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魔法使いに召喚された男の子  作者: クトリア
2/3

入学

―3週間後―

 私は無事に3年生になった。

 恵樹はというと、あの日の次の日から春休み中は開館から閉館まで図書館に籠り、昼ごはんは私が図書館に行きお弁当を届けに行き、その時やっと休むぐらいでトイレの中にいる時間ももったいないというように勉強していた。

図書館から帰ってくると大体夜ご飯ができている状態なので帰ってきてから手を洗ってすぐに夜ご飯をたべている。

夜ご飯の最中は家族と話すというのがこの家のルールなのでそのルールに従い、恵樹もその一日に起こった出来事をその時だけ話てくれた。

その時に恵樹が話た内容で一番面白かったのは、トイレ中でも勉強したくてトイレに行く時に司書さんに見つからないようにどこからか借りた教材を持っていこうとしたら、隠していたはずなのに司書さんに見つかり説教された。という話だった。

 この話は私以外にも両親も笑っていた。

 3人に笑われた恵樹は話すんじゃなかったと後悔したように苦笑していた。


 まあということで恵樹は私のように充実した長期休暇ではなく、勉強漬けの長期休暇となった。

 ちなみに、私は今一人だ。

 恵樹は転入生として登校する時間帯が私達在校生と異なるのだ。

 多分在校生と登校時間が違うことをいいことに今もまだ足掻くように勉強しているのだろう。

                         校門前

 恵樹のことを考えながら登校していたら、久しぶりで見慣れた校門が目の前にそびえ立っていた。

 『そびえ立つ』といっても、ただのアーチ状の校門なのだが。

 私は次々に学校の中に入っていく生徒の流れに沿って、ある一つの場所を目指して歩いて行った。

 それは、体育館だ。

 体育館は本来、保険・体育の授業で使われる建物だが、入学式などの特別な行事などでは別な用途で使われる。

 今日は入学式と別にクラス替えがある。

 だから、在校生は自分のクラスと他に誰がいるのかを確かめるため、在校生の全員が体育館に向かっている。

 私もその一人だ。

 魔法があるのだから魔法でクラス発表の通知を本来はすればいいのだが、学校の方針のようなものでそうするように決められていた。

 まああらかた何年か前の生徒会長か校長が決めたことだと思うが。

 体育館に到着した。

 体育館の中央に何台ものホワイトボードが横に綺麗に並べられていた。

 その前にはたくさんの生徒が揉みくちゃになりながらも、自分の名前を探していた。

 ホワイトボードから離れた位置には生徒の波があらかた収まってから、自分のクラスを確認しようと壁付近にもたれ掛ったり、胡坐(あぐら)などを掻いて座っている者、自分のクラスを確認し終えて友達と一緒になれた嬉しさや、別れてしまった悲しさなどの表情を浮かべている生徒でこちらも溢れかえっていた。

 私は入口付近から魔法を使いホワイトボードを見た。

 ホワイトボードには何も書かれておらず、魔法で名前やクラスが表示されていた。

 私は決められた動作のように自分から見て一番右側のホワイトボードを見た。

 そこには案の定自分の名前が記されていた。

 私はそれを確認すると誰にも話かけず、体育館を後にした。

 たまたま隣にいた男子生徒が自分のことを見ていたことを知らずに…


 

 凛亜が体育館を目指して校内を歩いていたころ恵樹は学校付近にいた。

 恵樹は入学前日に凛亜に言われた事を思い出していた。


「明日は私と恵樹の登校時間が違うから渡した地図を見て自力で学校に行ってね。」

 なんでと言ってもそうゆうものだからと片付けられそうだったので疑問を投げかけるのをやめた。

 「分かった。で、俺はどの門を使えばいいの?」

 凛亜から渡された学校のパンフレットと凛亜作(魔法により)にはどの門から学校に入るのか書かれていなかった。

 「門?えっと、正門の近くに鉄格子(てつごうし)に似た感じの扉があるからそこから入って。脇にホントに小さな小屋があってそこに警備員がいるから警備員に入学したことを伝えて。そしたら、職員室に連絡が入って校舎の中に入れるようになってるから。」

 至極丁寧に分かりやすく説明してくれた。

 凛亜はこの学校に俺と同じく転入生として入学したのだろうか

 そんなことを考えながらパンフレットを眺めていた。

 「その後はどうすればいいの?」

 「その後は真っ直ぐ行くと扉が見えるはずだからそこから中に入って。後は警備員に聞いて。」

 あれ?最後は曖昧だ。

 「ねえ凛亜。この学校にどうやって入ったの?」

 「ん?ちゃんと入学手続きを出して新入生として入学したけど…?」

 「あ、そうなんだ」

 

