない。どこの部隊にも所属をしないので、演習以外は基本的フリーだ。勿論その実力が足り得ないと判断されれば簡単に変更されてしまうので、何もしないというわけにはいかない。


 それまでの習慣というのは、すぐに変わることはなく、ずっと農民として生きていたアンジュは、朝日が昇るとともに目が覚めた。二段ベッドの上の住人はまだ夢の世界にいるらしく、起こすのも忍びないので、普段着に着替えると一人で食堂に向かった。廊下の窓からは、威勢のいい声が聞こえる。どうやら一般兵たちが訓練を行っているらしい。そこに人間らしさにでもきづいたのか、アンジュは微笑ましいようなそんな気持ちを覚えた。


「まあ、なんでもいいや。」


 アンジュは鼻歌を歌いながら、食堂へと入った。瞬間、アンジュに視線が集まった。それは、とても好意から来た視線とはいえるものではなく、好奇や異端でもみるような嫌なものだ。しかし、村に来たばかりと同じではないか、気に留める必要はないとアンジュは気にしないふりをした。ただウィルを叩き起こせばよかったのか、と少しだけ後悔をしつつも、食事を取ってこようとカウンターに足を運ぶ。


「あら、新入りさん?そんなに痩せちゃって、たくさん食べなさいよ。」


 カウンターにはお節介が好きそうな、優しい顔したおばちゃんがアンジュに話しかける。おばちゃんは痩せていたアンジュに気を回したのか、お皿にこれでもかとスープをもり、パンも人より多く載せる。断ろうとしたが、おばちゃんの勢いに押され、その量を持ってきてしまったが、食べきる自信はない。本当にお腹は減っているが、それまで少ない食事に慣れていたのが、いきなりたくさんの料理を食べられない。アンジュはそんな複雑な思いを持ちながら、席に着いた。パンを一口千切って口に運んだ時、後ろから体重をかけられた。


「置いてくってひどくないか?」

「ウィル。」


 ぐっすり眠っていたのは誰だと思いながらも、口には出さなかった。ウィルは寝癖をそのままにして、Tシャツに七分のパンツというかなり簡素な恰好を見るに、アンジュのことを心配して急いで追いかけてくれたのだろう。


「ここ取っておいて。」


 ウィルはアンジュの隣の席を指差してそう言って食事を取りに行った。アンジュは、自分のコップをその席に置いておいた。しかし、そんなことしなくてもだれもアンジュの隣の席に座ろうとする人間はいないので意味ないだろうと思う。そうしている内にすぐにウィルは食事を持って戻ってきた。


「そういやさ、昨日うやむやにしちまったんだけど、結局何歳から魔法が使えるようになったんだ?」

「知らない。ただ10歳くらいにはもう使えてた。それ以前の記憶はないから分かんねえ。」

「分かんない?それって記憶喪失ってこと?」

「そう、何にも覚えてない。それまでの名前すら憶えてねえんだよ。」


 ウィルは珍しそうにしていたが、それ以上の追及はしなかった。


「じゃあ、どんな魔法が使えるんだ?これからは軍の人間として一緒に戦うんだから、知りたい。」

「え、どんな魔法が使えるか。・・・試そうと思った事すらないから分かんねえ。生活に使える魔法しか・・・。」


 ウィルは、そりゃ困ったという顔をする。しかし、そうした状況にいなかったのだから、仕方ない。


「この王国の書庫は、そういう魔法系の本が沢山あるらしいから行ってみな。書庫は王宮の方にあって、将校じゃないと使えないんだけど、五星士は特別に使えることになってるから。俺はそんなに使ってないから、分かんないんだけどさ。」


