美女来店
つた文章ですがよろしくお願いします。
「らっ……いらっしゃいませっ」
漆黒を携えた白い肌の美女。その黒髪は雨上がりの湿気をものともせず、滑らかに直線を描いていた。
美女の入店に思わず声が上ずってしまった。
彼女は僕を一瞥すると、そのまま雑誌コーナーへ歩いていく。
髪をなびかせ歩く姿はまるで、風景画の一枚のように美しく、完成されていた。
彼女はおっさんをしばし眺めて、それから店内を気もないように回り始めた。
僕はその間にやることもなかったので仕方なく、仕方なく彼女に目をやる。彼女が挙動不振だったので、万引きの可能性があるとみたからだ。決して他意はない。
彼女は寒がりなのか春先にしては分厚いコートを着ていた。しかしコートの上からでもわかる膨らみ、黒いタイツに包まれた細い脚、彼女はモデルなのだろうかと疑問を抱く。
僕は彼女いない歴=年齢なので、これは絶好のチャンスだと下賤な事を考える。
それにしても彼女は挙動不振でさっきからおっさんの方をチラチラと窺っている。
もしかして彼女はおっさんに惚れているのではないか? そんな疑問が頭をよぎる。
「いや、それはないでしょう」
僕の考えは僕によって一蹴された。
でも、だったら、と僕は考え直す。仕事も忘れて。
実はおっさんの娘さん? おっさんを尾行してるスパイ? そんなことを考えていると、不意に目の前から声をかけられる。
「おい、兄ちゃん。起きてっか?」
いつの間にかおっさんが目の前にいる。それに気付かないほど彼女のことを見ていたらしい。
おっさんはエロ本を一冊僕の前に出す。
「今回はこれぐらいしかなかったぜ」
「そうなんですか」
僕は本のバーコードを読み取りながら返事をする。
「八◯◯円になります」
「あいよ」
おっさんは小銭を一旦手のひらに全部出し、一枚ずつ小銭を掴んでいく。
僕はおっさんから小銭を受け取る。
「ちょうどですね、ありがとうございました」
軽く会釈するとおっさんは帰る素振りを見せず、僕に耳を近づけように合図を送ってくる。僕は本能的におっさんに耳を向ける。
「なあ、あの女なかなかいい女だな」
ジジイがいい年して、と思ったが僕も同意見なので言葉を返す。
「タイプです」
「やっぱおめーはそう言うと思ったぜ」
「というわけでおっさん、僕に勇気をください」
「……そうだな、勇気は無理でも知恵ならあげられるぜ」
おっさんは下卑た笑みを見せる。
「お願いします」
多分僕も下卑た笑みを浮かべていた。
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