 まあ昨日そんな会話があって今に至るのだが、

 凛亜が言っていた扉のようなものは一切見当たらない。

 凛亜が嘘を言っていたのではないか

 凛亜を疑うつもりはないが、扉を探し始めて5分が経過しているので疑うしかなくなってしまう。

 どうしたものか。

 このままここにいたら入学式に間に合わないかもしれない。

 途方に暮れていた。


さらに5分後―

 やっとお目当ての扉が見つかった。

 今思えば一生懸命探したことが見つからない原因かもしれない。

 疲れて一休みしようと座れる場所を探していたら見つけたのだ。

 よく言う冷静に探せば、すぐ見つかるよという言葉そのものだった。

 なんか嬉しかったが、やりきれない気持ちでいっぱいになった。

 昨日凛亜に言われたとうり扉を開けてすぐのところに小屋があり、その中に中年男性が警備員服を着ていた。

 一目見ればすぐに警備員だとわかるような出で立ちだった。

 それに中年太りしていて優しいおじさんという感じですごく話しかけやすい人だった。

「あのすいません。岳兎恵樹と言うんですが、今日この学校に入学してきたのですが誰でもいいのですが、職員室に連絡を入れていただけませんか?」

 ちゃんと敬語だ。

 どんなに話しかけやすい優しそうなおじさんでも俺よりも普通に年齢が上でしかも初対面なのだからため口では嫌な気しかしないだろう。

「ん?岳兎恵樹君ね。ちょっと待ってもらえるかな。すぐに連絡を取るから。」

 そう言って本当にすぐ電話をかけ始めた。

 この流れからして職員室だろう。

 「分かりました。」

 俺は素直に待つことにした。

 まあ、待つことしかできないのだが。

 「はい…はい…了解しました。では案内してもよろしいのですね。…はい…分かりました。では、失礼します。」

 と言って警備員は電話を切った。

 「校舎の中に入っていいって。校舎に入る扉はこの道を真っ直ぐ行けば扉が見えるからそこから入ってね。入学おめでとう。いってらっしゃい。」

 警備員に見送られ、さっき教えてくれた道を真っ直ぐ進んだ。


 数分後、警備員が言ったとうり扉があった。

 俺はそこから入りあたりを見渡した。

 扉側の壁に一枚紙が貼ってあった。

 髪の前に行き、紙に書かれた内容を読んだ。

 『職員室はこの階にあります。』

 こう書かれていた。

 有り難いものでその指示に従って校舎を歩き始めた。

 この後何が起こるか知らずに…



 クラスを確認した時に確認しておいた教室の目の前に辿り着いていた。

 ガラッ

 教室の扉を開け、中を確認した。

 教室の中には本を読んでいる人、話をしている人、それを聞いて笑っている 人、黒板と教室を交互に見ている人。

 まだ、クラスの半分ぐらいしかいない教室で人それぞれ楽しくやっていた。

 私は黒板と教室を交互に見ていた生徒の隣に行った。

 黒板にはホワイトボードと同じように魔法で名前が書かれていた。

 それは今座る席の場所を記したものだった。

 私の名前はすぐに見つかった。

 教室の一番左の一番後ろだった。

 つまり、一番後ろの窓側の席だった。

 あれっ?と思った。

 他の席は隣のどちらも名前が書いてあるのに、私の隣だけ空欄だった。

 不思議だとは思ったが深く追求せず、指定された自分の席に座った。

 一番後ろの席だったので、教室のドアの前で見たクラスよりもこちらの方が全体像が把握できた。

 考えている間にも途切れ途切れではあるが生徒が教室に入っていき、黒板の前で自分の席を確認した後、荷物を置いていった。

 その後の行動は人それぞれで皆違っていた。

 暇だなと思い窓の外を眺めた。

 眼下には歩いている生徒、走っている生徒、談笑している生徒。

 やはりこちらにも色々な生徒が居た。

 そんな彼らを見ているのが楽しくなり、鐘がなるまで見ていようと思った。


 

 凛亜が教室に入った頃、恵樹は迷っていた。

 というか、同じような場所を行ったり来たりしていた。

 行ったり来たりすること5分ぐらい経過していた。

 最初のうちは学校だから同じような造りなのだろうと思っていたが、5分近くなってきた時にはなにか可笑しいと思い始め、今ではその可笑しさは確実なものになっていた。

 「どこを歩いても同じ感じだし…どうなってんだよ…はぁ…」

 登校時のこともあり疲れ果てていた恵樹は嘆息を漏らすことしかできなかった。

 どんなに歩いても同じような造り。

 飽きもするし、疲れもする。

 「紙には『1階』って書いてあったけど2階もいってみるか。」

 誰もいないので自分に言い聞かせるように、言葉を発した。

 誰もいない。

 そう、誰もいない。

 ずっと歩いているのに人の気配すらしない。

 静かで閑散(かんさん)としている廊下をただひたすら歩いていた。

 目的の職員室を見つけるため。

 2階に上がった。

 2階も1階と同様、同じ風景だった。

 生徒も先生もいない、一点の汚れもない綺麗(きれい)な廊下。

 使った事が無いようだ。 いや、この綺麗さは新築の綺麗さだった。

 「はあ、どうしようこれ…」

 ホントにどうしよう

 ()(すべ)がない。

 凛亜のように魔法が使えたら、こういう事態を打破できる考えを直ぐに思いつくだろうが、生憎、俺は考えることはできてもこの事態を打破する力は俺には備わっていない。

 はあ、本当にどうしたもんかな。

 ⁈ん⁈

 消火栓が入っている赤い箱の下ら辺に妙な切れ目があった。

 他は何処も彼処も新築の綺麗さなのに、ここにだけ傷がついているのはおかしいと思った。

 

 