 字が読めないんだよなあと思いつつも、その時は言葉にせずに、ウィルに礼を言う。まずは字を読む練習が必要があるのかもしれない。


「そういえば、魔術部隊じゃなくて普通に王国軍にいるなら、魔法だけじゃなくて剣とか使えた方がいいと思うぞ。」

「剣?」

「別に剣じゃなくても武器ならいいんだけどさ。ただ剣は絶対できなきゃいけないんだよ。王国軍の正装では剣が正式だからな。」

「剣以外があるってことか?ウィルは?」

「普段使ってるのは斧だよ。戦斧。勿論剣も使えるぞ。」

 ウィルは少し思案したのち、手を叩いた。

「よし!飯食ったら俺と鍛練だっ!」


 五星士たちに専属の教官が居ないため、アンジュにとっては有難い申し出だ。

「本当に初心者なんだけど、大丈夫?」

「そんなこと気にすんな。直ぐには難しいけど、お前も五星士であるって実力で示せれば、マシになるだろ。」


 最初はウィルもアンジュに対して、好ましくないという怪訝そうな顔をしていた。どうしてそのような態度に変わったのだろうか。疑いたくなるが、今助けになるのはウィルだけなので下手にその手を拒めない。そんな不安がアンジュの顔に出ていたのだろう。


「あー、俺はさぁ…、最初に言った通り楽しくやりたい訳。上からの決定ってのは覆せねえし。その状況を恨んだり悲しんだりしているよりは、同室だし、仲良くした方がストレスもたまらないだろ。」


 ウィルのまっすぐで前向きな言葉にアンジュは戸惑い、しかし、すごく嬉しかった。だから、思わず笑ってしまった。最後に笑ったのはミルフィーと遊んだときで、それから大して時間はたってなかったはずなのに、凄く久しく感じられた。


「ありがとう。俺もそう思うよ。」


 アンジュも、王国軍に来たくはなかったし、出来ることならリレイラの村に留まりたかった。それでも、来てしまった以上は嘆いたり恨んだりするよりは頑張ろうと思った。


「俺も、不本意だったんだ。軍に来るのは。」

「え、そうだったの?」

「不本意も不本意。あの、案内してくれた人には盛大にバケツの水をかけたし。」

「げげぇ。あのストール隊長にか。すげぇ度胸だわ。」


 鉄仮面のような顔をしているストールというあの男は随分部下に恐れられているようだった。確かに村では高慢で威圧的な雰囲気で腹立たしかったが、軍に来る間の様子はそうでもなかった。そして、あの時部下の命を人質に説得が成功したアンジュは彼が身内贔屓だろうと考えていた。


「そんな怖い人なのか?」

「いや、こえーだろ!ミスするとすぐ睨んでくるし。」


 真似をしているつもりなのか、ウィルは自分の目尻を吊り上げていう。


「それでお前はそんなに嫌だったのか、ここが。」


 ウィルとしてはいきなり本部勤務になる、更には国の顔とでも言われる五星士になることはとんでもない出世だし、農村でただ畑を耕すよりも金になることだから信じられない。


「嫌だった、というよりは、怖かったな。国境でもない、小さな村じゃあ軍が何かも知らなかったし。漸くあの村で落ち着いて生きていけるって思ってたところだったんだ。」

「漸く…?」

「小さな貧乏農村で子供1人抱えるのも大変だろ。しかも、誰かの知り合いの子でもねえし。だから、あんまりあの村でも好かれてなかったんだ。」


 リーラが引き取り、ミルフィーがアンジュと仲良くなっても中々村の大人やその子供たちは不信感が拭えなかった。しかし、アンジュが壊れた道具を魔法で直したり怪我を治したり、そうやって村のために動いていく姿を見て段々と信頼を得ることができたのだ。しかし、漸く居場所ができたところで今回王国軍に連れていかれ、また誰にも信用されていないところからの始まりだった。


「もっかい、最初からやり直しって感じだな。」


 だからといって、アンジュは泣き言は言わなかった。この状況にうんざりはしているが、彼はそれでもここできちんと生きようとしている。アンジュの話を聞いたウィルは頷いた。


