彼女の声
拙い文章ですがよろしくお願いします。
知恵を授かってから三○分ほどたったが、僕はまだ勇気が出せないでいた。
おっさんは知恵を授けた後に頑張れよと言葉を残して帰っていた。
幸いなことに彼女はまだ帰っていなかった。
彼女はあろうことか十八禁コーナーに鎮座し、あろうことかエロ本を立ち読んでいるではないか。
この予想外の行為が僕の足を止める。
さっきまでおっさんを見ていた理由はこれだったのだ。おっさんが邪魔でエロ本が読めなかったということだ。
しかし女性が、しかも美女がエロ本を読むなんて僕のキャパをオーバーしていた。
おっさんから教えてもらった知恵はひとつ、相手を名前で呼ぶこと。名前で呼べば好感度がグイグイ上がるらしい。
おっさんの言うことを信じるわけではないが一目惚れなのだ。ぼくは藁にもすがる思いだった。
彼女はエロ本を読みならたまに僕の方を向いてくる。目が合えば彼女はすぐに視線を本に落とすが、その白い頬が若干赤くなっていて僕の心をくすぐる。
さて、どうやって相手の名前を聞き出そうかと長考していると、またしても目の前に人が立っていた。
「あの……」
「あ、はい」
思考の迷宮から抜け出すと、立っていたのが彼女だとわかった。
僕は不意打ちに何も言い出せなくなる。すると彼女が言葉を発する。それも僕のキャパをオーバーするものだった。
「オススメのエロ本あります?」
「はい?」
彼女の声は透き通る涼み良い声だった。
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