 やはり、楽しかったのは最初のうちだけで徐々に生徒の流れが緩やかになってきはじめたころ見るのが飽きてきた。

 教室を見ると自分が入ってきた時よりも生徒が教室の中にいた。

 その中にはあまり生徒に興味を持っていなかった私でも名前が分かる人がいた。その人は男子ではあったが、私的には絶対に覚える必要がある人だった。

 名前はみょうあんじ かおる。 (あか)るい安心(あんしん)(てら)と書いて明安寺(みょうあんじ)薫風(くんぷう)(くん)と書いて(かおる)と読む。

 この人は私の家で代々使われている魔法種(まほうしゅ)の一つである『古術(こじゅつ)』の本家本元の明安寺家の長男で先天性の魔法使いである。

 仕事場的にいうなら上司と部下の関係に似ている。

 普段、名前を呼ぶときは『明安寺君』と呼んでいるが、心の中では密かに『薫君』と呼んでみたりもしている。

 薫君は地位的には私の方が下なのに二人の時や古術の家柄の人達の前では私の事を『凛亜さん』と呼んでくれる、意外にフレンドリー(?)な一面を持っている優しい人だ。

 他な生徒は顔は分かるが誰が誰だか分からない状態だ。

 「はあ~暇だな…」

 言ってみてどういう変化が起こるでもなく、ただ時間が過ぎていった。

 キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 鐘がなった。

 「おーい、入学式始まるから体育館に行け~」

 鐘が鳴り終えたと同時に見計らったように声が教室の扉から聞こえた。

 声は中性的で男か女か分からないが声の方に視線を向けると一目で分かるぐらい女の人だった。

 『一目で分かるぐらい女の人』という表現は合っているのか分からないが。

 女の人はこの学校の教員でさっき発した言葉のとうり、体育館に生徒を促す声掛けをしに来たのだろう。

 「はーい」

 生徒は先生の言葉に気の抜けた声で応対した。

 「遅れずにくるように」

 生徒の気の抜けた声とは裏腹にハキハキとした声で言い放ち、教室を後にしていった。

 先生が居なくなった扉や教室の後ろから教室の中にいた生徒達は次々と体育館に向かった。

 私も体育館に行くため席を立った。

 「体育館!」

 視界が歪んだ。

 私は少し気持ち悪くなり目を瞑った。

 数秒後、足と地面の間に隙間が出来た。

 もう数秒後、地面と離れていた足が地に着いた。

 目を開けるとクラス確認したときに入った体育館の壁に寄りかかっていた。

 場所移動の魔法だ。

 行きたい場所を声に出して目を瞑るかすると指定した場所に瞬間移動している。

 壁に寄りかかっていた背を壁から外し、自分のクラスの列の椅子に向かおうとした。

 向かおうとしたときに横から声を掛けられた。

 横を向くと体育館に向かうよう指示した先生だった。

 その人も明安寺君と同じく名前を知っていた。

 その人は明安寺君の姉で明安寺 かおり。かおりは線香(せんこう)(こう)(かおり)と読む。

 先生は体育館から外に出ていった。

 「なんですか?」

 「聞きたいんだが、今日は九堂の従兄妹が転入してくるんだよな。」

 「?…はい、そうですが…何かあったんですか?」

 「いや…まだ職員室に来ていないんだ」

 「まだ、あの入学試験やっているんじゃないんですか?」

 「それならいいんだが…」

 「大丈夫ですよ。なんてったって私の従兄妹ですよ」

 「うーん…そうだな。悪かった」

 「いえ、大丈夫です。では、失礼します」

 先生に一礼し、自分がいた列に戻った。


 

 凛亜が体育館に移動したとき、恵樹はあること気が付いた。

 消火栓が入ってる箱の下ら辺に妙な傷があったことに。

 「なんでここだけ?」

 このへんな学校から抜ける手助けになるのだろうか。

 今の状態では確信には至れず、他の階や1階にも同じような傷が無いか探してみることにした。


 