「俺お前のこと見くびってた。どこかで世間知らずの弱虫だと思ってたみたいだ。でも、違えわ…。うん、お前って強いな。」


 ウィルは正直に心にあることをいってくれている。それだけでアンジュは安心できる。


「きっと皆お前のこと誤解してる。狡いとか、卑怯とか…そんな風にな。」


 あの場の兵士を人質に脅したことはとても卑怯だと自分

でも思っているのでそれは間違ってはない。


「だから、本気でやるぞ。」

「え?」


 ウィルの闘志に火をつけてしまったようだった。


  ウィルが五星士、王国軍の顔として選ばれた理由がよく分かる。性格が真っ直ぐなことも恐らく選ばれた理由だとは思うが、それだけではない。しっかりとした強さだ。ウィルの得意武器は戦斧だと言っていたが、剣術だって並の剣士では勝てない。


「ほら、しっかり握れ!」


 何度やってもウィルの剣に弾かれる。こういう剣術は素振りから始めるものだと思っていたが、ウィルは好きに打ってこいという。もしかしたら我流でもいいから実践的な

剣を学べと言っているのかもしれない。


「魔術師だと言っても、魔力が切れたりしたときに生きられないぞ!」


 農作業をしていたのでそこらへんの座学しかしていない魔術師よりは比べ物にないくらいにはアンジュは動けるのだが、元々栄養が全然足りていないので筋肉らしい筋肉がなく、簡単に吹っ飛ばされてしまう。


「はぁ、なんだあの弱いやつは…。」

「あのウィルとやろうなんてあり得ない。」


 先程までただウィルに一本でも叩き込むことばかり考えていたが、ふと冷静になると周囲の音を拾ってしまった。ここは軍の演習場で他の部隊の者たちがいるのは当たり前だ。単純な見知らぬ者に対しての疑問、それからあまりにもなっていない剣術への侮蔑、五星士のウィルに稽古をつけてもらっているという羨望と嫉妬、様々な声が聞こえるのだ。


「何の手を使ったのかな…。もしかして、あの金髪青目、どっかの貴族の子供なんじゃないの。」


 アンジュは再び剣を握った。彼を蔑む声はいつも通りのことだ。ずっと昔から9:1くらいの割合で彼を否定するばかりだから、今更のことで声をあげる気にすらならない。


「ウィル、もう一回だ。」

「おっしゃ、こい。」


 ウィルは立ち向かってくるアンジュに嬉しそうに剣を構えた。頭の上から振りかぶった剣だったが、簡単に軌道を逸らされ弾かれる。そのままウィルの足がアンジュの腹に決まった。


「死にたくねえなら何でも使えよ。」

「何でも…?」


 アンジュがフワリと剣を浮かせて自分の前まで運ぶ。簡単に魔法を使ってのけるアンジュにギャラリーたちは驚きの声をあげていたが、アンジュは気づかない。


「待って待って魔法はなし!」

「でも、バレなきゃいいよな?」

「え。」


 アンジュの剣が簡単に吹き飛ばされてしまうのは、アンジュの剣に重みがないからだ。欠食のアンジュにそれを求めることは難しいが、魔法が使えるのだ。なんの魔法が使えるかは勿論試したことはないが、アンジュがやろうと試してできなかったことは今まで何一つない。(とはいっても村でアンジュは、特別な事情以外にあまり使いたがらなかったが。)

  それから、ウィルに一本もとれないのは、技術と経験が圧倒的に足りないからだ。でも、ウィルにはそれがある。コピーなんてできる訳じゃない。見た目からの筋肉のつきかたや、数時間打ち込んで見えてきた彼の動きをデータとして頭にインプットされてある。それらを魔法で再現をすだけだだ。勿論高々数時間の打ち合いしか見ていないのだから、それまで十年程やってきたウィルの経験に勝てるわけはない。ただ一本取るだけなら、なんとかなる。

 踏み込む一歩がすでに違う。ウィルは嘘だろとつぶやいた。アンジュの剣をはじこうとしたが、できずに競り合う。


「これが、バレない魔法な…。」


 もし、彼が前置きしていなければウィルには魔法だとすぐ分からなかっただろう。ウィルは剣を返して、一度アンジュと距離を取る。それから一呼吸を置き、冷静にアンジュを見る。