 自分のクラスの列に戻った時にちょうど入学式が始まった。

 正直言って私は入学式や全校集会のようなものが嫌いだ。

 終わるまで椅子にしかもパイプ椅子にずっと座っていなければいけない。

 そのパイプ椅子は年忌のあるパイプ椅子なので、クッションの部分は申し訳程度にしかスポンジが膨れておらず、お尻が痛くなるから余計だ。

 それに、この学校のモットーは『学年問わず平等』を掲げているので、魔法で座り心地のいい椅子を生成しないように学校側で椅子をいつも準備しているのだ。

 有難迷惑なのだが。

 しかし、お尻が痛くならない方法がある。

 魔法で肉体と精神を切り離してしまえばいいのだ。

 そうすれば、入学式の間、痛みを感じずに済むし、精神を切り離すので体育館を漂っても誰も文句は言わないだろう。

 まあでもこれはただの気休めにしかならず、肉体に戻った時はお尻に痛みを感じてしまう。

 仕方ないことと思えばやり過ごせる。

 小声で

 「肉体離脱」

 と唱えた。

 視界が急にさっきより上に上がった。

 肉体と切り離されたのだ。

 「他者通信」

 今度は精神では誰にも聞かれないので普通の声で言った。

 言ったつもりだった。

 精神の場合、脳も脊髄(せきずい)も無いので声を発する信号が出せないので心の中で言ったということになる。

 『他者通信』とは自分からは送信はできないのだが、自分以外の他者から勝手に自動的に心の声(今思っていること)を受信できるのだ。

 簡単に言ってしまえば、他者の心が読めるようになるということだ。

 自動的に受信するようになると今まで発しないと分からなかった心の声が雑音も無く聞こえる。

 ただし条件を提示していない今、むやみやたらに受信されてくるので、頭の中で聖徳太子ゲームをしているような状態だった。

 「教員、登録済み者のみ」

 また、心の中で言葉を発した。

 すると、今まで聞こえていた他者の心の声が3分の1ぐらいまでしか聞こえなくなった。

 よく聞いていると明安寺家の姉弟の心の声が聞こえた。

 香、「岳兎君もう出たかな?今出られたらどうしよう…」

 薫、「香姉さん、なんか浮かない顔してたけど何かあったのかな?昨日言っていた転入生の件かな?」

 うーん…

 なんなんだろう。

 先生は恵樹の心配していて、薫君は先生の心配してる。

 変な三角形だなぁ

 しかも、この三角形ちょっと(いびつ)すぎない?

 恵樹が真ん中にいる三角形だよ。

 …恵樹ってなんかすごいのかな?

 うーん…

 ぐわん

 視界が歪んだ。

 ⁉なんだ⁉

 少しして視界が正常に戻った。

 しかし視界の高さが低くなっていた。

 誰かに無理やり肉体に戻されていた。

 そして、他者の声も聞こえなくなっていた。

 二つの魔法どちらも妨害(ぼうがい)を受け、強制解除(きょうせいかいじょ)させられたのだ。

 誰かは予想がついてはいたが、複数いて特定ができなかった。

 多分、入学式の後に少し話をしなくてはいけないだろう。

 まあ、説教というわけでは無いからいいのだが。

 「それでは、これで入学式を終了します。…各自解散!」

 入学式の終了を告げた教頭先生がそのまま解散を告げた。

 ざわざわ ざわざわ ざわざわ

 入学式が終わり各自解散を告げられた生徒達は直ぐに教室に戻る者、友人と話をしている者、先生と会話をしている者、色々な人がいた。

 「九堂。ちょっと」

 後ろを振り向くと明安寺先生がいた。

 私の魔法を解除したのは先生だったのか。

 多分、自分の心を読まれた事を感づいたんだろう。

 明安寺先生が気づいたということは薫君も気づいていただろう。

 「はい」

 また、先生の後をついていった。

 「おい、又か…」

 「すいません」

 「まあ、つまらないのは分かるが明らかに気づかれる相手の心を読むな…はあ」

 「だって、本当につまらないんですもん」

 「だから、読んでもいいが読んでも気づかない人を対象にしろと言っているんだ」

 「毎度言いますが、他の人は知らない人なので誰が気づくのか誰が気づかないのか分からないので、もう気づかれてもいいので読んでいます」

 「はあ…九堂。お前は頭いいのに変なところで抜けているよな…」

 「いやいや、そんなこと言わないで下さいよ。照れちゃうじゃないですかぁ」

 「いつでもつっこむと思うなよ」

 「ちぇ、あっ早く職員室戻った方がいいんじゃないですか?入学式中ずっと心配していたんじゃないんですか?」

 「はあ、もう心読むなよ」

 「はーい」

 じゃあ私も戻ろうかな。


 

 ちょうど教頭先生が入学式終了を告げた時恵樹は2階の消火栓が入っている箱を見ていた。

 他の階や1階に行ってみても傷が付いていたのは2階のこの箱だけだった。

 「うーん」

 屈んで傷に顔を近づけてもよく分からなかった。

 この箱にもここ以外には傷は付いておらずやはり元の学校に戻る鍵だということは分かるのだが、どうすれば戻れるのか分からなかった。

 「ふう…どうしようかな?傷に触ったら戻れるとか?(笑)」

 そんな冗談を言った瞬間、急に足から力が抜けたように転んだ。

 顔から落ちるのを防ぐため手を突いた。

 その時にたまたま箱の傷に手が触れた。

 床に手を突いた時、傷に手が触れたことは俺は分からなかった。

 ただ、何かが自分の手を掠めたことが分かった。

 視界が歪み、身体が宙に浮く感覚に捉われた。

 叫ぶこともできず、ただ何処かに飛ばされる感覚があるなか自分は転がるように何処かに飛ばされた。

 どしん! べしゃ!

 浮遊していた身体が急に地面らしき平面に当たりバランスが取れず、転んでしまった。

 「ううー、痛ぁ~」

 転んだ時に上手く手を突けずもろ、おでこを床にぶつけてしまった。

 おでこを摩りながら周りを見ると、たくさんの生徒がこちらを見ていた。

 こちらを見ながら動きを止めていた。

 ああ~ 戻ってきたぁ~

 「あ、あのここ何階ですか?」

 職員室の場所を聞くためにまず前置きとして今何階にいるのか聞いてみた。

 応答は無かった。

 というか、皆本当に動いておらず、ただ俺の事を見続け静止していた。

 少しすると俺に一番近い少女が動いて俺の方に向かってきた。

 「あの、見た目からして大丈夫そうなんですけど、大丈夫ですか?」

 「ん…大丈夫だけど…」

 「そうですか。えっと、ここは1年生の教室がある2階です。ネクタイの色からして3年生のようですが、3年生の教室は4階ですよ。」

 ネクタイの色。

 俺以外の生徒のネクタイの色は赤色で俺は緑色だった。

 「ありがとう。でも俺、職員室に行きたいんだよね」

 「職員室ですか?職員室はこの下の階ですよ。階段を降りたらすぐ場所が分かりますよ」

 にこっと笑って場所を教えてくれた。

 「分かった。ありがとう。それと、入学おめでとう」

 俺は立ち上がり一階を目指した。


 

 教室に戻った私は自分の席に着いた。

 私以外の生徒は全員教室に戻ってきていた。

 ふと、恵樹の事を思い出した。

 先生が私に尋ねてきてから私も恵樹の事を考えていた。私はこの学校の入学試験の内容を知っているので私がやってもすぐ終わってしまうのだが恵樹ともなればそうはいかない。なにせ、魔法が一切使えないのだから。でも、あの入学試験は頭脳だけでも突破することが出来る。恵樹の頭の良さがどのぐらいかは分からないが…まあ、でも大丈夫だろう。あんな試験分かってしまえばすぐ終わる。今頃恵樹は職員室にいるだろう。

 そう考え、教室に目を向けた。

 目が合った。

 教室の真ん中で会話をしていた男子の1人がこちらを見ていた。しかし、誰だか分からなかった。というか、私的には薫君以外名前が分からないのだ。

 ?

 首を傾げて男子の方を見ていると、男子は会話していた中に戻った。

 なんだったんだろう?と思い視線を外そうとしたらその男子が私の方へやってきたのだ。心臓が高鳴り出した。私はあまり人には分かってもらえないけれど、人見知りなのだ。恵樹みたいに始めから普通に話せる人もいるが、大半が始めから普通には話すことができない。でも、私じゃないのかもしれない。そう願うしかなかった。

 男子が立ち止った。

 私の机の右側、空いている席に腰掛けた。

 なんだろう。何かあるのかな?そう思い男子の顔を見るとニコニコ笑ってこっちを見ていた。

 私はすぐ目を逸らした。

 「なあ、九堂さん。九堂さんの(うち)って代々『古術』やったよな」

 大阪弁で話しかけられた。

 この男子は関西の人なのだろうか。

 「…」

 「ありゃ?ちゃうんかったか?そんなら、間違(まちご)うてしもうてすまんかったなぁ」

 「あっいやっ違くて…」

 「?何が違うんや?」

 「あの…私…あなたの名前知らなくて…だから…その…」

 「あっなんや、そんなこと!俺はにしはら ほむらや。方角の西に原っぱの原で西原、『(ほむら)()つ』の焔で、西原(にしはら) (ほむら)や。しかしなぁ九堂さんとは1年時から一緒やったから名前知ってるはずやと思ったんやけどなぁ」

 「あっごめんね。名前覚えるの下手で、春休みちょっと忙しくて…」

 「そやったんか、じゃあしゃあないな。これから、覚えてくれたらそれでええんやし」

 「うん、ごめんね。で、『古術』がどうしたの?」

 「あぁ、(おれ)()な元々『古術』使いやったらしくて式神が封印された札見つけたんやけど、俺、『新峰』やから召喚出来ひんのや。でも、それは可哀想思てな九堂さんなら召喚できんやろって思て声掛けたんや」