  ウィルの動きを魔法で再現しても簡単には一本は取れない。しかし、すぐに決着をつけなければ、魔力が足りないのではなく体力が持たないい。こちらも息を整えると、再びウィルの胴に剣を振りぬく。良い剣筋だったが、ウィルはアンジュの剣を止め、そのままお互いの剣を飛ばし、アンジュの腕をつかむと背負い投げをして勝負は終わった。


「一本も無理かぁ。」


 天井を仰ぎながらアンジュは呟いた。結果は圧倒的で悔

しさもない。


「なんだ、その腑抜けた声は…。」


 ここで諦めずに悔しさをぶつけるのが恐らく英雄憚の英雄なのだとは思うが、アンジュにはその気力は起きなかった。


「やっぱり地道に、だよなぁ。」

「そりゃそうだ。まあ、魔法で身体強化するのはすげぇと思ったけどな。」

「俺がやったのはウィルの動きの模写もだけど。」


 ウィルは目を丸くしていた。確かに動きも格段によくなっていたが自分の行動がコピーされていたことには全く気づいてなかった。


「すげぇな…、その観察力。いや、分析の力?分からねえけど。」

「別に凄くはない、と思う。」

「いや、絶対良い魔術師になれるはずだ。魔術師って確か高度な演算能力が必要って言ってた気がするし。暇なときに魔術部隊に行ってこい。」


 自分と同じように魔法が使える人間が集められた部隊、気にならないわけではないが、行く気力がでてこない。


「お前なぁ・・・。剣術を覚えろとは言ったが、剣術で五星士になるレベルじゃねえんだぞ。魔法もうまく使えなきゃお前が『五星士』に選ばれたことに示しがつかねえよ。」


 ウィルの言っていることは正論だったため、反論なんてできるわけもなく、うなずくことしかできなかった。


「その前に字を覚えたい…と思うけど…。」

「字、お前字書けねえのか。」

「…書けないどころか読めねえ。」


 他国と比べれば、このルーグ王国の教育水準は悪くはないのだが、あくまで都会の人間の話だけで、農村部の識字率はまだまだ低いままだった。リレイラ村で字が読めるものは極一部、アンジュの身近ではミルフィーとその家族くらいだ。(手紙は郵便屋が代読してくれたり、ミルフィーが読んでくれたりする。)


「俺も知ってはいるけど、教えるの下手糞なんだよな。ああ、でも、文字一覧くらいなら書いてやれる。」


 ウィルは倒れていたアンジュに手を差しのべ助け起こし

た。


「だから、諦めんなよ。」

「なにも諦めてねえよ。」


 気力の無さそうなアンジュには対してウィルはそう言ったのだが、前向きな言葉が返される。元来アンジュは「知りたがり」な人間で、直ぐに物事を覚えたりすることができた。それなのにアンジュが無気力に見えるのは、表情が変わりづらいからだ。


「来てすぐで疲れるのも仕方ねえから、今日はもうやめにしよう。後は任務とかこの中の仕組みとか少し教えるわ。」


  そう言ってウィルは寄宿舎の談話室に連れていってくれた。談話室にはいくつかのテーブルと固そうなソファが置かれていて、壁は石造りの冷たさがあるものの明るい色のカーテンやラグのお陰で落ち着く雰囲気のある部屋だった。そこには簡単なカウンターがあって、ウィルはコーヒーを淹れてアンジュに出してくれた。その濃茶色の飲み物を飲んだことないアンジュは恐る恐る口につける。