 「事情は分かったけど。それなら明安寺君に頼めばいいんじゃないの?明安寺君の家は『古術』の大元だし」

 「そなんやけどなぁなんか声掛けづらいっちゅうか…まあそんな感じや」

 「うん?…分かった。じゃあどの子召喚すればいいの?」

 「おっ!ありがとうな。こいつらや」

 はいと渡されたのは四枚の札だった。

 中には、赤い龍・白い龍・黒い龍・黄色い龍だった。

 「この子達って『紅竜(こうりゅう)』と『(はく)(りゅう)』・『黒龍(こくりゅう)』・『黄龍(こうりゅう)』⁉」

 「ん?あぁそや、方角を司ってる龍達や。せやけど、『青龍(せいりゅう)』が無かったんや」

 「そりゃあそうだよ。だって『青龍』、私持ってるもん」

 「ほんまか‼『青龍』見てみたいは~」

 「いいよ。」

 そういうと、前回恵樹の前でやったのと同じ事をした。

 「おお~かっこええなぁ」

 「そう?はいこれが『青龍』」

 西原君に『青龍』が封印されている札を渡した。

 「おお、これが『青龍」かぁ。青いのぉ』

 「そりゃあそうでしょ。じゃあ他の四枚の札合わして貸して」

 はいと西原君から受け取った。

 これまた前回恵樹の前でやったのと同じ事をした。

この一連の動作は私にとって式神召喚の魔法だ。

 まあ前回と違うのは光の玉が四つ出てきたということだ。

 光の玉の中からそれぞれ四体の龍が出現した。

 「よう、皆、久しぶりだな。そして、凛亜も久しぶり」

 『青龍』が第一声を放った。

 「うん、久しぶり。へーこの人達が『青龍』の元々の仲間か~」

 「おう、そうだ。名前は色を見れば分かるだろう」

 「うん。初めまして『紅龍』・『白龍』・『黒龍』・『黄龍』様」

 「お!凛亜。龍の方角も分かるのか?」

 「一応ね」

 「ほう、お主やるな」

 『黄龍』が関心したように言った。

 「さすが、『龍尾』殿といった感じかな」

 「?『龍尾』?そんなに『龍尾』ってすごいの?」

 「はっはっ子供の頃に背中に乗せてもらった口か?」

 「うん。乗せてもらったよ」

 「あのさぁ俺らの持ち主の坊ちゃん達が固まってんだけどいいの?」

 『白龍』が口を挟んだ。

 「え?」

 周りを見渡した。全員がぽかんとしていた。

 私的にはいつもの事なので驚かなかったので気づかなかったのだが、皆固まっていた。

 「あ~えっと、西原君大丈夫?」

 「…ん…あ…あっと…えっと…大丈夫?かな…」

 「あ…うん…大丈夫ならいいんだけど…」

 うーん、間違えちゃったかな~

 「あぁ皆びっくりさせてしもうてすまんかったなぁ。青い龍以外は俺のなんや。家に札あったんやけど俺召喚出来ひんから九堂さんに頼んだんよ。ありがとうな九堂さん」

 「ううん、じゃあこれでいいんだよね。あと、『古術』本部の地下に模擬戦闘みたいなのが出来る所があるんだけど、龍達の力調べてみる?」

 「えっ⁉そないなことさせてもろてもええの?」

 「うん、大丈夫だと思うよ」

 「俺たちの力知りたいのか?」

 『白龍』が問うてきた。

 「うん、そのほうが西原君が貴方達を従える時にどうすればいいか分かるし、私がいればどうすればいいか教えられるし」

 「へえ、そうゆうこと。了解、了解」

 「分かってくれればいいんだ。で、それはそうとそこで小さくなっている『黒龍』はどうしたの?」

 『黒龍』は『紅龍』の後ろで身体を丸めていた。

 「あぁこいつ。こいつねぇ明るいの駄目なの。ホントうけるよねぇ」

 『白龍』が見下したように『黒龍』のことを見て言った。

 「まあまあ、そう言うな。しょうがないだろう。『黒龍』は夜、『白龍』は朝。得意なことがお主らは全く違うだろう。」

 『黄龍』が『白龍』に口止めした。

 『白龍』は分が悪くなったのか黙ったしまった。

 ガラッ

 「おーい、廊下が騒がしい…っ‼なっ…えっ⁉」

 明安寺先生が教室に入ってきた。

 明安寺先生から見て教室の中は五体の龍で覆い尽くされているように見えただろう。

 「あぁすいません今戻しますね」

 「おっ凛亜戻った方がいいのか?」

 「うん、戻ってくれる?」

 「おう、じゃあ今日の午後地下でな」

 『青龍』はそう言うと自分の封印札に飛び込んだ。すると、紙切れ一枚の中に『青龍』が消えていった。

 「なぬっ⁉そんな戻り方があるのか⁉」

 『黄龍』が驚いたように聞いてきた。

 「いや、この戻り方は信頼度の高さによるから西原君の頑張り次第だね。じゃあ『黄龍』達も戻すから」

 言って、『黄龍』達の封印札を手に取り、一体一体の額に当てていった。額に当てると龍達は札の中に吸い込まれっていった。

 「これから封印する時はこうやってやればいいから」

 西原君に札を返した。

 「ありがとう、じゃあ学校終わってから『古術』の本部までよろしく頼むは」

 「了解。先生終わりました」

 「おっおう、じゃあ席付け~」

 ガタッ ガタガタッ

 クラスにいた人、廊下にいた人達が次々に椅子に腰掛けていった。

 「よし、じゃあ諸連絡の前に皆に紹介したいやつがいる。よし、入っていいぞ」

 ガラッ

 先生の声と共に教室の扉が開いた。

 1人の少年が教室に入ってきた。

 


 ガラッ

 1年生の女の子に教えてもらったとおり階段を下りたすぐ近くに職員室があった。

 「失礼します。えっと…今日転入してきました岳兎恵樹です」

 誰が自分の担任なのか分からなかったので、扉は開けたはいいが戸惑ってしまった。

 「おぉ、やっと来たか。待ちくたびれたぞ、岳兎」

 職員室の少し奥の方から女性の声がした。

 「えっと…失礼します」

 一礼し、声を上げた女性の元に近づいた。

 「私はお前の担任の明安寺だ」

 少し思い当たる節があった。

 「あの、失礼かもしれませんが『明安寺』というのは『古術』の大元の家系ですよね」

 「ん、おぉそうだ。私はその家の長女だ。弟もすぐに会えるぞ」

 すぐに…?

 すぐに…とはどういうことだろう?

 「じゃあ、もう直ぐホームルームだからクラスに行くか」

 「はい、分かりました」

 凛亜はどのクラスなのだろうか?

 「よし、着いたぞ。一応皆には秘密にしておきたいから何があっても教室に入って来るなよ」

 「わ、分かりました」

 ガラッ

 「おーい、廊下が騒がしい…っ‼なっ…えっ⁉」

 ?どうしたのだろう

 廊下から教室の中を見てみると五体の龍の間に凛亜が立っていた。

 「凛亜?『龍尾』以外の龍もあんなにたくさん従えてるんだ」

 関心して見ていると、青い龍が自分から札の中に消えた。

 「『龍尾』と同じ戻り方だ」

 次に凛亜が四枚の封印札を手に取り、一体一体の額に札を当てていった。当てていったそばから龍達が札に吸い込まれていった。

 「おぉ、これが本来の封印方法か。じゃあ、あの龍達は凛亜の龍じゃないのかな?」

 「了解。先生終わりました」

 凛亜が一人の少年と少し話し、先生じ報告した。

 「おっおう、じゃあ席付け~」

 先生の指示は廊下にまで響き廊下にいた人達も自分のクラスに戻っていった。

 クラスの全員が席に付くと明安寺先生が

 「よし、じゃあ諸連絡の前に皆に紹介したいやつがいる。よし、入っていいぞ」

 先生に促され、俺は教室の扉を開けた。

 ガラッ

 凛亜も含め全員が俺のことを注目していた。


 

 「えーこいつは今日からお前らのクラスメイトになる。自己紹介をしろ」

 「はい。岳兎恵樹です。後、一年どうぞよろしくおねがいします」

 お辞儀をし、にっこりと愛想笑いを浮かべた。

 ザワザワ…

 恵樹の愛想笑(あいそわら)いで数人の女子生徒が一瞬ざわめいた。

 その間、先生が魔法で黒板に恵樹のフルネームを表示させた。

 「えーこいつは九堂の遠い親戚で今は九堂の家で居候(いそうろう)という形で暮らしている。皆、今までの生活に恵樹を加えて今までどうり楽しく魔法の勉強に励んでくれ。いいな」

 先生の話で又、数人の女子がざわめき1人・2人が私の方を見た。

 「で、恵樹は今の状態だと何かと不安な部分があると思ったから、九堂の隣を開けておいた。だから、九堂の隣に座れ」

 「はい、分かりました」

 ?はっ?

 私の事は気にせず席を決めたのか!私以外にもいるだろう。2年生の時に学級委員だった人とか

 ガタッ

 恵樹は涼しい顔で自分の席に着いた。

 「じゃあ、そいうことでよろしくしてやれよ。じゃあ、次は恵樹のために自己紹介をするから何を言うか5分間考えろ」

 キーンコーン カーンコーン

 終業のチャイムがなった。

 龍の騒動(そうどう)で少し授業時間を()いてしまったのだろう。

 「あーじゃあ、休み時間の間に考えておけよ」

 先生が教室の外に出た。

 ガタッガタガタッ

 それとほぼ同時に生徒の半分が席を立ち、私と恵樹の周りを取り囲んだ。

 「ねえねえ、九堂さんと岳兎君って一緒に暮らしてるんですよねぇ。そのぉ…何か思う所はないんですかぁ?」

 1人の女子が第一声、そう言った。

 というかこの子、口調がおっとりしてるな。

 「何かって何も無いけど…」

 「うん、何にもないよ。それに、春休みから居候始めたけど、明日あるテストのために1年生~2年生の勉強してたから」

 恵樹が春休みで頑張った勉強のことだ。

 「えぇ?1年生ぃ?今回のはぁ1年生の単元は基本のだったから、出ないはずだけどぉ?」

 そう、今回のテストは2年生の復習のためだ。

 「あぁ、俺前の学校でまともに授業聞いてなくてさ。だから、最初の最初から勉強したんだ」

 「そうだったんだぁ。なんかぁ、自業自得だけど災難だったねぇ。あ、そうそう私のぉ名前…」

 恵樹が遮った。

 「ちょっと待って。自己紹介は次の時間まで待ってくれるかな。皆の事知るの楽しみなんだけど、先生が俺のために時間を作ってくれるって言ってるから、その時に面白い自己紹介してくれるかな?」

 又、あの愛想笑いで女子生徒に笑いかけた。

 「えぇー!面白い自己紹介ぃ⁉」

「ハハハッ…冗談だよ。普通に自己紹介してくれてかまわないよ」

 恵樹は教室に入ってから愛想笑いしかしていないのに気が付いた。

 緊張しているのだろうか?それとも、女子が嫌い?いや、そんな事は無いだろう。だって私とは普通な笑い方だったし、まさか、私の事を女子として見ていない?

 キーンコーン カーンコーン

 予鈴が鳴った。

 予鈴と同時に先生が入ってきた。

 「自己紹介は長くなると思うから、本鈴なる前に始めるぞ」

 ガタッガタッ

 私達の周りにいた人達などが自分の席に帰っていた。

 「それじゃあ、昼休みにどう自分を紹介するか決めたと思うからそこから順に言っていけ」

 先生が指指したのは廊下側の一番前、薫君の机だった。

 「分かりました」

 ガタッ

 「俺は明安寺 薫です。『古術』を専攻していますが、『新峰』も使用可能です。名宇を聞いて分かると思いますが、このクラスの担任の明安寺先生の弟です。岳兎君、残り年ですが、よろしくお願いします」

 ガタッ

 ガタッ

 「あ、えっと佐井芽(さいが) 朱希(あき)です!えっと…よろしくお願いします!」

ストンッ

佐井芽さん…三つ編みのおさげちゃん…

…?あれ、次の人は?