「砂糖ないんだ、悪い。最近砂糖の値段があがっててさ。軍の経費削減で置かれなくなって。」


 コーヒーの独特な苦味とえぐみ、酸味が口に広がりアンジュはむせた。


「これしかねえのか?」

「あと酒だな。今王都の水汚くて飲めたもんじゃねえ…。」

「…このコーヒーになる前の水はどうしたの。」

「コーヒー好きの少将が置いててくれて。魔法でろ過したコーヒー用の水を。」


 そう説明するウィルもコーヒーに口をつけると、彼は吹き出した。


「やべぇ、不味い!」

「不味いのかよ。」

「自分であまり淹れねえから。」


 普段は違う人が淹れてくれているらしく、その人のコーヒーは砂糖がなくても美味しいらしい。ウィルは砂糖以外にコーヒーを飲みやすくするものを探しに行った。


「牛乳を発見した。入れるか?」

「え、飲むもんなの?」

「飲める。けど、王国軍以外の牛乳は飲まない方がいいぞ。」

「単体で飲みたい。」


 残り少ないのにとぼやきながらも、自分のコーヒーが不味かったことを気にしているのか、牛乳のみで出してくれた。


「成人したら酒あげるんだけどなぁ。」

「もしかしたら、成人してるかもよ?」


 この国の成人年齢は18歳だ。正式な年齢と誕生日が分からないアンジュはもしかしたら18歳なのかもしれない。


「だとしても、軍の名簿には16ということになってるんだろ?五星士は国の顔だから法律違反には厳しいぞ。」

「正直その『五星士』がよく分からねえんだけど。」

「ぎょええ?国のヒーローを知らんとは。」


 昨日もストールの話を聞いてあまり理解できなかった。ストールが言うにはとにかく良い役職であると言っていた。


「王国軍本部はまず100人一組の5師団に分かれてて、それぞれ師団長、副師団長が就いてる。」

「シダンチョウ?フクシダンチョウ?」

「それぞれのグループの一番偉いやつと二番目な!あといくつか役職があるんだけど、そういうのを抜かして、師団の番号が若いほど凄いやつってこと。」

「どういうこと?」

「第1師団と第5師団の団員だったら第1師団のがエリート、凄い集団って感じ。ただ第1師団の団員より第5師団師団長の方が凄い人なんだ。」


 ウィルは凄く簡単な言葉だけで教えて、大将などの軍隊特有の階級のことも簡単に教えた。


「五星士はそういう師団から抜けて、国民が困っていることを片付けるのが仕事。」

「なんでそんなことをしてる?」

「王国軍って格好良いよねっていうアピールな。五星士が人気なのは貴族出身がほとんどいないってところだな。身近な人間が努力で王国の顔として働いている。良いアピールだろ?」


 五星士というポジションに着くだけで士官として扱われることもあり、昔から庶民の憧れの仕事として人気のあるものらしい。全て理解した訳ではないけれど、アンジュが魔法が使えるだけで選ばれたのか、全く分からない。


「これは俺の邪推だけど、魔術部隊って王国軍の管轄じゃないんだよね。」

「カンカツじゃなかったらどうなるのさ。」

「王国軍が動いて欲しいと思ったときでも動いてくれないことがある。」

「味方じゃねえのかよ。」

「色々あるんだよ。公衆にも認知される五星士にしちゃえば、魔術師部隊も手を出しにくくできるからな。」


 ウィルの説明でもよくわからなかったが、いつか分かるだろうと頭の片隅に置いておくことにする。


「そういうことに巻き込まれたってことだな。」


 アンジュの預かり知らぬところで、大人たちの駆け引きが行われていたらしいことは分かったのだが、本人としてはどうでもよいことだった。強いていうなら、そのせいで他の兵士たちから嫉妬されるのは腹立たしい。ただウィルという面倒見のよい人間と出逢えたことを鑑みれば、「五星士」に選ばれたことも悪くないことだった。


「あと俺たちの仕事の内容についてさ…。」


 とウィルが言いかけた時、談話室に飛び込んできたアンジュと同じ年頃の少年が二人に向かってきた。


「長官から、お二人に任務を与えるとのことです。すぐに長官室へ。」

「了解です。アン、長官っていうのは王国軍の中でいっちばん偉い人だからちゃんとしろよ。「五星士」は長官直轄だから、絶対に喧嘩売るなよ?」

「そこまで短気じゃない。」

「ストール隊長に水吹っ掛けているからな…。」


 ウィルはアンジュのストールに対して水をかけた事を気にかけているらしい。それだけで、ここまで警戒されているのだから脅迫したことは墓まで持っていた方がいいかもしれない。

  アンジュはウィルの背を追いながら思う。

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