佐井芽さんの後ろの席を見ると誰もいなかった。

「はーまたか…桐ケ谷!後で探してきてくれ!」

「はい、分かりました」

ガタッ

「桐ケ(きりがや) 刹奈(せつな)です。私の前と横の男子の幼馴染です。で、私の前に座っているはずの男子は久良音(くらね) 怠我(たいが)君です。怠我君はめんどくさがりで忘れんぼなので今は多分屋上に居ると思います。怠我君に用がある場合は屋上に行ってみてください。あと、岳兎君一年よろしくね」

桐ケ谷さんと久良音君…桐ケ谷さんは溌剌(はつらつ)としていて、面倒見がいい…久良音君は…顔見てからでいいか…

「おいっ桐ケ谷、久良音兄の紹介をしてくれるのは有り難いが、自分の紹介を疎かにするなよ!」

「あっ、そうでした!えっとー特には無いです」

ストンッ

「特に無い…か…まあ、いいかじゃあ次!…も駄目か…」

桐ケ谷さんの左隣を見ると机に突っ伏して寝ていた。

「起きて!おーい、起きろー静也君の番だよ」

桐ケ谷さんが隣で呼びかけるが応答無し。

「はぁ、しょうがないなぁ」

ガタッ

「えっと、かわりに紹介します。この寝てる子は久良音(くらね) 静也(しずや)君です。怠我君の双子の弟です。生活していて見分けが付かなかったら、眠そうな顔しているのが静也君だから。この双子と仲良くしてください!」

ストンッ

静也君…双子の寝てる方…

ガタッ

立華(たちばな) 伊澄(いずみ)です。以後お見知りおきを」

 ストンッ

 立華君…眼鏡でお堅い?…

 ガタガタッ

 「はいはーい、俺、西原 焔ちゅうんや。エセに近い大阪弁で皆とちゃうイントネーションになると思うんやけど気にせんといてな。あと、岳兎君一年よろしく頼んますわ」

 ガタン

 ガタッ

 「えっとー臥来(がらい) (つぼみ)ですー。恵樹君よろしくねー」

 ストンッ

 臥来さん…このクラスの中で一番派手だな…それに私の嫌いなタイプかもしれない…

 ガタッ

 「ぇっ・・・ぃ・・・・・・・・・ぉ・・ぃ・・・」

 ストンッ

 えっ?声が小さくて一切聞こえなかった…

 「蘭骸、またか…自己紹介の時くらい声を張り上げろ!…たく、この子は蘭骸 矢那だ。元々声が小さいから気にするな」

 蘭骸さん…声が小さくて小柄…

 ガタッ

 「次はぁ私だよねぇ、私はぁ花維(はなゆい) 咲樹(さき)って言うんだぁよろしくねぇ」

 ストンッ

 あっ、さっきのおっとりした子だ…花維さんか…二つ結びを緩く結んでる…

 ガタッ

 「はい!あたし、笠部(かさべ) 美琴(みこと)って()うんだ。中にいるより外にいる方が好きだから男子でも女子でも暇な時、外で遊ぼうぜ!よろしくな!」

 ガタン

 笠部さん…桐ケ谷さんは溌剌としてたけど笠部さんは元気溌剌だな…スポーツマンて感じ…

 ガタッ

 「えっと、岳兎 恵樹です。今日一日でクラス全員の名前や性格は覚えられないけど徐々に覚えていくのでよろしくお願いします」

 ストンッ

 次は私か…

 ガタッ

 「九堂 凛亜です。自己紹介をするほどでも無いんでこれで終わりにします」

 ストンッ

 こ、こんな感じでいいかな?というか、あんなんじゃ駄目だよね。はぁ、失敗しちゃったなぁ」

 ガタッ

 「輪宮(わみや) 和人(かずと)でっす☆転入してきたのが、男っていうのがちょーと残念だけど恵樹君仲良くしようね☆」

 うーん…輪宮君…チャライ?…なんか、苦手かも…

ガタッ

来波(いざなみ) 玄恵(くろえ)です。去年はこのクラスの学級委員をしていたので、今年もできたらいいなとは思っております。それと、岳兎さん、よろしくお願いいたします」

恵樹の方に身体を向け、深いお辞儀をした後席についた。

来波さん…髪長いし綺麗だしなんかオーラというか…確実に自分と違う次元にいるような…

「最後を締めくくるのは俺っスか。俺はッスね矢上(やがみ) (わたり)って言うっス。よろしくっス」

矢上君…ッスが口癖

「よし、終わったな…時間的にもちょうどいいし今日はこれで終了だ。皆、気を付けて帰れよ…じゃあ、さようなら」

ガタガタッ

大体の人が一斉に立ち上がり教室の外へ出ていった。

「そうだ、九堂、岳兎に部活の事説明してやてくれ」

「分かりました…」

 「よし、九堂さんほな行こか」

 「うん、じゃあ恵樹も着いてきて恵樹に紹介したいやついるから」

 「…いいけど、部活の説明は?」

 「今日話すから大丈夫だよ」

 男子2人を引き連れて『古術』の本部へ向かった。

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